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翠の瞳 ~塔の魔術師 外伝~  作者: と〜や
困った子供たち ――祭の前日
20/99

3.困った子供たち 11

 扉をノックする。

 返事はない。

 どうせまだ寝ているのだろう、とユレイオンは扉を開けた。


「まだ調子が悪いのか?」


 部屋の中は真っ暗だった。窓はきっちりよろい戸が閉められている。

 ランプを手に、ユレイオンは部屋に入った。寝具からは、火の光を受けた黄色い髪が見える。


「まだ寝てるのか」


 塔の地下にある封印の間から、白氏の魔法陣で太陽神殿に飛んでからだ。

 西の大国お抱えの魔導師集団、白氏の使う魔法は塔の魔法とは違う。魔法陣によって縮地するなど初めての体験だった。シャイレンドルはついた途端倒れこみ、そのまま寝込んでしまったのだ。

 ユレイオンもひどい眩暈に襲われた。倒れずに踏ん張ったのはひとえに彼のプライドのせいだ。長老たちの手前、無様な姿は見せらない。

 まだ残っている偏頭痛に顔をしかめながら、ユレイオンは寝台に近づいた。


「おい、そろそろおきないか。夕食の時間だ」


 向こうを向いて横になっている少年の肩に手をかけ、揺さぶる。その弾みで黄色い頭が転がり落ちた。


「なん……!」


 拾い上げたものは黄色い毛糸の束だった。


「いつの間にっ」


 怒りがこみ上げてくる。こんなものに騙されていたとは。

 いつから? 少なくとも一時間前までは本人だったはず。部屋にも念入りに結界を張り巡らせて、人の出入りは把握していた。はずなのに。

 大失態だ。

 明日からの準備があるとはいえ、病人だから時を抜くのではなかった。


「ふ、ざけやがってっ」


 こればかりは報告せねばなるまい。ユレイオンはどんより気分に落とされた。しょっぱなから大黒星だ。

 食堂へ急ぎ足で戻るが、気分は最悪だった。


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