4.祭りの始まりは危険が一杯 7
紹介されたキリは、やせこけてちっぽけで、お世辞にも花街の女とは思えなかった。黒髪もぼさぼさで、つりあがった目が見え隠れしている。無愛想で不機嫌。それが第一印象だった。
キリはシャイレンドルを上から下まで無遠慮にながめまわすと右手を出した。
「おあし」
「……は?」
「おあしだよ。お・あ・し。あんた、まさか金持ってないとか言うんじゃないだろうね」
「キリ、あたしのお客さんなんだからさぁ」
「あんたのお客だから言ってんのよっ」
キリはアイランをにらみつけた。
「あんたの取る客は変なのばっかりなんだから。金がないと知ったらそのまま帰しちまう。商売上がったりなんだよっ。まったく」
不機嫌なのはそういう理由か。シャイレンドルは懐の袋から硬貨を一枚取り出した。
「これで足りるんか?」
差し出すよりも早く、キリの手が伸びて硬貨をひったくった。
「何これ……金貨じゃないのっ! まさか、ニセモノじゃないでしょうね」
「さぁ、もらったモンだけど」
キリは硬貨を手に後ろを向いてなにやらごそごそやっていたが、振り向いたときには口元がほころんでいた。
「疑って悪かったわね。あんた、どっかの金持ちのボンボンかなにか? アイランがここに連れて来た客の中じゃ初めての上客よ。これなら十日分でもおつりが来るわ。上がっていいわよ。サービスもばっちりしてあげるからさ」
一方的に喋ってキリはぱたぱたと置くに走りこんでいった。
「なぁに、あれ。キリがあんなにはしゃぐの、初めて見たわ。それにあんたも。金貨なんて久しぶりに見たわ」
「そうなんか? よう分からんけど」
懐の金貨袋を取り出す。開いてみると、入っているのはどれも金貨で、ざっと五十枚ほどある。
「あらすごぉい。お大尽やね。じゃ、あたしも一枚」
細い指が金貨をつまむ。
「さ、上がりましょ。たっぷりサービスしてあ・げ・る♪」
女に手を引かれて、シャイレンドルは階段を上がった。




