3.困った子供たち 14
「娼婦の館?」
鸚鵡返しにすると、店主のにこやかな顔が途端に鬼の形相になった。
「お客さん、ひやかしは困るんですよねぇ」
「ひやかしも何も。分からへんものは分からへんわ」
「あら、なぁに? 初めてのおきゃくさんやの?」
不意に女の声が頭上から降って来た。両肩に柔らかな感覚。振り向くと、いい匂いがした。長い黒髪に白い肌。
「あぁ、アイラン。ちょうどいいところに」
「ちょっ、なにっ?」
手が伸びてきて、顔をぐいと上に向けさせられる。至近距離に女の顔が寄ってくる。
白い肌、切れ長の黒い瞳、紅をひいた薄い唇。
「あぁ! 初めてクンなのね? だいじょぉぶ。おねーさんがやさしく教えてア・ゲ・ル」
唇が迫ってきて、あわてて手で押し戻す。
「あらやだ。照れちゃって。坊やのお好みはどんなのかしら?」
女性は笑みを浮かべると、奥にいた女性たちを手招きした。
「なんやねん、一体っ」
その声は、女たちの嬌声にかき消される。
「こんな金髪、見たことないわ」
「ねえ、この子、あたしに頂戴っ!」
「染めたんじゃないのねえ」
「素敵! その瞳、めったにないわ」
「ねえねえ、どこから来たの?」
口々に、いや好き勝手に質問攻めしながらも、シャイレンドルの体や髪に触ってくる。
「うわっ、ちょっ、やめっ、どこ触ってんねんっ!」
あわてて股間を隠し、前かがみになる。息も絶え絶え。
「はいはい、ここじゃなんだから、お部屋いきましょうねぇ~。てんちょぉ、一番いい部屋使うわねぇ」
「はいよっ」
店主は手馴れた様子で鍵を放った。
「じゃぁ、行きましょ。ついて来たい子はいらっしゃい。花代はあたしが持つわよ」
「ちょぉっ、待てってばっ、わいの、話、おいっ、話聞けやっ!」
彼の叫びは娘たちの喜びの悲鳴にかき消された。




