観光、勧誘
宿の宿泊日程の関係で少し編集しました。
次の日もめしくーべは大繁盛。
昨日の内に噂は都市中に広がったのか、今日は開店30分前には行列ができ始めていたので、早めにオープンすることにした。
昨日よりもみんな作業に慣れたのか、回転率が上がり物凄いスピードで材料が消費されていく。
昨日は閉店時間まで店を続けることが出来たが、今日は材料が足りなくなったため一時間早く閉店することになった。
売り上げは昨日の2倍、もともとの売り上げの10倍という驚異的な数字をたたき出した。
しかし、その分俺らの疲労は相当に増え、材料が無くなった時は物凄く安心したものだ。
その日は終わった後は、昨日のようにお祝いする余裕もなく、すぐに帰路について床に着いた。
ルナも宿に着くなり、体を拭いて死んだように眠ったそうな。
俺らが手伝う予定だった最終日は、ギルドに出した求人を見て来た従業員3人に指導をするために、臨時休業にした。
来た従業員は男性二人と女性一人。
五人もいれば、あの量の客でも十分捌けるだろう。
ただ当分はガントさんと奥さんに負担がかかってしまうだろうし、早めにもっと従業員に来て欲しいものだ。
というわけで、無事めしくーべでのバイトは終わった。
久しぶりに大学時代の飲食店バイトを思い出した気がするわ。
その日の夜は、新従業員3人も含めて7人で宴会をした。
3人には明日から作って提供するであろうカツ、フライを存分に食べてもらった。
また、俺が乗りでチーズカツや、こっそり仕込んでおいたポン酢を使っておろしポン酢カツも追加で作ってみたら、是非作り方を教えてくれ!とガントさんにせがまれたのも良い思い出。
ちなみに宿に戻って、お土産にと思って作ったカツやフライをアクアとフォンに渡したら、そのまままた飲む流れになったため、第二回宴会がスタートした。
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朝疲れた体にムチ打って起きて、今日どうしようかなと朝食を食べながら考える。
そういえば今思ったけど、ギルドに査定頼んだけど報酬取りに行ってねえや。
まずそれを取りに行くとしよう。
その後は、この都市まだ見て回ってないし、観光でもしようかな。
「今日俺はギルドに行って報酬貰った後、都市を見て回ろうかなと思うけどみんなはどうする?」
「ん。私も、行く。」
「私はどうしようかしらね。昨日までも見て回っていたので、今日は遠慮しようかしら。」
「うむ、私は今日は鍛錬でもしようかと。ここ数日で鈍ってしまっているかもしれないからな。」
「あ、じゃあ私もフォンの鍛錬に一緒しますね。」
「おう、じゃあ今日からもまた分かれて行動しよっか。」
というわけで、俺とルナは観光、アクアとフォンは鍛錬をすることに。
つか昨日までこの二人、ずっと観光してたのかな?
絶対俺なら飽きるわ。
朝食を終えて二つに分かれて行動する。
まずはギルドに向かって報酬を受け取ることにしよう。
ギルドに到着して中に入ると、この前に比べて騒がしさが薄れている。
さすがにクラーケンの騒ぎが収まったのかな?
受付に向かいながら、ふと思う。
「すみません。」
「はい、なんでしょう。」
「この前素材を査定に出したんですけど、報酬取りに来るのすっかり忘れていて。」
「素材報酬ですか。失礼ですがお名前は?」
「あ、カズキです。」
ギルドカードを係りのお姉さんに渡す。
「はい、確かに確認しました。カズキ様ですね。こちら報酬のになります。アイアンリザードが一匹5000ファル、ホブゴブリンが一匹100ファル、キングベアー20000ファルの計40500ファルになります。ご確認お願いします。」
ふむ、キングベアーは素材は結構高いようだった。
一方、ホブゴブリンの安さは半端ないな。
これ試しにクラーケンの足を売ったとして、いくらくらいになるのだろうか。
凄く興味がある。
けど面倒事は嫌い。
この葛藤な。
「はい、確かに受け取りました。」
「そういえばカズキ様は先日、新しい料理のアイデアの依頼を受けてましたよね?」
「あ、はい。」
「私も食べに行ったのですが、あのフライというのは絶品でした。よくあのような料理思いつきましたね。」
「あはは、まぁなんか出て来たんですよ。」
「そうですか。ただ、いきなり出て来たせいか貴族の方々にも噂が回っているらしく、何か一悶着あるかもしれませんね。気を付けてください。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
うん、面倒事は黙ってても舞い込んできそうですね。
死ねばいいのに。
しかし、貴族がねぇ。
まぁよくて家の専属にならないか?とかだろ。
しかも俺より店長を引き抜こうとするし、俺は関係ないな。
……ないよな?
ちょっと心配ごとを抱えながら、ギルドをあとにする。
「それじゃルナ、街見て回ろうか。」
「ん。」
しかしどっちから見て回ればいいものか。
観光って言うと街とか遊園地とかそういうレベルだったから、こんな広さの都市どう見て回ればいいものか。
観光ガイドみたいなものないものか。
ふむ、取り敢えず宿を中心に東西南北にでも分けて観光するかな。
そうと決まれば今日は東からで。
ルナが手を握って来たので、手を繋いで二人で街中を見て回った。
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ルナと二人で街の東側を見て回って半日。
街中で繰り広げられていた喧嘩(という名の力試し)を眺めたり、ここ数日手伝いついでの揚げ物ばかりだったので、サッパリとした野菜中心の料理を食べたり、でもやっぱり足りないのか、露店でなんかの肉の串焼きや魚の塩焼きを買って二人でつまんだり、孤児らしき子供にねだられて串焼きを大量購入して配ったら、凄く懐かれてみんなでケイドロをしたりと充実した一日を過ごした。
宿に帰ると、宿の裏の庭でしきりに剣を振って鍛錬をするフォンと、その光景をニコニコ見ているアクア。
てかあなたたち、まさか一日中そうしていたわけじゃあるまいよな?
剣を一日振ってたら、どう考えても腕あがらんだろ。
そう思っていたら、アクアがフォンに回復魔法をかけ始めたので、一日こうしていたのだろう。
なんというドM思考。
そんな一日。
あと、そろそろ宿の契約が切れる頃になりそうだったので、追加で7日間ほど契約をしておいた。
次の日は北を見て回ることにした。
北には王城や貴族街などといった高級感漂う雰囲気の街が広がっていた。
あんまり見て回っていると、この平民風情が!的な絡まれをしそうな気がしたので、さっさと退却して昨日に引き続いて子供たちと遊ぶことに。
その日は孤児たちと一日中色鬼とかをして遊んだ。
その次の日は、街の西側を見て回ることに。
この都市は貿易での収益も高く、それらを仕切る商業施設などが主に町の西側に固まっていた。
ここでは、様々な国の特産品を仕入れて町に売りに出したり、街の特産品を出港するための準備などが行われていた。
色々な国の特産品などを見ることが出来て、この日は結構充実したショッピングが出来たと思う。
そのまた次の日は街の南側を回ることにした。
街の南側には、海に近い方向ということで主に市場が広がっていた。
そこでは、テレビでしか見ないような競りも行われていた。
「はい、500000ファル出ました!さあ他にいらっしゃいますか!」
「510000ファル!」
といった感じでなんかデカい魔物みたいなやつを競売にかけたりしていた。
この光景を一番最初に見かけたために、市場だと認識できたのもある。
まあそれは見ていても面白いのだが、参加することは出来なかったのでちょっと残念。
他には、生簀に入った魚をその場で捌いて調理してくれる露店のようなものや、魚料理が色々と並べられていて、バイキングのようになっている店などもあり、見ているだけでも心惹かれるものがたくさんあった。
ただ、いろいろ見ていくうちに、どこの店も魚に火を通すのは絶対なようで、生で刺身などで出す店は少なかった。
いくらとかすじこみたいなものも火を通されているのにはビックリした。
しかもあまり美味しくないとのことで人気もないらしい。
うん、そりゃ火通したらあんまりだろうと思いつつ、生の方がいいですよとは言わずにスルー。
なんでこの世界の人は全部が全部火を通そうとするのか分からんね。
そんな感じで思考を走らせていると、ガントさんの奥さんと出会った。
「あら、カズキさん、ルナちゃん。こんにちは。」
「こんにちは。今日は材料の買い出しですか?」
「えぇ、仕入れても仕入れても一日で消えて行っちゃうからねぇ。」
「あはは、なんか申し訳ない気持ちがしますね。」
物凄い量の魚を購入していて重そうだったので、店の前まで一緒に運んであげることにした。
てか両手に買い物袋4個ずつ持って平然とする奥さんぱねぇっす。
「カズキさんとルナちゃんは今日はどうして市場に?」
「あぁ、実はこの前から街の観光をしているのですが、どこに何があるかもわかりませんでしたので、取り敢えず宿を中心に東西南北に分けて適当に見て回ることにしたんですよ。」
「あら、そうなの。まぁこの街広いですからね。」
「そうなんですよね。田舎者には正直きついです。」
そんな感じで雑談しながらめしくーべに戻る。
ちなみに新しく入った従業員は、今までにない調理法で最初は手間取っていたが、手順が大したことがないのですぐに慣れて、なんとか問題なく店を回せているらしい。
この調子であと3、4人いれば、みんなで休みを挟んで店を回せるだろうと。
しかし、なんか揚げ物取り入れただけなのに、夫婦でやってた下町の一食堂が大躍進だな。
現代の娯楽とか食文化を大量に広げた街でも今度作れば、そこのオーナーやっているだけで、一生働かないでやっていけそうな気がしてきたな。
前言ってた街or国作るってやつ、本気でやってみようかな?
「それじゃあカズキさん、ルナさん。また食べにでも来てくださいね。」
「はい、それでは。」
「ばいばい。」
そう言って街に繰り出そうと店に背を向け歩き出す。
と、すぐにどっかの兵隊らしき数人とすれ違う。
ここ数日、一回も兵隊を見かけなかったし、なにより向こうの方には都市の出口も何も大したものはない。
もしかして、と思ってルナに了承を取り、こっそりあとをつけてみることにする。
案の定、兵隊さんたちはめしくーべに入って行った。
聞き耳を立てて中の様子を伺う。
「我々は王子様の命により、来た者である。こちらの店で“かつ”やら“ふらい”というものが民衆の間で急激に人気が出て、王子様が大変興味を持っていられる。明日の夜に宮廷にてその味を奮ってもらいたいとのことだから、店長にお目通しいただきたい。」
「ええっと、店長は私ですが。」
「そうか、それでは――」
ふむ、これはどうしたものかな。
横にいるルナに目でどうする?と合図してみても、伝わらなかったのか疑問そうに首をかしげた。
そりゃ、現実でアイコンタクトなんてそうそう上手くいくもんじゃないわな。
巻き込まれそうだし、取り敢えずこの場は去ろうかな。
と、考えた時にはもう遅かったらしい。
「おい、そこのお前、何をしている?」
「おっふ。」
いつの間にか兵隊さんの一人が、店から出てきて俺の首元に剣を突きつけてる。
完全に逃げ遅れた。
これが異世界クオリティというやつですね、全然分かりたくありません。
そしてルナさん。
殺気も魔力も漏れてます。
別に大丈夫だから魔法ぶっ放そうとするのやめて。
余計めんどくさくなっちゃう。
どうしようかと考えていたらガントさんが出てくる。
「お!カズキじゃないか!丁度良かった。今王子様のとこの兵隊さんが来ててな。宮廷に来てフライとか作って欲しいらしいんだが、カズキの許可なくしてはどうかなと思ってたんだ。」
「へ、へぇ。まぁいいんじゃないですか?」
「そこで思ったんだが、俺じゃなくてカズキが行ったらいいんじゃないか?上手くやれば王子様とのコネも出来るし、なによりカズキの手柄を貰うみたいになって申し訳なかったからさ。」
そう来たか。
まぁ料理作るくらいなら全然構わないんだが、コネとか正直イラネ。
「ふむ、店長。今の話ぶりからすると、この料理を考えたのはこの小僧ということになるがそれでいいか?」
「えぇ、これらの料理はこいつから教えてもらったものです。なにやら故郷の料理だとかなんとか。」
「ほう、それならカズキといったな。お主にが来て作って頂きたい。」
わーお、俺の了承なしにが進んでらぁ
まぁ俺が蒔いた種だし仕方ないか。
これ以上おっさんに負担かけるのも申し訳ないもんな。
「分かりました。ところで、明日?とのことですがキッチンはそちらのものを借りれますか?あと何時頃に行けばいいんですか?」
そこらへんがはっきりしていないと、あとでなんか言われても困る。
試しに午前に行って追い返されでもしたら、イラッとして思わず城とか壊しちゃうかもしれないしテヘペロ。
「うむ、キッチンは王城のものがあるので、材料でもし特別なものを使うようであったら持参して欲しい。来る時間は……作るのには時間がかかるのか?」
「えっと、ちなみに何人前作ればいいのですか?」
「うむ、パーティの会場で出してもらう予定なので各300人前ほどだな。」
なん…だと?
そんな人数分、揚げ物だけならまだしも、ソースとか作ったら死んじまう。
「あの、ガントさん。その人数分となると、俺とルナだけでは無理なので手伝ってもらえませんか?マヨネーズとか一人でそんな量作るとか無理です死にます。」
「確かにあれはきついもんなぁ。」
遠い目をするガントさん。
ここ数日、毎日誰が作るかで揉めてたらしい。
やっぱあれは敬遠したくなるわな。
「よし分かった。みんなもいきなりあの忙しさで大変だっただろうし、明日は臨時休業して、俺ら夫婦二人で手伝うさ。」
「ありがとうございます。そういうわけでじゃあ明日はこの四人で向かいますね。」
「うむ、表の兵士には話をしておくので、早く来ても平気なようにしておくので頼んだぞ。」
「はい、分かりました。」
その確認が済むと、兵隊さんは他の兵隊を連れて去っていく。
その後、明日昼前にこちらに伺いますとガントさんたちに告げてその場を後にした。
しかしパーティか。
正装とかしないとなのかな、めんど。
明日のことに憂鬱になりながら、店を後にした。




