表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翠の瞳 ~塔の魔術師 外伝~  作者: と〜や
困った子供たち ――祭の前日
14/99

3.困った子供たち 5

「あら、だって……」


 ミリアは口をつぐんだ。


「お袋には話したことあったよな。神学校では規定の課程を修めれば、あとは年に一度の属性判定試験、通称『悟り』で進むべき神殿が決まるって」


 杯に目を落としたまま、アマドが口を開いた。


「ええ」

「こいつ、去年の悟りで属性が決まらなかったんだ」


 オスレイルは拳を握り、奥歯をかみしめた。


「そうだったの……。てっきりもうどこかの神殿にお勤めしてるんだと思い込んでたよ。アマドより一つ年上だったし」


 ミリアはオスレイルに向き直って頭を下げた。


「ごめんね、無神経なこと言っちゃって」


 オスレイルは首を振った。


「いえ、俺のほうこそちゃんと話しておくべきでした」

「で、今は何やってるんだよ」


 アマドは暗い雰囲気を払拭しようと、ことさら明るく聞いた。


「すでに課程は終わってるから、この一年は年少組の指導を手伝わされたり、教師の雑用を手伝ったり、あとは図書館の整理をさせられたり」


 今年も属性が決まらなければ教師として残ってはどうか、といわれた校長の言葉を思い出す。


「先生たちの助手かぁ。そりゃ大変だ。で、今年の悟りはいつなんだ?」


 オスレイルは樽に手を伸ばした。


「今年は十年祭と日が重なったから、終わってからになるらしい。まあ、もしだめでも神学校の教師の道があるから、大丈夫だよ」


 心配そうな顔をする二人に、オスレイルは笑って見せた。


「そうね、オスレイルならいい先生になれるような気がするわ。そういえば、お父様にはご挨拶してきたの?」


 父、という言葉でオスレイルの表情がかたくなった。


「いえ……神殿には行ってみたのですが、宿舎のほうへは立ち入りが禁じられているらしくて、会えずじまいでした」

「あら、もう?」

「ええ、神殿の神官たちが潔斎中らしくて、警備に当たっていたのは他所の神殿から手伝いに来た神官でした」

「そう。……やっぱりそうなのかしら」


 ミリアはそういい、黙り込んだ。


「だぁっ、もう。まだるっこしぃなぁ。お袋、何知ってるんだよ」


 痺れを切らしてアマドは声を荒げた。樽を叩き始める。


「オスレイルの親父さんに関することなんだろ? そもそも、今年の太陽祭りはなんか違う。十年祭って何が違うんだよ」

「おだまり愚息。騒ぐんじゃないよ。まったく、あんたは声だけはでかいんだから。十年祭ね……あんたたち、十年前のこと、覚えてるかい?」


 ミリアは真剣なまなざしで二人を見た。


「十年前のことなんて、あんまり覚えてないよ。なんか騒がしかったような気はするけど」

「俺も。十年前なら神殿の宿舎に住んでたはずなんだけど……」

「そう」


 二人の答えを聞いて、ミリアはため息をついた。酒を注ぎ足し、一気にあおる。


「お袋?」

「ま、当たり前さね。十年前はお前たち、まだ子供だったものね。十年祭ってのはね、数えで十八歳にならないと参加できない決まりがあるんだよ。だから、あんたたちは今回が初めての十年祭ってわけ」


 おかわり、と杯をつきだす。


「じゃあ、お袋は今回で四回目……?」

「馬鹿を言うんじゃないよ。あたしゃまだ三回目だよっ」


 鼻をぐいと引っ張られ、アマドは悲鳴をあげた。


「十年祭っていうのはねえ、太陽神殿に安置されてる聖像に由来してるのさ。アマドは見たことないだろうけど、オスレイルは覚えてるんじゃないかい?」


 オスレイルはうなずいてかすかな記憶を辿る。奥殿には立ち入るなと言われていたが、一度だけ地下に迷い込んだことがあった。


「あれはね、一千年前に神々と戦ったと言われてる聖獣の体なんだよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ