3.困った子供たち 11
扉をノックする。
返事はない。
どうせまだ寝ているのだろう、とユレイオンは扉を開けた。
「まだ調子が悪いのか?」
部屋の中は真っ暗だった。窓はきっちりよろい戸が閉められている。
ランプを手に、ユレイオンは部屋に入った。寝具からは、火の光を受けた黄色い髪が見える。
「まだ寝てるのか」
塔の地下にある封印の間から、白氏の魔法陣で太陽神殿に飛んでからだ。
西の大国お抱えの魔導師集団、白氏の使う魔法は塔の魔法とは違う。魔法陣によって縮地するなど初めての体験だった。シャイレンドルはついた途端倒れこみ、そのまま寝込んでしまったのだ。
ユレイオンもひどい眩暈に襲われた。倒れずに踏ん張ったのはひとえに彼のプライドのせいだ。長老たちの手前、無様な姿は見せらない。
まだ残っている偏頭痛に顔をしかめながら、ユレイオンは寝台に近づいた。
「おい、そろそろおきないか。夕食の時間だ」
向こうを向いて横になっている少年の肩に手をかけ、揺さぶる。その弾みで黄色い頭が転がり落ちた。
「なん……!」
拾い上げたものは黄色い毛糸の束だった。
「いつの間にっ」
怒りがこみ上げてくる。こんなものに騙されていたとは。
いつから? 少なくとも一時間前までは本人だったはず。部屋にも念入りに結界を張り巡らせて、人の出入りは把握していた。はずなのに。
大失態だ。
明日からの準備があるとはいえ、病人だから時を抜くのではなかった。
「ふ、ざけやがってっ」
こればかりは報告せねばなるまい。ユレイオンはどんより気分に落とされた。しょっぱなから大黒星だ。
食堂へ急ぎ足で戻るが、気分は最悪だった。




