八月上旬の休日
暑い日が続いている。仕事を終えて部屋のドアを開けると、むっとした熱が充満しており、小さな窓を開けても風は通らず、部屋の熱は一向に引かない。ピッとクーラーを付けて、シャワーを浴びた。さっぱりして部屋に戻ると、そこはキンと冷えていて、ほうと息をつく。携帯に着信を知らせるランプが付いていた。父の姉、伯母からだった。
「もしもし?伯母さん?なんだった?」
「茉莉ちゃん、ごめんね。今、大丈夫かしら?」
「うん。今、帰ってきたとこ」
「来週の三回忌のことなんだけど。来れそう?」
「うん、休みだよ」ずいぶん前に連絡をしてくれたので勤務希望を出していた。伯母がわざわざ確認をする理由はひとつしか思いつかないが言葉にする気がしない。
「美也子さんが急に三回忌に来るって言い出して。前に連絡したときは、忙しいからそれどころじゃないって返事だったのに。茉莉ちゃん、どうする?」
「わざわざ、連絡してもらってすみません。いらない心配をさせてしまって、ホントにごめんなさい」
「そんなんじゃないの。謝らないで」
「伯父さんに挨拶したいし、三回忌の前日か次の日に行ってもいいですか?」
「じゃ、そうしてくれる?」ほっとした伯母の声に申し訳ない思いでいっぱいになる。
携帯をおくと指先も足先も冷たくなっていた。
日傘を手にしていても、ダークグレーのワンピースが日差しを受けて、熱くなる。伯母の家に続く、この道を歩くのはずいぶんと久しぶりだった。
門扉の横には百日紅が変わらず、鮮やかな紅色の花を咲かせていた。
弱くクーラーの効いた部屋は佐倉が小学生のころから、テレビの横の置物、壁にかけられた時計、何一つ変わっていなかったが、大きめの額縁に入れられた伯父の微笑んだ写真が一つだけふえている。
仏壇の御りんを叩くと、心地よく響く。手を合わせて目を閉じる。
「暑かったでしょ、急にごめんね」伯母は麦茶を大きめのグラスに入れて、テーブルにおいた。
「もう、三回忌だなんて信じられないわね。時間がたつのは本当に早いわ。茉莉ちゃんももう、27?28?」
「27になっちゃったね」もうあれから20年もたった。きっと伯母も同じことを思っているのだろう。伯父の写真をぼんやりと見つめている。ここにこうしていられるのは伯母夫婦のおかげだ。この二人がいなかったら、もうきっと生きてはいないだろう。
次の更新は明日の12時を予定してます。




