鋼の瞳・3
声が、声が聞こえる。なんかいつも聴いている声が。
「・・・い。おい、千草!目覚ませよ」
あぁ、今起きるよ。だから少し待ってくれ。
「しぃ〜、ダメだよ。式くん起きちゃうよ」
「起きていいんだよ、莫迦!!ったく、不吉なこと言いやがって・・・」
「うわぁぁぁぁ・・・マツがいじめたぁぁぁ〜」
泣き出す沙耶、それをみてさらに怒る祭。
「・・・うるさいよ、ろくに寝れやしない。」
ようやく起きれた。身体の感覚もだんだん戻ってきた
でも、眼はまだすこし痛むみたいだ。
「あ、式くん戻ったんだね〜、よかったぁ〜」
「千草!!大丈夫か、まだ痛いとこあるか。」
気付いた二人が駆け寄ってきた。よかった、本当によかった
ここへ帰ってこれて、またこの日へ帰ってこれて・・・・
「ん、まだ眼がちょっと痛むかな。でも、沁みるぐらいだから」
「ダメだよ〜、ちゃんと痛いところは診てもらわないと」
沙耶が心配そうに言う
「でも、保健の木嶋先生どっかいったからな」
「だから、心配ないって。さ、授業いこう。」
「「・・・・・・」」
二人とも黙り込む。
「ん、どうした。行かないの?」
「あのね・・・いまね・・・えっとね・・・」
「千草、残念だったな。実に惜しかった。」
何なんだ、この二人は。祭、お前はなに笑ってるんだ
「あのね・・・いま5時なの」
「・・・・え?」
まさか、そんなに経ってたのか。
「ま、そういうことだ。お前は午後の授業は欠席扱いなんだ」
「なっ!それ本当か?」
二人は頷く。これは痛い。午後の授業分を挽回しなければならない
起きた早々嫌な事ばかりだ。
「あ、やっぱりへこんだね。」「あいつはあいつで真面目らしいからな」
後ろで何か言われている。
「でもでも、いつも寝てるよね?」「だから、あれがあいつなりなんだよ」
「ええぃ、うるさいぞ!」
さすがに止めないといつまでも後ろで言われそうだったので話を止めた。
二人と別れて、通りがかった公園に立ち寄った。
別にここへ意味はない、ベンチに座り星を見上げた。
今日の星は綺麗だ。雲ひとつなく、どこまでも澄んでいる
(綺麗だな、こんなにも星が綺麗に思えるなんて)
ベンチを立ち、公園をあとにした。
「今日はなんか長い一日だったな・・・どっと疲れたような気がする」
はぁ、とため息をつき、ゆっくりと歩き出す。
突然の鼓動、色の無い世界、あるはずの無いイメージ
これは何かの前兆なのだろうか。それは誰も知らない。