偽証・2
夜はいい。すべてが近く、そして遠くに見える。
闇は集い、結晶として具現する。あるモノを黒で染め上げるのだ
「はぁぁ・・・今夜も俺は求めるのか・・自身の存在を・・・」
月は頭上に、手を伸ばせばすぐそこにあるようだ
道々には街灯だけが道を示す。町はまだその明るさを保っている
こんなにも・・・月が・・明るいというのに・・・
夜の街には人が群れていた。気が狂いそうだ、反吐が出るようだ
ギリッと拳を握り締め、その感情を抑えた。
「あそこへいこう。ここはダメだ、気が狂う」
夜の道を歩き出す。この感情を抑えるためにもここを去るのだ
夜の公園。誰もいない自分だけの空間。
あそことは違う、この孤独感だ。眼を細める。
「俺は偽証だというのに、なぜここにいるのだろうか。」
その場所に問いた。答えるものは誰もいない
当たり前だ、人を避けてきたのだからいるはずがないのだ。
・・・・人の気配だ、周辺に撒いていた殺気を消した。
群れた男たちだ、15人はいるだろう。まったく不愉快だ
せっかくここに来たというのに、これでは台無しだ。
あいつらは腐っている、これは事実だ。いらないのだ。
コロス、コロス、コロス、コロス、コロス
男たちは笑っている。こちらには気付いていないようだ。
そして一人の男がこちらに気付いた。
「あ?なんだ、お前。なに見てるんだよ!!」
虫唾が奔る
「なんとかいえってんだよ、おい!」
「・・・・黙れ」
「あ?んだって?」
―!!
瞬間、男たちが退いた。
これは本能だ、人間の本能。
自分達の前にいるものが自分達の死だと気付いたのだ
「さぁ、抵抗してみせろ。もしかしたら逃れられるかもしれないだろ」
逃れる?無理だ、できるはずがない。彼の瞳に視えるのはきっと無いのだろう
すでにこちらの後の姿しか視えていないはずだ。
しかし、抵抗した。一人の男が殴りかかった。目の前の死は避けはしなかった
上半身右半分を抉り取られたのだ。殴りかかったはずの拳は完全に消えていた
そして、残った男たちを凝視した。
「――――――――!!」
言葉さえ上がらなかった。まるで風が吹いたかのように
刹那の隙さえ与えずに、終わりを告げた。
「あぁぁ・・・満ちてくる・・月が紅く染まっていくよ・・」