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3.困った子供たち 2
「オスレイル!」
宿の厩に向かうと、後ろから威勢のいい声が飛んできた。聞きなれた声。振り向くと幼馴染の顔があった。
「アマド」
赤毛を短く刈り上げ、日焼けの少しさめたやんちゃな顔が前よりも近かった。
「あれ、背ぇ伸びたな」
「おいおい、感動の再会の第一声がそれかぁ? もうちょっと気のきいた言葉はないのかよ」
文句を言いながらもアマドは嬉しそうに微笑み、抱きついてきた。明らかにでかくなってる。
「この一年でぐんぐん伸びてさぁ。着るものが追いつかなくて。母さんに怒られたところだ。もうこれ以上でかくなるなって。無茶言うよなぁ」
「お前はまだ伸びるよ。来年には抜かれるかもなあ」
オスレイルはふとアマドの両肩に掛かっている肩掛けに気がついた。
「これ、神殿のか?」
藍染地に海老茶で描かれた文様は、火の神殿の紋章だ。
「おうよ。見せびらかしたくてさ。お前が戻ってくるの待ってたんだ」
「いいな」
そう返すのが精一杯だった。喉の奥がひりつく。
「お前もそろそろだっけ」
「ああ」
まあな、とつぶやく。
アマドを呼ぶ声が宿のほうから聞こえた。
「ちぇっ、お袋が呼んでるや。とりあえず中に入って顔見せてやってくれよ。昼過ぎからずっとお前が来るのを待ってたみたいだから」
幼馴染の背を苦笑交じりに見送って、オスレイルは厩へ向かった。




