3.困った子供たち 15
むせかえるようなおしろいの匂いから解放されたのは、階段を引きずり上げられ、角をいくつ曲がったか分からない先の部屋の、でかい寝台の上だった。
「なんっ……」
いきなり放り出されたシャイレンドルは、わけもわからず上体を起こした。
寝台の周りにぐるりと女たちが立っていた。寝台に膝をついているものもいる。きれいに結い上げた色とりどりの髪。胸元の大きく開いた薄手の衣装が目を引いた。たぷんたぷんの乳が谷間が丸見えだ。楽しそうな目元、何かたくらんでいるような口元。ささやきあうくすぐったい笑い声が足元のほうからも聞こえる。
「はいはい、そのくらいにしてあげてね?」
女の壁の向こうから、さっきの女の声が飛んだ。
「ようこそ、夢の館へ。手荒な真似をしてごめんなさいねぇ。祭りのおかげでお客が減っちゃって、みんなたいくつしてたの。あなた、あんまりにきれいなんだもの。それに」
女は言葉を切って歩み寄ってきた。枕元に腰かける。
彼女の白く細い指がシャイレンドルの頬をとらえた。そのままゆっくり肌を撫でながら降りていく。恐怖ではない、自分でもわからないものが同時に体の中をずしんと駆け下りたことに気がついた。
「初めてのお客様はみんなでおもてなしするのがここの流儀なの。最初の花代はあたしが持つから、思う存分楽しんでいってね?」
息が掛かるほど近くで、赤い唇がうごめいた。妖艶な笑み、というのはこういうのを指すのだろうか。
「う……」
今の今まで言おうとしていた言葉が、きれいさっぱり消えていた。目は彼女に釘付けなまま、ぽかんと口をあける。
女は彼の頬を両手で包み込み、その口をついばんだ。
「な、なっ……」
心臓が飛び出るかと思うほど高鳴った。全身が熱くなっていくのが分かる。
「あら、だめよ」
真っ赤になる少年の唇に、女は指を当てた。
「くちづけの時には目を閉じるものよ。さあ」
そうささやく口元だけが脳裏に焼きついた。




