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真夏の休日の回想

薄いですが、残酷描写です。

あまり得意でない方はスルーしてください。

ネグレクトです。

「なんであんたが生きてるの?あんたが死ねばいいのに!あんたのせいで死んだのよ。かえして、かえしてよ!」


 美也子が茉莉子の頬を思い切り打ち、倒れた茉莉子を抱き起こしたのは伯母。さらに殴りかかろうとした美也子を止めたのは伯父だった。

 茉莉子の父、美也子の夫の葬儀の後のことだった。

 茉莉子が公園に行きたいとダダをこね、父は仕方がないと笑って、手をつないで出かけた。茉莉子は公園の前の青になった横断歩道を、父の手を振り切り、勢いよく飛び出した。茉莉子を追いかけて飛び出した父は赤信号に気づかなかったトラックに撥ねられて、即死。茉莉子はかすり傷ひとつ負わなかった。 

 美也子は茉莉子に夫を殺されたと言う。茉莉子が公園に行きたいと言わなければ、横断歩道を飛び出さなければ、夫は死なずにすんだと。周りがどんな言葉をかけても、美也子は茉莉子を避難することをやめなかった。

 手をあげたことは一度きりだったが、茉莉子を今までのように育てることは難しいと伯母夫婦は判断した。


 そうして、家が近かったこともあって、伯母夫婦の家と自宅を行ききする暮らしが始まった。

 夫に代わり生活のために美也子は働き始めた。茉莉子は放課後、伯母の家に行き、美也子が茉莉子を仕事の帰りに迎えにくる。それはとても義務的であった。時間がたてば美也子は茉莉子をかわいがるようになる、もとにもどると、伯父も、伯母も、茉莉子でさえも思っていた。しかし、美也子の態度は全く変わらなかった。

 茉莉子は母に以前のように笑ってほしかった。そして、笑いかけて温かい手をつないでほしかった。けれど、母の笑顔を奪った自分に何ができるかわからなかった。


 伯母夫婦は優しく、いろいろと気にかけてくれていた。けれど当時、大学生と高校生の息子がいた。手がかかることは無いが、金銭的な問題を抱えていたことが、小学生の茉莉子にもわかった。ここにいては迷惑になると自分はやっぱり家に帰るべきだと子供ながらに思い、どうするべきか考えに考え、茉莉子は料理や洗濯、掃除といった家事全般を伯母に習うことにした。とてもいい考えだと思った。伯母夫婦の迷惑にならず、母の役に立てる、母が喜んでくれると思った。

 米の研ぎ方、お味噌汁の作り方。雑巾の使い方、洗濯洗剤の使い分け、アイロンのかけ方。小学二年生から習い始め、五年、六年生になる頃には、つたないながらもすべての家事がこなせるようになった。

 そんなころ、生活費を茉莉子に渡すよう美也子に伯母夫婦が頼んでくれた。よく周りが見えるようになればなるほど、伯母の家に頼ることができなくなっていたから、少ないながらも自由に使えるお金を使えるようになってからはずいぶん楽になった。おなかが空いて水をがぶ飲むことも、継げないほど大きな穴の開いた靴下にため息をつくこともなくなった。

 そして、茉莉子は知った。どんなに上手に料理をしても、ブラウスにピンとアイロンをかけても、ぴかぴかに浴室を磨いても、美也子は茉莉子が望むような声をかけてくれはしないと。それを知ってからも、家事を怠ることがなかったのは、伯母の教え方がよかったせいか、茉莉子自身の性格か、諦め切れなかったからかはわからない。



 そして、高校受験を控えた中学三年の年末、美也子が突然、再婚すると言い出した。茉莉子は、全く関心を持つことが出来ず、勝手にしてくれればいいと思った。高校生になればアルバイトが出来るので、お金をもらわなくてもいい。定時制高校に働きながら行くのもいい。しかし、美也子の結婚相手は茉莉子も一緒に住もうと言う。


 金銭的に余裕のあるらしい再婚相手の所有するマンションに三人で住み始めた。このマンションから通いやすい高校を薦められ、断る理由を思いつけないまま、合格通知を手にした。


 美也子の再婚相手は悪い人ではない。受験のとき、気遣うような言葉をかけてくれ、高校の費用もすべて出してくれ、仕事で帰りの遅い美也子に代わって、家事をこなす茉莉子に十分すぎる生活費とお小遣いをくれた。

 一人で過ごすことに慣れていたせいか、見慣れない女の美也子に嫌悪を感じるからか、いきなり増えた同居者に馴染めないからか、茉莉子は家にいても落ち着かない。放課後は図書館で過ごし、買い物をして帰り、食事のしたくなどの家事を済ませ、二人が帰ってくる頃には自室にこもるような生活が続いた。


 周りの同じ年の子達に馴染めなかった。茉莉子にしてみたらどうでもいいことに、あんなに一生懸命になれない。誰と一緒にトイレに行こうと、一緒に帰ろうとどうでもいい。誰が誰と付き合っているとか、誰が誰と別れたとか、全く興味を持てなかった。クラスで浮いていることは承知していたが、それをなんとかしようと思うこともなく、ぼんやりと本を読んでいることが多かった。時折、何読んでるの?と声をかけてくれる級友さえ、わずらわしかった。

 この平穏な毎日が続くと信じて疑わなかったのはどうしてだろう。あの落ち着かない家の居心地の悪さに目を背けていた茉莉子に非があったのだろうか。





この内容で残酷描写にしていいものか、悩みましたが、とりあえずつけてみました。

苦手な方もいらっしゃると思いまして。


次の更新は明日の12時を予定してます。

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