鋼の瞳・4
「ただいまー・・・って、今日は遅番だったな」
鞄を部屋に置きにいき、居間に戻る。
テーブルには紙に”先に食べてね”と書いてあったが
「何もないじゃないか、何か作っておきばいいのに」
ブツブツ言いながら冷蔵庫から麦茶を取り出し、残しておいたパンを取った。
ソファーに身体を崩し、麦茶をコップに注ぐ。
(ただいま〜・・・・あれ、いないのかな?)
「ん、美久?今日は早いんだな。部活はどうしたんだよ」
ソファーから上体を起こし、美久を迎える。
美久は僕の妹だ。最近は部活でいつも遅いはずなんだけど
「先生達がね、最近物騒だから部活は中止だって〜」
物騒ってもう少しいい表現はなかったのか、先生
でも、賢明な判断かもしれない。相手は確実にこの町に近づいている
それも相手が動くのはいままで夜遅くからしか動いていない
「ねぇ、兄さん。何考えてるの?」
「うわぁ!」
美久が下から覗き込んできた。顔を赤らめる僕
(いけない、いけないんだ!美久は妹なんだぞ!!)
後ろを振り向くと美久が首をかしげながらこちらを見ている。わかっていないらしい。
ここにいたらこっちの理性が持つかわからない。
「さ、さきに風呂はいるよ、あはは・・・はぁぁ」
「変な兄さん」
風呂から上がり、部屋に戻る。
こんなに鼓動が早くなったのは久しぶりかもしれない
「はぁ、まさか妹に反応するなんて・・・兄失格だな」
ベッドの上でため息混じりにつぶやく。これが異性に対する反応なのだろうか
でも、綺麗になったものだ。むしろ可愛いと言うべきだろう。
だからといって、妹に欲出してどうするのだ
「どうするだよ、僕は・・・美久かぁ。」
少し頬を赤らめる、兄妹といえど恥ずかしいものは恥ずかしい
「さて、居間に戻るか。たまには一緒にテレビでも見よう・・・え?」
色が・・・・消え・・・た・・・・
なんてことだ、よりによって家の中でくるなんて!!
今度は眼だけだ。声を上げるほどじゃないと思ったが・・・
(こ・・こいつは、痛いのレヴェルじゃない!し・・死ぬ)
死のイメージが頭に直接くる。いままでで考えられる一番の痛覚
眼の中に何かが入ってくるイメージ。
ベッドのシーツを掴み、痛みに耐えるが、耐えられるものじゃない
「がぁ、っあぁぁぁぁ・・・・」
眼の色が消える。ベッドから落ちた、完全に視界は色を失っていた
―ドン、ドン!!
(兄さん、どうしたの!!・・・・入るよ)
「!!―来るな、部屋にいるんだ!」
扉越しに美久に怒鳴りつける。ここへこさせちゃダメなんだ
来たら美久に何をするかわからない。
「いいか、美久。部屋に戻るんだ、そしてら玄関の音がするまで絶対出ちゃだめだ。」
巻き込んじゃいけない、自分の周りだけは巻き込んじゃいけないんだ
受けになるのは自分だけで十分だ、自分のことで誰かに迷惑はかけられない
「・・・・うん、でも!!」
「いいから、早く部屋に行くんだ!!」
扉を睨む。すると、視界に蒼い線が見えた
その線に神経を集中させ、器を作る
(これは・・・!!駄目だ、抑えろぉぉぉ)
視界の線が消える。いままでの色のない世界に戻った
扉の向こうの気配は消えていた。
「いったか・・・僕も行かなきゃ」
どこへ、なんのために、そんなのは解からない。
でも、きっと今夜は何かが起こるんだ。だから、僕は行くんだ。
誰かが待つ、僕を呼ぶ場所へ