4.祭りの始まりは危険が一杯 6
「というわけで、あんたはあたしがもらうことになったから」
「は?」
シャイレンドルはその言葉の意味が分からなかった。目の前で女たちがきゃらきゃら言いながら話をしていたが、黄色い声が頭に響いてろくに聞いていなかった。
目の前に立っているのは赤いロングドレス――スリップドレスだと後に聞かされたが――の女。昨日いきなり唇を奪われた女、さっき髪をとかしつけてくれた女だ。
「どういう意味や」
「あら、聞いてなかったの? 初めての坊やはみんなでおもてなしするのはここの流儀だって話は昨日したわよねぇ。で、その花代をあたしが全部持ったから、今日はあんたはあたしのお客ってこと。もちろん、今日だけじゃなくて祭りの間居続けてくれたっていいのよ?」
「あん、アイランずるいぃ」
後ろに立っていた女たちが口を挟む。
「まぁ、あとのことはあんたが決めることなんだけどね。それともどこか他に宿取ってたりするの?」
「いや……」
宿、と言われて神殿が一瞬頭をよぎった。
あそこに帰るつもりはない。祭りが終わるまで逃げ切ったる。
「じゃ、決まりね。どうする?」
「え?」
「この部屋使ってもええし、他の部屋にしてもええし。それともあたしの部屋に来る?」
「アイラン、あんた独り占めするつもり?」
「独り占めは許さないわよっ」
「あたしは部屋の説明してるだけよぉ。坊やには初めてなんだから」
女たちの野次をアイランはいなした。
「あのねぇ、坊や。この部屋は最高の部屋だから高いの。こんな広いベッドはここだけだしね。たぶんここにいる限り、他の子たちも覗きにくるし、ちょっかい出しに来ると思うわ」
「なんでや?」
「暇だから」
うふふ、と笑う。
「それに、こんな広いベッドで二人だけで寝るなんてさびしいじゃなぁい? だから暇な子の分まで花代持つつもりならいいわよ。花代いらないからあんたと遊びたいって子もいるけど」
「いや、それは……」
夕べを思い出してシャイレンドルは身を縮めた。
「じゃ、下の部屋にしましょうか。だいぶ狭いけど二人で濃厚な時間を過ごすにはいいわよぉ」
「あら、じゃああたしも乱入しようかしら」
女の一人が言った。髪を脱色した金髪の女だ。
「ずるいぃ、じゃぁあたしも」「あたしも」
他の女が追随する。
「い、いや、だから」
「だめだってば。今日はあたしのお客なんだから。ね? 坊や」
シャイレンドルは他の女を見た。目を合わせると投げキスをしてきたり、ウィンクしてきたりとどの女も彼にしなをつくって媚を売る。
――放っといたら皆乱入してきそうだ。
「あんた、アイランって言うたっけ」
「ん? あら、嬉しいわね、名前覚えてくれたの?」
「あんたの部屋ってのは、どこや?」
「まぁ! あたしの部屋に来てくれるの? うれしいわぁ。ここを使うよりは花代、高いけどいい?」
「かまへん。この館から出られるなら」
夕べの視線を思い出す。あいつにはここがばれた。まぁ、水鏡封じといたからしばらくは追跡でけへんやろけど、ここに居続けるのは得策じゃない。
「あら、そぉ? じゃぁ、ちょっと狭いけど、キリんとこ使わせてもらいましょ」
「キリ? あんたまだあそこ使ってんの?」
「物好きねえ。場所代がっぽり取られるのに」
女たちの言葉にア、アイランはにっこり笑った。
「いーの。あたしの家なんだから」




