4.祭りの始まりは危険が一杯 4
「実はさ、今回の祭りで俺が休みをもらえたのは、十年祭のおかげなんだ」
「なんだいそりゃ」
「ほら、ミリアさんが言ってたろ? 前の十年祭では聖獣が降りなかったって」
「ああ」
「ゴーラの神学校の師たちがさ、今年こそはって学校閉めて全員カリスに来てるんだよ」
それを聞いた途端、アマドは笑い出した。
「なんだそりゃ。先生たちも暇だねえ」
「でさ、全員こっちにいるからって、祭りがあけた翌日に、太陽神殿で『悟り』をやることになっちまったんだ。親父の立会いで」
声が震えた。唇を上に引いてみたものの、笑いは笑いにならなかった。
「おい、それ。親父さんに伝えたのかよ」
「伝えてないよ。会えなかったんだから」
「そんな大事なこと、早く言えよ! そうと知ってりゃ夕べのうちに神殿に潜り込んだのに」
アマドの怒り顔に、オスレイルは頭を下げた。
「すまん」
「で、今年の悟りって、お前一人なのか?」
「ああ、今年は俺だけだそうだ」
「ふぅん。珍しいな。しかしまあ……祭りの直後にねえ。先生たちも何考えてんだか」
「直後になっただけまだましだよ。最初は祭りの最中に行うとか言ってたんだから」
「信じられねぇな。あの石頭がねえ。なんか訳ありなのか?」
オスレイルは首を振った。
「ふぅん、ま、どうせ石頭どもの考えることなんざ、ろくなもんじゃねぇな。忘れとけ。それよりオスレイル、それならしっかり楽しもうぜ。祭り明けで悟りの結果が出れば、こんなにのんびり出来る機会なんかなくなっちまうからよ」
「そうだな、判定が出ればな」
うっかりつぶやいたオスレイルの言葉に、アマドは眉を吊り上げた。
「だーかーらーっ。何でお前はそう後ろ向きなんだよっ。そんなこと考えてたらいつまで経っても不安になっちまうだけだろうがっ。こういうときはすっぱり忘れるんだよっ。せっかく石頭どもの退屈な授業から抜け出して十日間も遊び倒せるんだぞ? 遊ぶときは集中して遊ぶ! ほれ、カラんとこ冷やかしに行くぞ」
友の反応に苦笑を浮かべて、オスレイルはうなずいた。こういうときのアマドの反応がありがたい。
「そうだな」
「何にやついてんだよっ」
にやにやしていると横っ腹を軽く殴られた。
「ごめんごめん。ありがとな」
「分かったらさっさと行くぞ」
オスレイルの腕を引っ張って、アマドは歩き出した。
「はいはい」
「まずはカラの結婚祝い、探そうぜ。南にキャラバンが来てるらしいし、珍しいものもあるだろ。それ持って行こうぜ」
「わかった」
「祭りの間は存分に楽しまなくちゃな」
そういってアマドはに笑った。




