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翠の瞳 ~塔の魔術師 外伝~  作者: と〜や
困った子供たち ――祭の前日
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3.困った子供たち 7

「さて、話を戻そうか」


 ミリアは居住まいを正し、杯を置いた。目を閉じ、両の膝に手を置く。


「一千年の昔、人を滅ぼさんとする神々と、人を守ろうとする神獣たちの戦いが終わり、敗れ去った神々はこの地を去った。役目を終えた神獣たちは、人の築いた社殿の地下で眠ることを選んだ。再び同じような争いが起こって起こされることがないように祈りながら。伝えられている神獣の数は七とも十一とも言われているが、太陽神殿に伝わる数は十柱の神獣がこの大陸のどこかに眠っている。太陽をつかさどる金の獅子、金聖獣はその中の一柱さ。それが太陽神殿の地下に眠っている」

「お袋、よくすらすら言えるな」


 語り部が語るようにそらで伝説を語る母にアマドが言うと、ミリアは頭を振った。


「使い女だったときに仕込まれたんだよ。お前たちも見習いの時期に習ったろうに」

「そりゃ、聞いたことはあるけど、諳んじられるほどじゃないよ」

「馬鹿だねえ、こういうのは丸暗記しとくもんだよ。もっともあんたは昔っから記憶力だけはなかったから無理かもしれないけどねえ」


 ミリアはころころ笑う。アマドはふくれてそっぽを向いた。


「で、続きは?」

「ああ、そうだった。金聖獣は、人がよほど心配だったのか、他の神獣が眠り続けるのに反して十年ごとに目覚めた。人に助言を与えるためにね。神々が去り、神獣が眠りについたあとの人が頼りなく見えたんだろうね。だが、目覚めて己の肉体を動かすとなると、ちと厄介なことになる。そりゃそうさね。地下の金聖獣が動くとなると、上に築いた神殿も人も無事では済まないからねえ。そこで、金聖獣は、穢れなき魂を持つ十歳の幼子の体を借りることにした。これを太陽の神子と崇めたのが十年祭の始まりさ」

「十歳の子供……ミリアさん、もしかして、子供が参加できない理由ってそれですか?」

「さぁね。神獣が光臨する子供を見分けられるように神殿が子供を外に出さないようにしたとか、いろいろいわれてるけどね」


 なるほど。町に子供が一人しかいなければ、聖獣はその子供の体を使うしかない。


「じゃあ、十年祭にあちこちから人が集まってくるのは」

「そう、金聖獣のお告げを聞きにはるばるやってくる各国の重要人物たちよ。聖獣は祭りの七日間しか幼子の体にとどまれない。それ以上は幼子の命にかかわるそうだから。だから、その間になんとしてもお告げを聞かなきゃならない人たちが詰め掛けるのさ。その多くは各国の重要人物達だよ。彼らはいくら金を積んでもいいから、金聖獣のお告げが欲しいのさ。西の大国から東の小国まで、全ての国から使者が派遣されているだろうね」

「だから貴族や神官をよく見るのか」


 オスレイルは途中で見た馬車や旅人たちを思い起こした。


「ま、そんなところね。ただねぇ……」


 ミリアは急に声を落とし、二人の頭をぐいと寄せた。


「こっから先は口外無用ね。前回の祭りでは金聖獣が降りず、お告げがなかったんだよ。だから、今回は前回にもまして必死なのさ」


 まぁ、おかげで商売繁盛なんだけどねえ、とミリアは杯を空けた。


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