再来は夜に
頭上には星屑、見下ろしている大きな月
風はなく、静けさが町を包み込んでいる
この闇の中で何かが僕を呼んでいる。それは生き物なのかもわからない
でも、僕はそれに呼ばれている。それだけはわかる。
夜の公園、そこには人の気配はいない。
蛾の群がる街灯、人を乗せない玩具。夜の公園はこんなにも寂しく感じるものか
「こんばんわ、こんなところに何の用だい。式」
後ろから声がして振り向いてみると、そこには一人の男の姿があった
髪は染めておらず黒髪で、十字のネックレスをしている。
僕はこの男を知っている。
「風貴・・・兄さんなのか、なんでここに」
驚いた、いままで行方不明だった兄がいま目の前にいるのだ
風貴は笑みをこぼしたままこちらへ近づいてきた
「なんでって、ここは俺の町だからな。帰って来ても不思議じゃないだろ」
「じゃあ、今までどこに行ってたんだよ。5年も帰って来ないで!!」
腹が立つ、いままで家を人に押し付けてた兄が悠々と目前にいるのだ
そしてその風貴は笑ってこちらへ向かってくる、不愉快だ
「俺には俺の事情があるんだ、仕方ないだろ?でも、ちゃんと帰ってきたんだ」
「で、何の用で戻ってきたんだ。本当に戻ってきてくれるのか」
兄に敵意をむき出しにする。それでも風貴は動じない、むしろ押し返してくるようだ
「いやね、ちょっとした用だ。この町に異種が混じってるらしくてね。」
「異種?」
聞いたことのない言葉に戸惑う
「そう、異種は人知を超えたものを持っていたりする人のことだ」
「そんな奴がこの町にいるのか、まさか」
信じられるはずがない、異種?そんなのはお伽噺だけにしてくれ
「その異種がお前の学校にいるらしんだ。そこで・・・」
「僕にもそれの排除を手伝えと、いうことか」
「そうだ、お前も俺の能力を持っているんだろ?」
なんだそれは。風貴の能力?それが僕にもあるだって?
「まさか、最近ある眼の痛みは・・・その能力と関係が?」
「そうか、お前は眼か。いい弟を持ったもんだな、俺は」
少し大きめの声で笑い出した風貴。僕の眼はそういうことだったのか
なんてこったこれじゃ僕も人じゃ・・え?
「待って、これじゃ矛盾だ。なぜその異種が異種を排除するんだ?」
そう、その能力を持っているのだから僕らも異種じゃないか
何故同じもの同士を潰すんだ。
「それについて話すとこれが長いんだ、三日以上掛かるかもな・・・」
少しふざけた様子で答えるが、それを受け入れるつもりはない
「ちゃんと説明してくれ、僕が納得できるように」
「単純なことだ。異種がいれば一般人はどうなる?自分より強いものに逆らうか?」
「だからって・・・排除することは」
「異種を消せるのは異種だけだ。お前はいつもどおりの生活をしてればいい
俺はまた姿を眩ませれば解決だろ。いまの通りだ」
それでいいのだろうか、本当にそれでいいのか。
「そんなの理不尽だ。何もしてないだろ!」
「理不尽でいいんだ。それも運命って奴だ。さぁ、もう帰れ。明日は学校だろ?あとその”僕”ってのはやめろ、お前には似合ってないぞ」
しかたなくその場を去ることにした。去らなければどうなるかわかなかったから
なんて無力なのだろうか、僕は何もできないまま家へと戻った