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アルバトロスの休息地

 

 緩む頬をこらえつつ、準夜勤務のため病棟へ向かう。冷たい風がほてる顔に心地いい。まだ、腕には抱きしめた感触が残っている。

 佐倉は遅番のため、すでに出勤している。どんな顔をしていいのかわからないが、きっと、佐倉はいつもと変わらないだろう。


 休憩室に私服のままの平原が座って、何かの資料らしきプリントを眺めていた。

「お疲れ様です。どうしたんすか?」

「あぁ、今日は感染委員会があって、休み返上」顔を上げた平原は高井の顔をまじまじと見つめ、おおげさにはぁとため息をついた。

「なんか、ほっとしたような、わかり安すぎて、ちょっとやってられないっていうか、なんだか、微妙な気分ね」

「な、なんすか?急に?」

「いや、さっき佐倉ちゃん、遅番で休憩してたのよ。ちょっとアレ?って思ってて、今、高井のゆるみきった顔見て、ほんとにげんなり?」平原は心底嫌そうに顔をしかめる。

「はえ?え?いや、その、ほんとに、全然っ、なんでもないっすから」

「なんで、あわててるのよ、そういうんじゃないし。……でも、よかった。うん、よかった。高井さ、佐倉ちゃん、大事にしてね。うんと笑わせてあげて。なんだか、娘を嫁に出すお父さんの心境って感じ?」

「俺、娘いませんから」そんなこと、言われるまでもない。

「たとえよ、例え。でも、何が、どうなって、うまく転がったのよ?ほんとにいつの間にって感じ!聞きたいところだけど、教えてくれないよねぇ」

「そうっすね。ちょっと無理っす」

「うふふ、二人だけのひみつってヤツね。にやけて、ミスしないでね」平原はそう言って休憩室を出て行った。


 腕の中で佐倉のこぼした言葉は決して耳に心地いいものではなかった。佐倉の過ごしてきた日々を思うと、ありきたりで簡単な慰めの言葉をかけることなど、できるはずもなく。思いつくままに言葉を連ねて、そして、抱きしめることしかできなかった。

淡々となんでもないことのように、私も死ねばいい、早く死にたいそうつぶやく佐倉は、今にも消えてしまいそうで、とても心もとない存在に感じた。しっかりと抱きしめておかないとどこかに行ってしまいそうで、ここが佐倉の居場所だと思ってほしかった。


 休憩室を出ると、佐倉の背中が見えた。腕にその感触が、さまざまとよみがえる。

視線を感じたのか、佐倉はくるりと振り向いた。にこりと笑って、小さく手を振る。走り寄りたい衝動を抑えて高井も手を上げる。

 佐倉はまた、背を向けて歩き始める。


 いつものように、微笑を浮かべ、羽を広げて美しく飛ぶ。着地がうまくできないなら、受け止めよう。そうして、羽を休めて、また飛び立てばいい。







これにて、完結となります( ´∀`)


お付き合いいただきまして、ありがとうございます。

本当になろう様にあるまじき暗さ(´Д`|||)


楽しんでいただけましたでしょうか??



そもそも、この話を書こうと思ったきっかけを少し。


今、まさにこの瞬間も、看護師さんたちは働いてらっしゃいます。


あの方たちは、

彼氏とケンカしても、

飼い猫が虹の橋を渡っても、

子供の熱が出てても、

そんなことは全く感じさせず笑うのです。


真っ白な白衣を翻し、

背筋を伸ばして、

病棟を闊歩する姿は尊敬に値します。


モンスターと呼ばれる患者さん、

たくさんの思いを残して死と向き合う患者さん、

様々な患者さんと接しています。


決して綺麗な仕事とは言えません。

体力も精神力も必要かと思います。


そんな看護師さんたちの物語を書いてみたい。

その思いで、

看護師さんたちをアルバトロスとして、

書き連ねた次第です。



完結しますが、

まだアルバトロスたちのエピソードはチラホラ浮かんでいます。

個人的には、平原さんがお気に入りなので、もう少し書いてみたいのですが、「コンビニからはじめよう」の続編にしてしまおうかな。

西口先生もなんとかしたいところです。


佐倉ちゃんと高井は、たぶんもう浮かばないかな。

うん、たぶん大丈夫……。

この二人を思いながら、

ひたすら聴きまくった曲「P」spitz

内容と歌詞は全くリンクしておりませんが、

このメロディーがものすごく好きで好きで聴きまくったのです。

だからきっと、

この曲を聴くと佐倉ちゃんと高井を思う。

パブロフの犬みたいに(;´∀`)




読んでいただいた皆様に感謝を込めつつ、


すべてのアルバトロスたちの幸せを祈っておりますヽ(´▽`)/

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