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ダラダラ異世界チート食べ歩記  作者: なすびいふん
11/26

医者の真似事してみた

 





 あれから、10分程バイクを走らせてアナの家に到着した。

 道中に街を見かけたので、この街中かな?と思っていたら通過してしまい、あれ?となった。

 そして、少し街から離れた丘の上に一軒家が建っていて、そこがアナの家だった。

 街中にあるのかと思ったが、そういえば獣人は忌避されているとか言ってたし、そういう理由なんだろう。

 気にせずにアナに続いて家に入って行く。

 家に入ると一人の女性がキッチンの前にいた。

 首元に黒い痣のようになっている部分があり、おそらくこの人がアナのお母さんなのだろう。

 ゆるふわの赤い髪、とてもアナを産んだ人とは思えないくらい若々しい綺麗な人だ。

 ただ顔色があまり良くないのは、やはり体を蝕まれているのだろう。

 てか黒呪病とかいうやつなのに、起きていて大丈夫なんだろうか?


「ただいま!って寝てなきゃダメだよお母さん!」

「あら、アナ、おかえりなさい、ゴホッ。朝早くに出かけていくから心配したのよ。それと、今日は体の調子がよさそうだったし平気よ。ところで、後ろの二人はお友達かしら?」

「ううん、違うの。ウェアウルフの群れに襲われてるところを助けてくれた恩人さんだよ。」

「えっ?大丈夫だったの?……ってここにいるってことは、ゴホッ、大丈夫よね。あの、娘を助けて頂きありがとうございました。」

「いえ、たまたま通りかかっただけでしたのでお気になさらず。あ、自分はカズキって言います。こちらは家族のルナですよろしくお願いします。お母様。」

「ん。」

「あら、礼儀正しいのね。私はアナの母でカリナと申します。気軽に呼んでくださいね。」

「あ、はい。」

「そういえばお母さん!カズキさんがもしかしたら黒呪病を治せるかもしれないんだって!」

「あらあら、本当なら嬉しいけど、ゴホッ、今まで誰も治せなかった病気なのよ?励ましてくれる気持ちだけもらっておくわね。」

「んもう!騙されたと思って試してみようよ!」

「大丈夫よ。その気持ちだけで嬉しいわ。それより、もうそろそろ夕食が出来るからお二人にも食べていってもらいましょう。こんなもので返せるとは思わないけど、娘を助けてくれたお礼がしたいですし。」

「もう、本当だって言ってるのに!」


 ふむ、完全に冗談か何かと思われているわけだね。

 まぁ確かに今まで誰も治せなかった病気を、こんな若造が治せるとは思わないのが普通だろう。

 アナに許可を取って、カリナさんが寝ている時にでも治せばいいだろう。

 小声でそのことを伝えると、おーけーなのだろうか頷いてくれた。

 そうと決まれば、今はカリナさんの夕食を頂こうかな。

 ルナにも確認を取り、ありがたくいただきますとカリナさんに伝える。

 一旦黒呪病のことは忘れよう、とアナと話し、アナはお母さんの手伝いをするためにキッチンに向かう。

 それじゃあ俺とルナは席に座りおとなしく待つとしよう。

 それから数分、夕食が出来たようなので運ぶのを手伝おうと思って声をかけたが、お客様ですからゆっくりしててくださいとカリナさんに諭されたので、おとなしく待つことにした。

 料理が揃い、アナとカリナさんも席について食事を始める。

 ――うん。美味い。

 ルナも美味しいのか目を輝かせながら食べ続ける。

 その光景が嬉しいのか、ニコニコしながらこちらを見るカリナさん。

 美人の笑顔ってのはそれだけで価値あるものだと思う。

 そんなことを考えながらカリナさんを見ていたら、目があった。


「そういえばウェアウルフの群れから助けて頂いたみたいですけど、お二人とも強いんですねえ。そんなにお若いのに。」

「あぁ、いや、ルナが魔法に関しては天才的なので、俺はほとんど何もしていないんですよ。」

「あら、ルナさんお一人で!凄いんですねェ。」

「そうそう、凄かったんだよルナさん!一瞬で何十本も氷の槍を作り出して一瞬で倒しちゃったんだ。」


 倒した時の状況を、嬉々として話すアナ。

 なんかここまでルナの凄さを話していると、俺、ここでお礼代わりの夕食を貰うのが申し訳ない気持ちになるな。

 お礼されるようなこと何もしてないし。


「あとね、カズキさんも凄いんだよ!バイクっていう馬の何倍も速い速度で走るものを作ったんだって!私のこと助けてくれる時も、そのバイクで遠くから一瞬で私のとこに駆けつけてくれたし、ここまで帰ってくるときもそのバイクってやつで帰ってきたんだけど、それがまた風が凄い気持ちいいんだよ!」

「あら、カズキさんは魔法技師さんか何かでしたか?」

「いえ、そんな大層なものじゃありませんよ。これはちょっとした理由で作れただけでして。」


 その後も楽しくお話をしながら夕食の時間は過ぎていった。


「そういえば、旅人さんらしいですけど、今夜の宿はお決まりで?」

「あ。やべ。」


 すっかり忘れてた。

 まぁまだそんなに遅い時間でもないし、今からすぐに街に行けば大丈夫だろう。

 その後カリナさんが寝静まった頃にでもこっそり来て治せばいいだろう。


「まだ決まっていないのでしたら泊まっていってはいかがかしら?アナもあなたたちといるのが楽しそうですし、なんでしたらこちらにいる間泊まっていっても、ゴホッ、構いませんよ?そのくらいでもしないとアナが助けて頂いたお礼が出来ませんし。」

「本当ですか!もしカリナさんたちがいいのでしたら是非お願いしたいです!」

「どうぞどうぞ。あの娘も年の近い友人がいないから仲良くしてあげてください。なんでしたらお嫁さんに貰って行ってもいいですよ。」

「ちょっと、お母さん!」


 うふふ、と笑うカリナさん。

 いやいや、本人の許可なくそれはいかんでしょう。

 本当なら嬉しゴホンッ。

 何でもないですルナさん。


「こちらこそ仲良くして頂きたいですし大歓迎ですね。ただ、本人の許可なくお嫁さんだとか決めちゃだめですよ?」

「あらあら、本人の許可があればいいみたいな言い方ですね。」

「いやいや、そういうことではなくてですね。そもそも俺みたいな人には勿体無いですよ。アナはこんなに可愛いんですから。」


 そう言ってアナの方を向くと心なしか顔が赤い。

 からかわれたからかな?


「あら、可愛いですって、アナ。良かったわね。」

「もう、お母さんってば。」

「それじゃあ、ぜひ泊まっていってくださいね。とりあえず、旅でお疲れでしょうし、ゴホッ、外に井戸がありますから、身体の汚れでも落としてきたらいかがかしら。」

「あ、はい。それではお借りします。」


 確かに、昨日は体は軽く拭いたけど、やっぱり汗でちょっと身体がベトベトするし丁度いいやと外へ向かうことにしよう。

 ルナとアナにも断りを入れて先に行かせてもらった。

 前の宿の時も思ったけどこの世界、シャワーとかお風呂って概念無さそうだな。

 どっかに定住することになったら作るかな。

 頭と身体を洗い終わったので、ルナたちと交代する。


「あ、ルナ。これシャンプーとリンス、それとボディソープ。アナにも使わせてあげて。」

「ん。」


 使い方教えてやってな、と伝えて二人と入れ替わる。

 外からキャッキャッと声が聞こえるので楽しんでいるみたいだし安心だな。

 俺は家の中でカリナさんとお話をして時間を潰す。

 しばらくすると二人が帰ってきた。


「お母さん!見て見てこの髪!凄いサラサラじゃない?カズキさんが作ったシャンプーってやつとリンスってやつを使ったらこうなったんだよ!あとね、あとね、ボディソープってやつで身体洗ったら肌がすっごいすべすべなんだよ!ほらほら!」

「あら、本当!凄いわね。私もお借りしたいわ。」


 チラッとこちらを見る。

 ああ、はいはい。


「どうぞどうぞ。いくらでも使ってください。」

「あら、ありがとう。」


 嬉々として身体を洗いに外へ行った。

 その後はみんなで話をして楽しい夜を過ごした。


「それでは私はそろそろ寝ますね。皆さんもあんまり遅くまで起きていないでちゃんと寝てくださいね。」

「はい、分かりました。」

「ん。」

「お母さん、おやすみ。」

「はい、おやすみなさい。」


 そう言って部屋に戻っていくカリナさん。

 よし、じゃあ作戦会議でも始めるかな。

 実際には作戦も何もないけど。


「アナ、それじゃあちょっとこのあとのことを話そうか。」

「あ、はい。」

「まず、もうしばらく時間をおいたらカリナさんの部屋に忍び込んで治す。治し方なんだがな、とある魔法を使って身体の悪い部分を破壊して、その後にルナに回復魔法をかけてもらうって感じだな。それでなんだけど、その際に痛みを感じて起きちゃわないように、体の感覚を一時的に奪う薬を注射するんだけど平気か?」

「はい、治るのでしたら何でも構いません。」

「ん。おっけー。」

「おし。あと、あんまり魔法を他の人に見られたくないからアナはこの部屋で待っててもらっていいか?」

「あ、はい。それでしたら部屋の前でしたら大丈夫ですか?大丈夫と信じていますがやっぱり心配で……。」

「うんそれならおっけー。よしそうと分かれば、あとは時間を潰すだけだな。」


 特にやることもなかったので、この近くにある街のことや色々なことを聞いた。

 そうして約一時間ほどたったので、そろそろ作戦決行だな。

 アナに教えてもらって、カリナさんの寝室へ行く

 音をたてないようにドアを開け、カリナさんの寝息を確認してルナと二人で部屋に入る。

 顔を見るとわずかだが苦しそうにしていて、嫌な汗のようなものも少しかいている。

 さっきまで平然としていたのは、やせ我慢でもしていたのだろうか。

 ステータスを見て見ると、状態:黒呪病の表記があった。

 これは治ったかどうかが分かりやすくていいな。

 早いとこ楽になってもらいたいのでさっさと始めよう。

 まずは即効性の麻酔の入った注射針を創造。

 あれ、そういえば俺注射とかしたことないからどう刺せばいいか分からんぞ?

 ふむ、ググるか。

 ――ようするに血を止めて血管を浮かび上がらせて、そこにほぼ平行に針を刺せばいいのか。

 よし、それでは早速。

 ……うん多分成功かな。

 薬がしっかり効くように2、3分放置する。

 次に身体の中のガン細胞が見えるように、目にそんな能力を創造。

 よし、確かに首元にあった黒ずみと、それと同様に体中に転移したであろうガン細胞らしきを見ることが出来た。

 あとはこいつらを破壊するだけっと。


「それじゃあルナ、始めるから作業中ずっとカリナさんに回復魔法をかけてもらっていいか?」

「ん、おっけー。」


 杖を持って自信満々にそういうルナ。

 よしこれで準備はオッケーだな。

 ルナに合図をして、回復魔法をかけ始めたのを確認する。

 あとは、この見えているガン細胞を少しずつ破壊するイメージをする。

 一気に破壊とかしたら吐血とかしそうだしな。

 目に見えているガン細胞が少しずつ減っていく。

 5分くらいだろうか、残るガン細胞は一割程度。

 うん、カリナさんの寝息にも問題ないし上手くいっているんであろう。

 その後、特に問題もなく治療(?)を終えた。

 ルナにもう大丈夫と告げ、カリナさんの状態がちゃんと元に戻っているかを確認するためにステータスを開くと、先程の、状態:黒死病は消えていたので問題ないことを確認。

 目を普通に戻して、眠るカリナさんを横目に部屋を出る。

 部屋の外で待っていたアナが慌てて声をかけてくる。


「どうでした!?上手くいきましたか!?」

「うん、一応病気の原因は全て取り除いたから大丈夫だと思うよ。」

「ほんとですか!?はぁー、良かったです。これでこれからもお母さんと一緒にいれます。あのカズキさん、ほんとにありがとうございました!」

「うん、まぁこっちもこれからしばらく泊めてもらえるみたいだし、それでおあいこにしようか。」

「いえ、そんなわけにはいきません。私だけでなくお母さんの命まで救っていただきました!大したお礼は出来ないかもしれませんけど、これから私に出来ることでしたら何でも言ってください!」

「う、うん。じゃあもし何かあったら頼むことにするよ。取り敢えず無事に終わったし、今日はもう寝ようか。」

「あ、そうですね。魔法を使ってお疲れでしょうし、ゆっくり休んでください。」

「うん、まぁ別に疲れてないんだけどね。」


 MPは減ったけど体力は使わなかったからな。

 まぁもう遅いし眠気も出て来たのでお言葉に甘えさせていただくことにしよう。

 明日の朝、カリナさんがどんな反応をするか楽しみだな。

 そんなことを考えながら、ルナと与えられた部屋に入っていく。






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