厄介事からは逃げられない。
最近落ち着いたので、趣味続行します。
イルサの町に入る前に車を降りて、何事もなく町に入場した。
今は、小さいながらも活気溢れるこの町を見学しているのだが、
「ところで、カズキさん。町の中では行きたいところがあるので前回同様別行動してもよろしいでしょうか?」
と、町に入るなりアクアに言われて、断る理由もなかったので、
「いーよ。変な連中に攫われんなよー。」
とフォンとアクアを見送ったので、現在ルナと二人きりである。
この二人だとショッピングをして時間を潰すとか無理そうなので、安定の冒険者ギルドに向かうことにした。
商人が活気溢れる表通りを、途中で串肉とかを買い食いしながら歩き続け、20分ほどして、町のほぼ中央付近に位置する冒険者ギルドにやっとこさ到着した。
冒険者ギルドに入ると、いつも通りの空気がそこにあって、地方とかが変わっても変わりない姿なんだなぁとなぜかしみじみと感じた。
考えつつも、お金を稼ぐために、いつも通り依頼の掲示板を覗き込む。
うん、なんかこちらに来て思うけど、ありきたりな依頼内容すぎてなんか心惹かれないんだよねぇ。
緊急依頼!
みたいのがあればこ心惹かれるんだけどねぇ。
まぁとりま楽そうな依頼でも受けとくかなー。
そう考えて、サンドキャットの討伐依頼を受けておく。
サンドキャット1匹に付き500ファル。
サンドキャットというのは、砂漠に生息する猫?みたいな生物らしい。
なんか、大概が群れで生息してるから、たまに狩って数を減らして欲しいらしい。
でもキャットとか言うけど、猫科って結構えぐいのいるし、気を付けないとあかんな。
そうルナにも言い聞かせて町の外にサンドキャット求めて出ていくことに。
――――――――――――――――――――
「―――それで、実際にコルトルス国は今どのような状況なのですか!?」
暗い部屋の一室。
そこで、周りの目を忍んで会合が行われていた。
「それがですな、現状第二、第三王子の覇権争いで、実質国内は内乱状態に陥っておりますな。」
「そんな……。」
「それでは国王様は!?」
「実際にはどうかは分からないがのう、噂では病に不したとか言われておるらしいですな。」
「そんな、父様が……。」
「加えて、国家反逆罪として姫様。そなたが指名手配されているらしいですぞ。」
「っ!?」
「なっ!?どういうことだ!?」
「どうもこうもない。大方、第二、第三王子のどちらかにつく貴族か手を回したのじゃろう。」
「……。」
「くっ!?」
「それに気をつけなされ。そちらが死んだと伝わるまで刺客は送り続けるじゃろう。それに、先日から不審な人物が町に入ったとの噂もある。十分に気をつけなされ。」
「っ!?」
「申し訳ないのじゃが、わしにできるのはこれくらいじゃ。見過ごすようですまぬが、これでも町を守る責任があるので許して欲しい。」
――――――――――――――――――――
サンドキャットの討伐依頼を受けて、イルサの町の外にやってきました。
てか、この町に来た方向の間逆って一面砂漠だったのね。
意外に町が広くて気づかなかった。
ルナと二人で散歩気分で討伐に向かう。
まぁ、歩く度に靴の中にすな入るものだがら、イライラするのだけど。
「しかし、この砂漠ってどれくらい続いてるんだろうかね。」
「ん、でっかい。」
「そだねー。」
確か受付のお姉さんに聞いたところ、サンドキャットがいるのは砂漠に入って少なくとも2、3kmらしいので、そこまでは頑張って進むしかないよなー。
そんなことを考えつつ、ただひたすら前を目掛けて歩き続けた。
暑いわー。
喉渇くわー。
こんな思いするって分かってたらこんな依頼受けてないわー。
などと心の中で愚痴りながら一歩また一歩と進んでいく。
そうしてどの位歩いたか分からないが、しばらく歩いていると周囲に気配を感じたのでルナに言って二人臨戦態勢になる。
「ルナ!右側から4匹来たから任せた!左から来たのは俺がやる!」
「んっ!」
そう言った直後、右側から4匹、左側から3匹のおそらくサンドキャットと思われる魔物が襲いかかってきた。
ふう、数間違えてなくて良かった。
間違えてたらあんな自信満々に指示出したの恥ずかしすぎるわ。
そんなことを考えつつ、銃で頭部を撃ち抜いて左側から来た3匹を倒す。
終わったのでルナの方を手伝おうと思えば、そっちはそっちでもう決着がついていた。
倒したサンドキャットの頭部には、氷の刺?みたいのが刺さっていたので、あれで脳を打ち抜いたのだろう。
あんまりわがままばっか言ってるとあれで刺されるのかな。
ブルッ。
寒気を覚えつつ、サンドキャットの死体を回収していく。
5分後、全てのサンドキャットを回収して、また先に進むことにする。
今日はこの後の予定も特にないし、暗くなる直前まではこの調子で続けよう。
そう意気込んで、ルナと共に砂漠を歩み続ける。
その後、3時間程狩りを続け、サンドキャットを27匹、良く分からない蠍みたいなのを2匹、サボテンみたいなのを1匹狩った。
「よし、ルナ。結構狩ったしそろそろ町に戻ろうか。それにお腹減ったし。」
「ん!」
そうして歩みを止め、来た道を戻る。
1時間程歩くと、前方に影が見えたので、またサンドキャットか何かかな?と思いつつ、臨戦態勢になる。
「ルナ、油断しないでね。」
「ん、分かった!」
そうして影が近づくにつれ、段々とその姿が顕になる。
全体像が把握できるほどに近くまで来たら、
「……人かな?」
「10人くらい、いるよ?」
「だね。関わらないようによけて行こうか。」
「ん。」
おそらくは冒険者かなにかであろう、その団体をよけて行こうと、大きく道を右に逸れることに。
すると、
「なんか、あの人たちもこっち来たね。」
「ん、じゃあ、逆。」
そルナの言う通り、今度は左によけることにする。
すると、集団も左側に逸れてくる。
「……これってもしかして、狙われてる?」
「多分。」
はぁ、また厄介事ですかねぇ。
何が目的か知らないけど、意趣返しでもしますかね。
「ルナ、ちょっと手つないでもらっていい?」
「っ!?……うん。」
差し出した手をキュッと握ってくる。
こんなシチュエーションじゃなきゃ萌え死ぬなこれ。
と、手を握ってもらったので、創造魔法で光学迷彩を創造する。
発動後、こちらは見えるが、向こうからはこちらの姿認識できないため、急に消えたと思った敵さん?が慌て出した。
光学迷彩なので姿は消せるが、音とか気配は消せないので、その場で動かずに敵さんの様子を観察することにする。
やがてさっきまで遠くにいた敵さんが自分たちの目の前を通りかかる。
「くそっ。どこにいきやがった。」
「まぁ、あせるな。町の入口も仲間で固めてあるんだ。何をどうしたって逃げるなんざ出来ないだろ。」
「だな。さすが、王都の貴族様は羽振りがいいぜ。たかがガキ二人に金貨30枚とはな。」
「あぁ。余程その貴族様の恨みでも買ったんだろうよ。」
「ははっ。そいつはお気の毒だな。」
ふーん。
こいつらは、俺らのこと知ってて狙ってきたのか。
まぁ前の街で散々アクアとかといるところも、城に向かうとこも見られてるだろうから仕方ないのかもしれないな。
だからといって、見逃す気はないけどな。
「(ルナ、雷の魔法であいつら全員痺れさせてやってくれ。)」
「ん。」コクッ
その次の瞬間、雲一つないはずの空から10個の雷が降り注いだ。
当然、予兆もない為、敵さんは皆雷の餌食となる。
……死んでないよね?
気になりつつも一人一人回収してみれば、死んだものはおらずに皆気絶するにとどまった。
さすがルナさん、ぱねぇっす。
さて、じゃああの隊長格みたいな人から色々と聞き出すとしますか。
そう言って、隊長格の人だけビンタをして起こしにかかった。
起きたところで、早速始めるとしますか。
「じゃあ、問答無用の尋問始めるね。」
――――――――――――――――――――
俺の名前はタリム。
コルトルス国のヘキアン公爵の私兵団の団長をしている。
元近衛騎士団にいただけあって実力はあり、すぐにこの地位に上り詰めた。
元々、実力はある筈なのにそれが認められない近衛騎士団に嫌気がさし、丁度ヘキアン公爵の目に止まって今の位置に着いた。
ヘキアン公爵は次代の王に、言いなりの第二王子を置く事で、国政を牛次ろうと画策していた。
もし、そうなった暁には私を近衛騎士団団長にしてくれると約束してくれた。
それ以後、私は公爵様のために様々な悪事を行い、この手を黒く染めてきた。
このようなことは結局は誰かがやるべきであり、それをたまたま私がしていただけで何も不味いことはないだろう。
そんな考えで、後少しでクーデターを達成しよう時に、取り押さえていた国王の娘、第一王女が地方の貴族に助けを求め、逃亡したという。
継承権第一位の発言は、並大抵のものではない。
そのため、すぐに殺害するための傭兵部隊を差し向けたが、何者かの協力により壊滅。
その後、ジャスカの国にて協力者が若い男1人と、まだ成人していないであろう女1人ということが分かり、すぐにその2人の確保に移った。
あの人情深い第一王女のことだ、命の恩人のためならすぐにでも我が身を犠牲にするだろう。
クククッ。
などと考えていたのがつい半刻前。
それが今やどうした。
10人がかりでたかがガキ2人の確保に向かったはず。
実際雇ったのは凄腕の傭兵たち。
これで逃げられることはない。
そう思っていた。
しかし現在、ターゲットが突然目の前から消えて焦ったかと思えば、次の瞬間には頭上から強い衝撃を受け、地に倒れ伏していた。
かろうじて残っていた意識で周囲を見返すと、残りの9人もやられたのか倒れ伏していた。
なにが、いったい何が起こった?
仮にもベテランの傭兵達だぞ?
それが一瞬で。
そんなことを考えていると、かろうじて残っていた意識が、両頬に来るダメージで覚醒した。
目を開けると、ターゲットとして追いかけていた男性の姿が。
その男は、こちらのダメージ等気にすることもなく、死の宣告のごとく、ニヤリと黒い笑みを浮かべながら告げた。
「じゃあ、問答無用の尋問始めるね。」