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六月下旬の日勤

 

 病院は冷暖房完備であり、白衣は半袖だ。季節感が無いとはいえ、梅雨本番の蒸し暑さは病棟にいても感じられる。ハンカチで汗をぬぐいながらエレベーターを待つ。

「佐倉、今日飲みに行こう」突然後ろから声をかけられ、肩がびくっとしてしまった。

「あぁ、西口先生。今日は当直じゃないんですか?」

「そう、患者さんも落ち着いてるし、早く帰れそう。この前のとこでもいいし、飲みに行こう」

「はぁ、先生、妙なうわさが立つと困りますよ。奥さん嫌がりますよ。今日高井は準夜勤務だから来れませんし」

「……別れたんだ」

「ふえ?え?」

「だから、いいんだ。もう三ヶ月になるし、もうずいぶん前から別居していたんだ。困るようなことは何も無いし。高井こそ、妙なうわさが立つと困るんじゃないかな?あいつ彼女いるらしいよ。佐倉は知らないのか?みーちゃんとかなんとか言って、にやにやして、メールばっかりしてるって、聞いたぞ」

「……そうですか」エレベーターに乗りこむ。西口は何も言わなかった。

 佐倉は『みーちゃん』が頭の中をくるくると回る。付き合っているわけではない、ただの同期で、高井は誰と付き合ってもいいし、佐倉に報告する義務も無い。わかっていても気が滅入る。

 そしてなぜ『みーちゃん』なんだろう。どうしてもあの人を思い出してしまう。あの人の名は『美也子』という。その事実が更に佐倉の胸を苦しくさせる。


 車椅子を押して、病棟に戻ると師長が佐倉を探していたらしく呼び止められる。

「佐倉さん、今日ほんとに急で申し訳ないんだけど、深夜勤務お願いできないかしら?丸野さんが熱を出してしまって、今日の深夜勤務はちょっと休んだほうがいいと思うの。ほかに頼める人もいなくて」体調不良の丸野に仕事をさせるのはかなり怖い。それは師長だけでなく、スタッフみんなが思っていることだろう。

「わかりました」

「助かるわ。ありがとう」断られることなど想定していないだろう師長は勤務調整のために足早に立ち去った。その背中を見ながら、佐倉自身も助かったと思った。


とても短くなってしまいました。

もうひとつ、15時に更新します。

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