採取依頼?それはフラグです
異世界二日目
チュンチュン
……うーん、もう朝か。
「―――知らない天井だ。」
よく携帯小説とか読んでたから、これは異世界に来てから一回は言ってみたかった。
反省も後悔もしない。
けど一人でこれやるのって意外に寂しいな。
取り敢えず昨日体を洗いもせず寝ちゃった身体のベトベトをどうにかしないとだなぁ。
井戸とかあるかな?
受付に言って聞いてみよ。
「あのー、すみません。水浴びをしたいのですが、井戸とか近くにありませんか?」
「あ、はい。宿の裏手に井戸がありますよ。もちろんお金もかかりませんからご自由にどうぞ。もしお湯が必要でしたら100ファルでご準備しますので。」
「ありがとうございます。」
そうと決まれば早速井戸へレッツゴー。
テンプレだとここで美女が水浴びをしててうっかり覗いちゃうとか――
「まぁありませんよね。」
一人で何一喜一憂しているんだあいつ、と思われるような挙動をする俺。
傍から見たら確実に不審者だなこれ。
変なこと考えるのをやめて黙々と体を洗うことにする。
しかしあれだな、身体は適当に汗流すだけでも意外にいけるが髪はシャンプーが欲しいな。
創造魔法で作れるか?
ノリで試しただけなのだがほんとに出来た。
物まで作れるなんて万能なんですね分かります。
何はともあれ作れるに越したことはない。
リンスにボディーソープも作ってしっかりと昨日の汚れを落とした。
うん、スッキリ。み
てか他の人たちは身体とか洗う時どうしているんだろう?
石鹸とかあるのかな?
もし無かったら店開くときにでも販売すれば儲かりそうだな。
そう考えながらも水を浴びて濡れた体を拭く。
ふむ、しかしこうも冷たい水なのに寒くないってことは季節的に結構温かい時期なのかね。
スッキリしたので、宿に戻り朝食を頂くことにする。
「おはようございまーす。」
「おはよう。朝食ならもう出来てるから食堂に行けばいつでも食べられるよ。」
「うん、ありがとう。」
食堂に行くと恰幅の良いおばちゃんが料理を作っていた。
あの人に声かければいいのかな?
「すいませーん。」
「あら、朝ご飯ね。はいどうぞ。」
うおっ!早っ!
レトルトじゃあるまいのにどんな速さだよ。
おばちゃんの目にもとまらぬ早業に感動しながら朝食を頂く。
朝食はパン、目玉焼き、ハムのようなもの、刻んだ野菜の入ったスープとあの一瞬で作ったとは思えない出来である。
うん、しかも普通に美味い。
昨日は眠かったりなんだったりで、全然味分からんかったからな。
美味しかったので、あっと言う間に完食。
「ごちそう様でーす。」
「あいよ、お粗末様。」
さて、腹も一杯になったことだし今日の予定……と言っても依頼を受けて金を稼ぐくらいしかないか。
早速ギルドに行って依頼でも受けようか。
――――――――――――――――――――
さて、ギルドに到着して早速依頼を探しているわけだが何をやろうか。
依頼には主に町の人が頼みごとをしたい時の雑用依頼。
ギルドや道具屋、個人が材料等を必要とする時の採取依頼。
とある場所のとある魔物を倒して欲しい時の駆除依頼。
そして常時出ていて倒せば倒すほど報酬が出る討伐依頼。
あとは緊急時などに出る緊急クエスト。
以上の五つになっている。
ちなみに討伐依頼、採取依頼は採取、討伐後の報告でも良い。
ふむふむ、今はどんな依頼があるかなー。
括弧内は推奨ランク。
(-)は推奨ランク特になし。
雑用
・荷物を運んでくれないか。(G)
・家を解体したいのだが。(E)
…etc
採取
・薬草を50本程取ってきて欲しい。(G)
・メタルゴーレムの素材が欲しい。(C)
…etc
駆除
・キラーボアが畑を荒らして困る。(E)
・岩鳥がゴミを漁りやがる。(F)
…etc
討伐
・ウェアウルフの討伐(-)
・アシッドスライムの討伐(-)
…etc
緊急
・なし
討伐依頼は常時出ているだけあって数が多い。
他の依頼はまぁ需要と供給とかである程度バランスが成り立っているんだろうな。
さてさて、見た限りでは雑用→採取→討伐→駆除の順で報奨金が高くなっているように感じる。
ふむ、初めてだし薬草採取とかでいいかな。
金は欲しいけど、あんまり危険に飛び込んでいくのもあれだし。
依頼:薬草を50本取ってきて欲しい。
条件:薬草を50本納品。
報酬:3000ファル
期日:○月×日12時まで
依頼主:薬屋○○
詳細:回復薬を作りたいのだが、薬草が全然足りていない。最低50本、追加10本ごとに600ファル出すので出来るだけ多く頼む。
よし、簡単そうだし、初めての依頼だし、これにしよう。
「すいませーん。この採取依頼お願いしたいんですけど。」
「あ、はーい。薬草採取ですね。それではギルドカードを――はい、確かに承りました。こちらの依頼は期限がまだまだ先なのでゆっくりと行ってきてくださいねー。」
「あ、あと薬草の見た目分かる本かなんかあります?あと生えてる場所なんかも教えて頂けると助かるのですが。」
「はい、少々お待ちください。――こちらが薬草になります。あと薬草は北の森の入り口周辺に生えていますので、北の街道に沿って行けば見つかるかと。森の中には恐ろしい魔物が多いので注意してくださいね。」
植物図鑑を出して親切に教えてくれたお姉さん。
「ありがとうございます。それじゃ、行ってきます。」
「はい、行ってらっしゃいませ。」
笑顔で見送ってくれるお姉さん。
世の中あーいう人ばっかなら世界は平和だろうになぁ。
しみじみ感じながらギルドを出て北の森に向かう。
――――――――――――――――――――
街道を突っ切り、北の森に到着した。
てか北の森って昨日来る時に見えた森だったんだね。
うん、まぁだからなんだって話だけどな。
さてさて到着したわけだし早速薬草の採取でも始めるかな。
おっ、早速発見!も一つ発見!
ふむ、しかしこの茂みの中でいちいち薬草を探すのは結構面倒だな。
どうにか一気に見つけられないもんかね……。
む、待てよ。
創造魔法で探知とか出来んじゃないか?
目当てのものによくゲームとかであるカーソル▼みたいのが見えるように想像してみる。
……うん、出来たわ。
もう目の前には▼が見える見える。
てか多すぎてキモい。
さっさと採取して解除しよ。
「ふんふふーん。ある―ひー、もりのーなかー、くまさーんにー、であったー。」
ルンルン気分で薬草を取っては、自分の左手前に開いたアイテムボックスにぶち込んでいく。
どれくらい経っただろうか。
ステータス鑑定でアイテムボックスの中身を見ると、薬草×174と表示されている。
ふむ、いつの間にか依頼完遂量をすでに終えていたらしい。
まぁ多く合っても損なわけじゃないしいっか。
構わず近くに見える▼の数だけ採取をすることにする。
それから20分程採取を続けて、合計251本となった。
これで15000ファルか。
なんか結構楽にお金を稼げるもんだな。
ギルドを出てから一時間、採取して一時間、これから帰って納品するまで一時間。
時給5000円てまじどこのキャバ嬢。
前世で15000円稼ぐために相当頑張っていた頃とは大違いだわ。
そんなことを考えながら街に帰ろうと歩を進める。
「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「っ!?」
すぐ近くで魔物らしき叫び声が聞こえる。
あわててさっきの採取の時に使った探知で周囲近くの生物の気配を探ると、ここから森の奥に向かって100m近くに反応が二つ。
両方ともこちらに向かってきてはいるが、両方とも魔物か、それとも誰かが魔物に追われているのか。
後者だった場合は見捨てるわけにもいかないので、取り敢えず森の奥に向かって駆け出す。
するとすぐに女の子の姿が目に入る。
ボロボロなのでおそらく命辛々逃げてきたのだろう。
そのすぐ後ろからは体長は3mはあるだろうか、ドでかい熊みたいな魔物が追ってきている。
女の子は俺がいることに気付くと、一瞬驚いたかと思ったら躓いて転んでしまった。
これはまずい。
熊野郎もチャンスと見たか、その腕で彼女に襲い掛かる。
すぐに彼女の前に出て、腕を身体の前で交差してその攻撃を代わりに受ける。
「ぐぁっ――」
奴の腕で吹き飛ばされるのを想像して声を上げた。
……って、ん?あれ?痛くない?
恐る恐る目を開くと、そこには必死に俺を攻撃する熊野郎。
そして先程と変わらない位置で熊の攻撃を受け続ける俺。
なんか小学生に殴られてるくらいの感覚しかない。
なんだこれ。
DEF1000は伊達じゃないってことか。
取り敢えず腕の交差を解き、熊に3割くらいの力で腹にワンパンを入れると、呻き声を上げて崩れ落ちる。
くの字に身体が折れ曲がっていたので、多分死んだんじゃないだろうか。
一応鑑定してみると、ステータスではなく、死体となっていたので間違いない。
うん、てか攻撃面での身体能力初披露だったけど、人間相手には1割もいらなそうだな。
自分で神様に頼んどいてあれだけど、これはもう俺人間名乗れないな。
マジこの世界最強の生物どんな身体してんだよ。
っと、そんなことより女の子がいたんだった。
怪我してるみたいだし取り敢えず手当をしないとな。
「もし、お嬢さん。」
「っ!」ビクッ
「あーそんな警戒しないでくれたら嬉しいな。」
「」コクリ
ふむ、あまり人と話すのが得意でないのだろうか。
取り敢えず治療をしないと。
「えっと、今から君の治療するから少しじっとしててね。」
「」コクリ
どっかのゲームの完全回復魔法を女の子に向かって使う。
淡い光が彼女を包む。おう、創造って万能。
次の瞬間には服はボロボロなままだが、傷一つない女の子の姿が。
「うん、もういいよ。」
「ん、ありがと、ござい、ます。」
「どういたしまして。」
さてさて、取り敢えず助けたはいいけどこの娘はなんでこんなとこに一人でいたんだろう。
身に着けてるものも防具とかではなくただの衣服。
どう考えても森に来る恰好ではない。
「それじゃあちょっと質問したいことがいくつかあるんだけどいいかな?答えたくなかったら答えなくてもいいから。」
「」コクリ
「それじゃあまず始めにだけど、名前は何て言うのかな?あ、ちなみに俺はカズキって言うんだ。よろしく。」
「ん、ルナ、です。」
「うん、ルナちゃんね。じゃあ次だけど、なんでこんな軽装で森にいたの?」
「……。」ウルウル
「あっ、ごめんね。聞かれたくないことだったのかな。答えたくなかったら答えなくていいからね。」アセッ
ブンブンと効果音が鳴りそうなくらい横に首を振るルナ。
別に聞かれても問題はないってことかな?
「……捨てられた、です。」
「……。」
「私、貴族の娘。だけど魔力無い……だからいらないって。」
「……。」
「それで、それ…・・・ぐすっ」
「うん、もういいよ。そっか、それはつらかったね。じゃあもう頼れるような人はいないってことでいいかな。」
「っ!?…ぅぇ……ふぇ…」
「あ、ごめん。そういうつもりで言ったわけじゃないんだ。誰も頼れる人がいないなら俺と一緒に来ないかなと思ってさ。」
「……どういう、こと、です?」
「うん、俺さ、これから旅でもしようかと思ってるんだけど、いかんせん知り合いいなくてさ。一人旅も寂しいし誰かいないかなぁって丁度思ってたんだよ。あ、気を悪くしたらごめんね。」
「ん、私なんかでいいの、です?」
「うん勿論。俺も君みたいな可愛い女の子と一緒に旅できたら嬉しいし。」
「//////。…なら、よろしく…お願いします。」
「うん。こちらこそ、これからよろしくね。」
よし、人助けも出来て(可愛い)旅の友も出来た。
これぞ一石二鳥。
「じゃあこれからはもう家族ってことで堅苦しいの無しな。敬語もなしで。俺はルナって呼ばせてもらうから。」
「ん、分かった。…何て呼べば?」
「んー、まぁカズキでもカズでも好きに呼んでくれていいよ。」
「じゃあ…おにぃ。」
「おにぃ?」
「家族…言った。なら私が妹。だからおにぃ。」
「お、おぅ。まぁルナがそれでいいならいっか。」
確かに兄妹設定の方がこれから旅先でも便利だろうしな。
「うん、それじゃあこれからよろしくね!ルナ!」
「ん、おにぃ。よろ。」