4.祭りの始まりは危険が一杯 3
ミリアが戻っていったあと、二人は辺りを見回した。
すでに大通りの群衆は三々五々散り始めていた。
「さて、どうする? 今日の神殿での祭事はさっきので終わりだったよな。一般巡礼の開放は明日の日の出からだし」
アマドは大きく伸びをすると空を仰いだ。
「そうだな」
「お袋の言ってた曲芸でも見に行くか?」
「そうだな」
「なんだよ、上の空か? どうかしたのか?」
「いや」
「俺に言えないことか?」
アマドは口を尖らせた。
「いや」
「じゃあ言えよ」
迷った後、オスレイルは口を開いた。
「親父、いなかったなと思って」
「あん? さっきの行列か? そういえば見かけなかったな。でも、神官が全員参加してたわけじゃないだろ? 神殿を空にするわけにいかないだろうし。大神官クラスの人は神殿で神子を迎える準備でもしてたんじゃないか?」
「ああ……それもそうか」
アマドの指摘は的を射ている。言われてみれば当たり前のことだ。
「そんなに気になるのか? じゃあ、今から神殿行くか?」
オスレイルは苦笑を浮かべて首を振った。アマドに心配かけてる場合じゃない。
「いいよ。明日にでも聞いてみる」
「そっか。じゃあこれからどうする? あ、金はもってきてるよな?」
懐を探る。戻ってくるために貯めた金がまだ残っている。
「もちろん」
「俺もだ。あちこち回っておきたいしな。そういやお袋から聞いたんだけど、カラが結婚したらしいぜ」
「カラって、双子の片割れの?」
オスレイルは驚いて聞きなおした。神学校で共に学んだ同期の一人だ。アマドと同い年だったはず。細い腕や華奢な体つきの双子のことはよく覚えている。
「そうそう。親父さんが早くに亡くなって、宿の跡継ぎになるために神殿を出たあのカラだよ。弟のセグナ、じゃなかったセグニールが水の神殿に行ったのは知ってるだろ?」
双子の弟を、アマドは正式な神官名で呼んだ。
「ああ。水の神殿はゴーラにあるからな。噂は聞いてるよ。ついこの間の試練で神官の位を授かったそうだ」
「一年目でか? 早いな。俺なんかまだまだ先だぜ。先輩たちにしごかれる毎日だよ」
ドクン、と心臓が高鳴るのを感じて、オスレイルは両手を握り締めた。あとは俺だけ、か。




