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SF作家のアキバ事件簿217 犬とメイド

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第217話「犬とメイド」。さて、今回は伝統あるドッグショーの最中に審査中のスーパーヒロインが殺されます。


目撃者は彼女の飼犬のみ。しかし、捜査が進む中、犬の正体が明らかになり、捜査線上には半島絡みの国営シンジケートの巨大な影がチラついて…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 忠実の証

アキバのドッグショーは独特だ。まぁ犬がメイド服を着てて飼い主がメイド限定なだけではあるけど。


「みなさん。まもなく審査結果の発表です。トレーナーのフラン・シヅ子氏が最後の確認を行っています」


秋葉原ヒルズにある"外神田アリーナ"は熱気で包まれる。メイド犬を連れたメイド達がラウンドする度に、アリーナが揺れるほどのドヨメキが起こる。


ついでに審査のフランもメイドw


「さぁ残る質問はただ1つ。果たして最高の栄誉に輝くBOBに輝くのは? …おや?今宵のVIP席に秋葉原のセレブアイコン、ケイカ・プチヲと恋人でマネージャーのレジィがいます。やぁケイカ!2人はいつ結婚スルの?」


伝統あるドッグショーの格式アルMCが、一瞬にして芸能レポーターに豹変スルw


「きっと自分の番組"ケイカショー"の中で結婚するンだね?」

「ファンの皆さん、こんにちは。来月、私の香水が発売されるから、よろしくね。ケイカ・プチヲの"ギルティプレジャー(罪深き快楽)"よ。コレで貴女も彼氏を夢中にさせて」

「みなさん!いよいよフラン・シヅ子氏が結果を発表スル模様です!」


ワタシプロデュースの香水をアトマイザーでシュコシュコする。コレはCMタイムなのか?

2人がまるで関係ない話をしているにも関わらず、まるで何事もないかのように続く番組w


「1位、2位、3位!」


一気に指差して逝くフラン・シヅ子氏。その度に大きなドヨメキが起こり、アリーナ全体が揺れる。


「結果が出ました!本年のドックショーのBOB賞に選ばれたのは…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「レタス?」


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンクに改装したら居心地が良く常連が沈殿、客の回転率は急降下w


で、今日もヲーナーの僕と常連スピアが無駄話。


「レタスって…ソレ、人間の名前?」

「YES。小さい頃からママにそう呼ばれてて、そのママ定着したンだって」

「ソレは…悲劇だな」


ハッカーのスピアは、僕の元カノ会の会長だ。


「海外留学のカレと別れた者同士で気が合っちゃって…週末に"終末旅行"をしたいなって」

「深夜アニメ?…でも、ちょっち待った。どこに泊まルンだ?運転は?」

「テリィたんのケッテンクラートを借りよっかなって。運転したがってる男友達がいるの」


ケッテンクラートは、オートバイ式の半装軌車だ。


「笑えないな」

「テリィたん。そんな固いコト言わないで。お願い!」

「スピア、確かレタスちゃんのお母さんも御一緒なのでしょ?」


カウンターの中から助け船の出航だ。僕の推しミユリさんは御屋敷のメイド長。僕は彼女のTO(トップヲタク)だ。


「そうなの。とっても仲の良い母娘だそうですょテリィ様」

「でも、愛称選びは下手だょミユリさん」

「何ならキウリ夫人が迎えに来た時、挨拶に寄ってもらえば?」


小首を傾げるスピア。可愛い。何で別れたのかなw


「待てょ。姓はキウリ?じゃ友達はレタス・キウリなのか?」

「確かに…悲劇カモ」

「キュリー夫人なら亡くなってるし。1934年」


僕は博識を披露し、メイド長は肩をスボめる。


「何か問題?」

「だって、もし友達が結婚して原マキになったりしたらヤバいだろ?あはは」

「ケッテンクラート、貸してくれるの?くれないの?」


スマホが鳴る。


「テリィだ。また、スーパーヒロイン殺しか?…あのさ。今後2度とその名で呼ぶな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"外神田アリーナ"の一帯にパトカーが殺到、制服警官が立哨に立ち、非常線が張られている。


「審査員のフラン・シヅ子。楽屋で死んでた。ドッグショーの首席審査員。"blood type BLUE"。現金やスマホ、カード、キーは手付かずのママ」


先行してるヲタッキーズのエアリから状況を聞く。因みに彼女はメイド服、横たわる被害者もメイド服だ。


何しろ、ココはアキバだからね。


「凶器はソレなの?」

「YES。犬用の紐で首を絞められてるわ」

「死亡推定時刻はわかった?」


万世橋(アキバポリス)のラギィ警部は僕のタブレットと話してる。超天才ルイナが"リモート鑑識"で手伝ってくれてるのだ。


「彼女が最後に目撃されたのは5時15分ね。20分後にドッグショー主催者のグリンさんが遺体を発見」

「わかったわ」

「ありがとう、ルイナ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ドッグショー主催者のアムダ・グリンだ」


黒背広に蝶ネクタイの男と握手スル。


「被害者のフラン・シヅ子とのお付き合いは?」

「もう20年近く審査員を頼んでた。彼女は無類の犬好きだったよ」

「彼女には家族がいますか?」


グリン氏は壁の写真を指差す。フラン・シヅ子が大型犬と写真に収まっている。犬も人も楽しそうだ。


「ロヤルだけだ」

「ハンサムな犬だな」

「YES。彼女は溺愛していたな。彼女は、飼い主よりも犬の方と仲良くなる人だった」


そーゆー人、いるょな。犬に逃げてルンだ。


「つまり、犬付き合いは上手いけど、人付き合いは下手だったワケだ」

「飼い主とのトラブルはありませんでしたか?」

「おまわりさん、何が言いたい?」


ラギィはニッコリ微笑む。


「ショーの結果発表の30分後に殺されたので…」

「確かに、ショーの出場者はみんな飼い主で熱心だが、人を殺したりはしないよ。ましてや、フランはBLUE。スーパーヒロインだろ?」

「でも、誰かが殺しました。ショーの参加者全員と、この部屋に入れた人のリストをください」


テキパキとリクエスト。


「もちろんだ。全て提出スル」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


犬のロヤルがフロアをひっかく仕草をしている。


「おや?グリンさん。コレがシヅ子の飼い犬?」

「YES。なるべく現場から遠ざけたくてね。名前はロヤルだ」

「変な動きしてるな」


なぜ床をひっかくのかな?ココ掘れワンワン?


「そー言えば、シヅ子の遺体の近くでもやっていたな。彼なりの悲しみの表現なのカモ…おまわりさん、ショー参加者のリストが出来たょ」

「ご協力に感謝します」

「この犬は、きっと犯行時に現場にいたんだな」


リストを受け取り、黄色い規制線テープをくぐって現場を出る僕とラギィ。


「飼い主が襲われたら、守ろうとするハズだ」

「なら、犯人のDNAや証拠が付着している可能性がアルわね…マリレ、何?」

「ラギィ。フラン・シヅ子のショーの判定に異議を申し立てた飼い主がいるわ。名前はデビド・ヘナド。血管が浮き出るほど怒っていたンだって」


声を落とすマリレ。


「ドッグショー命の男らしいわ。やーね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神経質に犬をブラッシングする男。ストライプのシャツ。


「シヅ子の死は残念だが、彼女の判定の方がもっと残念だ。僕のマクスが負けるナンて」

「ヘナドさん。5時15分から35分の間はどちらに?」

「ココで異議申し立ての申請をしていた。だが、僕は殺してないぞ。だって、自業自得だろ?彼女のあの行いを思えばさ」


思わせぶりな態度。苦手だw


「どういうこと?」

「あくまでウワサだが、彼女は賄賂を受け取っていた疑いがアル」

「え。不正な判定をしていたのか?」


自分の犬を抱きながら胸を張るヘナド。


「ドッグショーは、今や秋葉原を代表するビッグビジネスだ。ラスベガスから来た連中とも関係があったよーだ」

「ソレ、スゴい重大な告発ナンだけど、キッチリとした証拠はアルの?」

「証拠?シヅ子がベストイン賞に選んだ犬を見ろ。アレはタダの雑種だぞ。私のマクスとは全然違う。不正があるコトは明らかだ」


無茶な論法だ。


「マジで賭博が行われてるのかしら」

「利口だよな。バスケットボールや競馬は、当局の監視の目が厳しいが、ドッグショーなら誰もチェックしない」

「そ。じゃヲタッキーズに調べてもらうわ」


ソコヘエアリが群青の毛皮のコートを着込んだオバさんを連れて来る。金持ちなのか貧乏なのかワカラナイ系w


「ラギィ。話を中断して少しだけ聞いて。も1度お話し願いします」

「私、フラン・シヅ子の楽屋から出て行く女を見てしまったの」

「え。どんな人でしたか?」


群青の毛皮コートはスマホを出す。


「動画を撮っておいた。フードとサングラスをしてたけど、私の目はごまかせナイわ。彼女は…ケイカ・プチヲ。直ぐわかったわ」

「え。ケイカ?地下アイドルの?」

「タイムコードを見て。殺害時刻と合うわ」


5時27分だ。白いフード付きのパーカーを着て、人目を避けて忙しなく歩く女。確かにケイカだw


視線を合わせる僕とラギィ。


第2章 胸の谷間の盗撮者


パーツ通りを署へと急ぐ。


「なぜケイカがフラン・シヅ子を殺すんだ?」

「ソンなコトより、私がわからないのは、なぜ彼女にパパラッチが殺到し、香水のプロデュースが出来て、あんなにフォロワーがいるのかってコトょ。大した才能もないのに」

「あと何でいつもこんなポーズなんだ?」


突然、ラギィに壁ドンしてみる。すると…途端にインバウンドが輪をつくって写メの嵐だ。恐らく今頃ネットには僕達の画像が溢れているコトだろう。


「あれ?プレミアのスタジャンは着てるけど、山田省吾じゃないぞ?」


が、そんな台詞が数ヶ国語で語られるや、ドヨメキはタチマチ失望に変わって人溜まりは散って逝く。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


華やかな撮影現場だ。


激しいビートの音楽。連発するフラッシュライト。スタイリストが流行最先端の服を次々とチェック…


「トイレだわ」


一瞬前まで鼻と鼻を擦り付けていたケイカは、まるで汚物を差し出すようにロリタを突き出す。スタッフに引き取らせた次の瞬間にはセクシーポーズだ。


「あ。君達は飲料メーカーの人?」


椅子に逆さまに座ったレジィが、僕達に尋ねる。


「いいえ。私はアキバP.D.のラギィ警部。ケイカに話があるの」

「そりゃ失礼。向こうで座ってて」

「なんですって?」


思い切り地雷を踏むレジィ。マネージャーとしては失格のようだが、慌てて空気を読む。


「ごめん。グラビアの撮影中ナンだ。今、飲み物を出すょ。ケイカプロデュースの"ケイカ健康パパイヤ100"だ。美味いぞ」

「ジュースも出してるの?!…でも、no thank you。もっと良い案があるわ」

「え?おい…」


バッジを示しながらケイカのカメラ目線を遮るラギィ。


「みんな、5分休憩ょ」

「待ってくれょ。ケイカに5分もあげられないぞ」

「じゃ10〜20年は?壁の中だけど」


慌てて"ケイカ健康パパイヤ100"が運ばれて来る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


長いソファに1人で座るケイカをリジィを含めスタッフ全員が取り囲む。ちょっとした"女帝"だ。


女帝、のたまう。


「フラン・シヅ子にはロリタの2週間のしつけを頼んだだけょ。撮影が始まる前にロリタの気性を直したくて」

「大人しいロリタの気性に何か問題でも…」

「手を出さないで!」


何と僕の手に噛み付くロリタw


「シヅ子に返金を要求すべきだ」

「未だ払ってないし。預けて数日で突き返されて来たの。私の依頼を断るナンて。で、私は衣装合わせやイベントで忙しいの。もう良いかしら?」

「さ。みんな、休憩は終了だ」


ケイカが立ち上がるや全員が一斉に行動を再開スル。彼女は、まるでオーケストラの名指揮者だw


「待って。貴女は、犯行現場で目撃されてるの。だから座って」

「あ、そ。ええ、わかった」

「おい、みんなも座れ」


マネージャーにスタイリストにカメラマンに…とにかく全員が座る。あ、僕とラギィは座ったママだ。


「OK。なぜ昨夜、被害者の自宅に行ったの?」

「だから、ロリタの躾を断った理由を聞くためょ」

「で、なんて言ってたの?」


芸能記者のインタを受け流す感じのケイカ。


「ソレについてはノーコメント」

「あのね。貴女は犯行時刻に彼女の部屋を出た。私達は証拠となる動画をゲットしてる。ノーコメントじゃ済まないの」

「わかった。でも、ホントに何も話してないの。だって、もう死んでたから」


ラギィは目を剥く。


「貴女、遺体を見つけたの?なぜ警察に通報しなかったの?」

「え。したわ。車に乗ってからすぐ。だったら、セーフでしょ?」

「アウトょ。通報は市民の義務。あのね、殺人現場からは誰も逃げちゃダメなの」


ラギィが言葉を失う。コレは…見モノだ。だが、お構いなしのケイカは、全く意に介してナイ。


「あのね。どんな報道も宣伝効果があるとは思うけど、遺体と一緒の写真だけはダメ。私の宣伝にはならないわ。私は、イメージが大事なの。私にはそれしかない!」

「確かにイメージだけだょね」

「…犬を返しに来た時、彼女に妙な点はなかった?」


突っ込むラギィ。何故かケイカは僕を見て微笑む。その間にカーリーヘアのスタイリストが応える。


「ケイカは彼女とは会ってません。私が対応してロリタを受け取りました。確かに、変なコトを言ってたわ。ケイカは誰の手先か?とか…何か偏執的(パラノイア)入ってた」

「原因に何か心当たりは?」

「ちっとも。だから、話に行ったのょ」


珍しくケイカのロジカルな答え。


「…そう(何だかむちゃくちゃ疲れたわw)今日のトコロは以上よ。いつでも連絡がつくようにして。秋葉原からは出ないで」

「あら。私は隠れようがないわ。だって、私が1歩歩く度にパパラッチがついて来るンだモノ」

「そう。大変ね」


溜め息つくラギィに代わり、ケイカの総括。


「そもそも"成功した地下アイドル"って何?成功したら地下じゃないでしょ?そんなコトもワカラナイなんて、秋葉原にいる人って、みんなバカね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。ホワイトボードの前で作戦会議だ。


「ケイカのリクエストを断るのは理解出来るけど、フラン・シヅ子は、なぜケイカが誰かの手先だと思ったのかしら」

「そもそも、あんなお気楽な彼女の何を恐れたのかな」

「何か隠してたんでしょ」


ソコヘヲタッキーズのエアリが駆け込んで来る。


「フラン・シヅ子の不正の話は事実カモょ。調べたら、去年フラン・シヅ子はイチゴ銀行に何度も預金をしてる。ソレも毎回100万円ずつ何度もょ」

「確かに彼女が審査するドッグショーでは番狂わせが多い。昨日優勝した犬も確率は50対1だった。穴馬ならぬ穴犬を量産してる」

「うーん彼女が仮に賄賂を受け取っていたとして、殺される理由は何だ?足を洗おうとしたか、分け前の値上げを要求したとか?」


マリレも口を挟む。


「彼女のカレンダーに毎週セラピストの予約が入ってる。殺された当日もょ。何か聞けるカモ」

「連れて来て…あら?」

「可愛いお客様ね」


制服警官が大型犬を連れて来る。


「誰かと思えばお前か」

「いらっしゃい。可愛いわね」

「この子の検体を採取したけど、人間のDNAは見つからなかった。仮にあったとしても、きっとヨダレで消えてるわ」


タブレットからルイナの声がスル。どうやら、彼女の差金らしい。犬は、僕に鼻を擦りつけてくる。


「ねぇロヤルは、この後どうなるの?遺族がいなくなっちゃったけど」

「保健所に連れて逝くのは可哀想だな。せめて動物愛護団体?…でも、万世橋(アキバポリス)で飼えば、良いマスコットになるぞ」


ボソッとつぶやくラギィ。


「もうテリィたんがいるわ」

「今のはなんだ?おい、ラギィがおかしなギャグを飛ばしたぞ?…でも、良いだろ?飼おうょ」

「そ。ま、良いわ。でも、里親が見つかるまでよ。この犬は偏食だわ。あげた餌を食べない」


僕は指示を出す。僕は、名目上だがヲタッキーズのCEOなのだ。背筋を伸ばしてオーダー。


「誰かフラン・シヅ子の家へ行って…」

「ドッグフードを取りに?」

「私もイヤ…じゃ、お互いメイドらしくジャンケンで決めましょう」


メイド2人は立ち上がる。即、負けるマリレ。


「3回勝負ょ」


また負けるマリレ。さらに…負ける。


「チョキ」


マリレのパーを切るエアリ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


セラピストは、中年のオバさんだ。Dr.バーガ。


「何年も彼女を診てるわ。旅行の日程が合う限り」

「Dr.バーガ。彼女に何かの妄想を抱いてるようなパラノイア的な兆候はありませんでしたか?」

「ナイわ。時々落ち込んで自信をなくし、過食に走る傾向があったけど」


過食?耳が痛いな。


「過食障害?そんな風には見えなかったけど」

「何でも食べちゃって、もー大変。ゴミや死んだ鳥、自分の排泄物まで食べてたわ」

「自分の?…あの、フラン・シヅ子の話ではありませんね?」


大笑いするDr.バーガ。


「私がフラン・シヅ子のセラピストだと思ってたの?違うわょ。私の患者は犬のロヤル。だって、私は犬のセラピストですもの。人間を治療したらおかしいわ」

「そ、そうだよな。人間なんて。そりゃそうだ。わっはっは」

「Dr.…じゃなかった、バーガさん?前回の犬のロヤルのセラピーの時、飼い主のフラン・シヅ子の様子はどうでした?」


主語と述語を明らかにして聞くラギィ。


「ソレが…彼、キャンセルしたの」

「セラピーをキャンセル?理由は?」

「何か急用が出来て何処かに逝くと言ってた」


要領を得ない。


「そうですか。とても有益な情報です。ご協力をどうも。何かあれば、また連絡します」

「ねぇロヤルの様子はどう?彼が犯行現場にいたってホント?彼は、何か見てるカモしれないわ。もし会わせてくれるなら、彼が何を見たかを探ってみたいのだけど」

「なるほど。フラン・シヅ子が信用していた犬だ。試すだけの価値はアルな」


ラギィは投げ槍だ。


「そ?テリィたんがそう思うなら(勝手に)どーぞ」

「良いのか?今から連れて来るけど」

「はい、ラギィ」


ラギィはかかって来たスマホに出る。マリレだ。


「ドッグフードがあったわ。きっと、ロヤルが喜ぶわね…でね?ソレだけじゃなくて、盗聴器の発見機も見つけちゃった。最近のょ」

「シヅ子は自分が盗聴されると疑っていたの?」

「恐らく。妄想性パーソナリティ障害だったのか、実際に盗聴されていたのか、どっちかね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。ホワイトボードの前。


「フラン・シヅ子は、昨日の朝11時頃に外出してました。一方、ロリタを引き取りに行ったケイカのスタイリストは、何か様子が妙だったと言ってます」

「ありがとう、エアリ。そして、数時間後に殺されたのね?何処へ行ったのかしら?」

「フラン・シヅ子のスマホのGPSが有効なら何かわかるカモ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「えぇそうね。わかるわ。そうでしょうとも…ねぇタイヘンょ!彼は心に大きな傷を負ってるわ!」


会議室の床に這いつくばるようにして、四つん這いになって犬と"会話"しているDr.バーガ。傍らで半ば呆れ顔の僕。因みに、僕はソファに座ってるw


「フランの死体を発見した時の様子はどうだったのかな?現場では、何か床を引っ掻くような動作をしてたらしい。制服(警官)が何か死を悼むような所作ではないかと言っていた。あ、アレだょ」


僕を見て床を引っ掻きだしたロヤルを指差す。


「OK。わかったわ。"話して"みる」


ロヤルの前の床にベッタリ四つん這いになるDr.…じゃナイかもしれない、バーガさん。


「ロヤル。私を見て。貴方が傷ついてるのはわかるわ。取り残された気持ちになって、きっと混乱してるのよね…かなり問題は深刻だわ。少し時間がかかりそうよ」

「…ねぇバーガさん。フラン・シヅ子は、貴女の、何だ、その"診察"を見たコトあるのかな」

「ナイわ。だって、企業秘密だモノ。こんな格好を見せるのはテリィたんが初めてょ。何で?」


意味深にニヤリと微笑まれ、僕は悪寒を感じる。


「いや別に。あ、外で待ってるょ」


後ろ手にドアを閉める時にチラ見したら、ロイヤとDr.バーガは、寄り添い合って寝そべっている。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田リバー沿いの倉庫街。覆面パトカーから降り立つラギィ警部とヲタッキーズ(エアリとマリレはメイド服だ。だってココはアキバ以下略)。


「スマホのGPSによれば、フラン・シヅ子は昨日、ドッグショーの前に立ち寄ったトコロょ。賭場仲間と会ってたのカモ」

「スマホでは済まない用事ね?」

「盗聴対策カモ」


廃倉庫だ。ビニ手をしながら鉄扉横のナンバーBOXを指差すエアリ。ポシェットからカードを出す。


「フラン・シヅ子のポケットにカードキーがあったわ」


カードをリーダーに通すと…果たして鉄扉は開く。中は暗い廊下が続く。明かり取りから光が差す。ペンライト片手に進入スル。音波銃を抜くラギィ。


「この臭いは…犬舎?」

「あぁそうみたいね。檻がアルわ。中は空だけど」

「だけど、どこに肝心の…」


その時、低い犬の唸り声。顔を見合わせるヲタッキーズ。恐る恐る振り向くと…シェパード2頭w


「シェ、シェパードょ!」

「落ち着いて。シェパードは恐怖の匂いに敏感なの。だから、絶対にビビらナイで」

「何をスルにせょ…」


突然、犬は吠えながら襲いかかる!必死に走り出すラギィとヲタッキーズ。問答無用で逃げるw


「助けてぇ!」

「アキバP.D.!アキバP.D.よっ!誰か!」

「…よし、止まれ!」


闇から声が飛び、透明な壁にぶつかったかのようにピタリと止まるシェパード。大人しくお座りスルw


「ねぇ貴女達。ココで何してるの?メイドのビラ撒きなら外で…あら。貴女達はヲタッキーズ?」

「&万世橋警察署のラギィ警部」

「令状はあるの?」


もっともな返しだw


「未だナイわ。で、ヤタラ事情通の貴女は?」

「ジクパ・タソン。ココで雇われてる。フラン・シヅ子にね。もう死んじゃったけど。で、万世橋とヲタッキーズが何の御用?」

「スーパーヒロイン殺しの捜査中ょ…ジクパ・タソンさん。ココは一体何なの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


犬舎のオフィスに通される。倉庫の警備室だったに違いない出入口近くの部屋。


「フラン・シヅ子は、新種のデザイナードックを作ってた。"フラレトリバー"ね。私は、彼女の出張中の世話係。彼女は"フラレトリバー"の開発に人生を賭けていたわ。しかし、その発表を目前にして死んでしまった」

「シヅ子について教えて。ギャンブルの趣味はあった?賄賂を受け取ったりしてなかった?」

「何それ?彼女に趣味はなかったわ。仕事に全てを捧げてた。真っ当なビジネスょ」


頭から否定するジクパ・タソン。


「でもね。彼女はイチゴ銀行に何度も多額の現金を預け入れていたのょ?」

「毎回100万円でしょ?知ってるわ。"フラレトリバー"の情報が漏れて、子犬の希望者が彼女に予約金を渡してた。ドッグショーに行く度に子犬を希望スル人達が彼女にお金を渡してたわ」

「昨日、彼女がココに来た理由はワカル?」


コチラも即答だ。


「ワカルわ。盗聴器の発見機で犬舎をスミからスミまで調べてた」

「なぜ犬舎に盗聴の恐れがアルの?」

「当たり前でしょ?デザイナードッグの繁殖や躾方法は、ビジネス上の極秘情報、いわゆる"企業秘密"ょ。"フラレトリバー"の出現を脅威と感じ、業界自体がナーバスになってたわ」


そーゆーモノなのかw


「誰のコト?」

「え?何?」

「だ・か・ら!犬の躾を頼んでる客で、彼女の、その、ソレ"企業秘密"?を狙う連中ナンだけど、彼女は、その手先だと思われてたらしいの」


ラギィは身を乗り出す。


「どの客かは言ってなかった?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ケイカ?なぜケイカがフラン・シヅ子を探るんだ?そんな必要がアル?」


捜査本部のホワイトボード前で僕はケイカの弁論中w


「テリィたん、だから…未だ未確認ょ。盗聴だってマジかもワカラナイし」

「ラギィ。ソレならアルわ。昨日の朝、盗聴器が見つかったって記録がアルわ」

「ソレで、シヅ子はケイカのスタイリストに彼女は誰の手先かと聞いたのね?ソレも殺された当日に」


自信タップリに僕を振り返るラギィ。


「地下アイドル、ケイカ・プチヲは、私達に何かを隠してる気がスル。も1度、話を聞きましょう。今回は、彼女に捜査本部に出頭してもらうわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のエレベーターの扉が開く。犬を抱いた美脚がフロアへ踏み出す。ピチピチの白ワンピース。


ケイカの出現に本部全員の目がテンw


さらに恋人兼マネージャーのレジォを先頭にカメラマン、スタイリスト、パパラッチが密集隊形で続く。


「ケイカ・プチヲ。コチラへ」

「おい。みんな、コッチだ」

「待って。入れるのは彼女だけょ」


本部全員でパパラッチを食い止める。フラン・シヅ子の飼犬ロイヤがケイカが抱いてるロリタを見上げる。


ケイカは取調室へモンローウォークで消える。


彼女が通り過ぎた時、証拠品用のビニール袋に入っていた盗聴器発見器がピピッと鳴動スル。盗聴器?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室。ハナから食ってかかるラギィ。


「私はリアリティ番組を見ないの。ねぇ。なぜだと思う?」

「まぁロリタ。Chauしたいのね?はい、しょーですか?良い子ね」

「赤ちゃん言葉はヤメなさい。取調べ中ょ」


顔をしかめるラギィ。吠えるロリタ。


「なぜ私は貴女の番組を見ないか。ソレはウソっぱちばかりだからよ。ウソをマジのように見せかける人もモノも私は大嫌い。そんなの人生の無駄だと思う」

「ねぇ私の番組をバカにスルために呼んだの?」

「いいえ。番組じゃない。フラン・シヅ子に何があったかを教えて。今回は真実をね」


遠くを見る、というかラギィの背後のマジックミラーに視線を飛ばす。まぁソコには僕がいるのだがw


「だから…もう全部話したわ」

「シヅ子は、ナゼ貴女のスタイリストに"ケイカは誰の手先か?"ナンてしつこく聞きに来たの?」

「知らないって言ったでしょ」


うーんラギィが押されてる。珍しいなw


「マジ?シヅ子の新種のデザイナードッグ"フラリトレーバー"の開発にライバル達は興味津々だったと聞いてる。貴女、産業スパイと言う言葉に心当たりは?」

「犬の産業スパイ?今、初めて聞いたわ」

「ラギィ。ちょっと…」


マリレを呼びにやり、隣室に呼び込む。ケイカがロリタにキスしたり室内を走らせてるのが見える。


「盗聴器の発見器が鳴ったの。彼女に反応してる」

「え。あんなピチピチの服で何処に盗聴器をつけてるの?まさか…テリィたん、変な妄想ヤメて。不潔ょ!」

「おい。勝手に妄想してるのは…」


エアリがブレイクしてくれる。


「ハッカーのスピアが盗聴器の周波数を特定してくれた。で、合わせてみたら、その…」

「ナンだょ見せろ。1人占めはズルいぞ」

「まあ!」


エアリのPC画像に映ってたのは…カタチの良い乳房に挟まれた胸の谷間だ。決して巨乳ではナイが…


音声が入る。


「直ぐオウチに帰れるからね。良い子にしててね」

「ケイカの声だぞ?コレって…もしや?!」

「ただのツルペタじゃないわ!ケイカのツルペタなのねっ!」


ヤケにツルペタを強調するラギィ。


「ケイカじゃない。盗聴器はロリタの首輪についてルンだ!ほら、ケイカは、いつもロリタと一緒なんだろ?」

「とゆーコトは、盗聴のターゲットはフラン・シヅ子じゃなかったの?」

「YES。ターゲットはケイカ・プチヲさ」


第3章 犬を飼いたがる者達


画像いっぱいに怪訝な表情のレジィ。鼻の毛穴までクッキリと映ってる。息を呑むケイカ。


「ずっと誰かに見られてたなんて!」

「いつも犬と一緒ってコトは…」

「ウソでしょ!シャワー中もレジィと寝てる時も?スッピンも見られたわ。すっぴんカフェにももう行けない。プライバシーの侵害ょ」


プライバシーなんかナイと逝ったのは誰だw


「パパラッチが強引なのはワカルけど、地下アイドルのためだけに盗撮までするとは…」

「私はただの地下アイドルじゃないわ。私のヌードチェキに1000万円払うファンもいるのょ」

「そうだね。安過ぎる位さ」


相槌を打つと漏れなく美女の微笑みがついて来るw


「あら。テリィたんはホントに良い人ね」

「どうも。新刊も買ってね。"太陽系艦隊コレクション"の38巻だ」

「ハンサムね。抱いて」


次の瞬間、本部に在籍スル全女子の視線の十字砲火を浴び無惨に僕の肉体はズタズタに切り刻まれる。


「1000万円は十分な殺人の動機になるわ」

「でしょ?」

「ケイカ。ロリタの首輪、いつからつけてるの?」


ラギィに聞かれ小首を傾げるケイカ。


「数週間前かしら」

「いつカメラが仕込まれたか心当たりは?」

「ロリタが私から離れるのは散歩かトリミングの時ぐらいね」


ラギィとの捜査の歯車が噛み始める。


「ケイカ。怪しい人を描き出して。全員調べるから

リストにして」

「わかったわ」

「コッチが気づいたコトを犯人に知られないようにカメラはこのままにしとこう」


何気に大事な提案をスル僕w


「そうね。いつも通りの生活を心がけてね」

「でも、隠すべきトコロはチャンと隠スンだ」

「ちゃんと隠すわ」


従順にうなずくケイカ。僕とうなずき合う。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のホワイトボード前でラギィと話す。


「だけど、ケイカが盗撮の対象だったら、何でフラン・シヅ子は殺されたのかしら」

「フラン・シヅ子は、カメラに気づいたけど、犬を返す時にソレを言い出せなかったのカモな」

「そして、ケイカのヌードチェキを盗撮してたパパラッチは、その後でケイカがフラン・シヅ子に会うと聞いて焦り、口封じのために殺した」


我ながら見事な妄想だ。


「とにかく!カメラを仕込んだ奴を突き止めましょう。ヲタッキーズ、最近のゴシップ誌の掲載写真で、犬の首輪から撮られたモノがないかをチェックして」

「何か手がかりがつかめるカモな。誰かにケイカの写真を集めてもらわなきゃね…で、ソレは僕がやろう」

「あら?テリィたん、ケイカにお熱なの?ねぇ彼女には恋人がいるって知ってるわょね?」


光速で釘を刺して来るラギィ。


「誰のコト?え?レジィ?あんなの、彼女には全く相応しくナイな。ほら、ロイヤも僕に負けず劣らず

不満顔だけど…誰が本部に犬を連れ込んだ?」

「昼寝のためよ。鑑識で飼うワケにもいかないし」

御屋敷(メイドバー)に連れてくよ。ミユリさんもスピアも留守だから、犬と遊んで過ごすさ」


すると珍しくラギィが割り込む。


「あら。私が連れて帰ろうと思ってたのょ?前から犬を飼いたいと思ってたし、良いお試しになるわ」

「そっか。そうならどうぞ。君に譲るよ…でも、やっぱり寂しいからコインで決めよう」

「じゃんけんは?」


僕は鼻で笑う。


「僕はじゃんけんのご町内チャンピオンだから、ラギィは圧倒的に不利だょ?」

「OK。ジャンケンでキメましょう」

「そこまで逝うなら…あのさ。ジャンケンには戦法があって…」


とか話してる内に、もう負けてるw


「OK。3回勝負だ」


次々に負ける。


「5回勝負」


ダメだw


「テリィたん、他の方法もアルけどどーする?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


深夜にラギィのマンションを訪れる…犬を連れてw


「約束より1時間以上遅いわ。ロイヤを共同で飼うコトにしたんだから、時間は守ってもらわないと」

「ミスタースクイークスのヌイグルミを探してて遅れたんだ。あ、夕ごはんは松坂牛をあげたから、餌の必要はないょ」

「松坂牛ですって?」


目をむくラギィ。普段着だと可愛いな。


「ボール遊びもした。その後でビバリーヒルズチワワを見たンだけど、ロイヤは意外に甘えん坊であるコトがわかった」

「どーせソファにも座らせたんでしょ。OK。テリィたんは甘やかし担当。私は悪者になるわ」

「ソファにナンか座らせないさ。(フロア)で十分だょ犬ナンだから」


神田明神も照覧あれ。私はウソをつきました。


「ソレと両目の間を撫でると、とても喜ぶんだ。こうやってね」


ラギィの手の甲で円を描くように、親指で撫でたら

何だか妖しいムードになって、ラギィは目を瞑る…


「…テ、テリィたん?!」

「え?あ、ごめん。じゃ楽しんで!僕を恋しがるなよ…今のは犬に逝ったんだ」

「おやすみ」


後ろ手にドアを閉め、しばらく荒い息を整える僕。その頃、室内では…

ソファに座るラギィのコトを、床から見上げている。つぶらな瞳で。


「…OK。良いわょ。おいで」


ラギィが手招き。途端に立ち上がり尻尾を振ってラギィに飛び掛かるロイヤ。ペロペロと顔を舐める。


「そーなの?良い子ね。可愛いわ」


第4章 シヅ子の正体


御屋敷(スピークイージー)は秋葉原ヒルズの最上階にアル。結局、徹夜だ。朝焼けが窓の外に広がる電気街を染めて逝く。


「自分ですらウンザリなのに、他人のミユリ姉様達はなおさらね。ごめんなさい、テリィたんも」

「私達なら問題ナイわ、ケイカ。続けて次の画像も見ちゃお?」

「あ。この服は木曜に着てた奴ょ。この日、ロリタはトリミングだったから、違うわ。この画像は首輪のカメラのじゃない」


今週限定にしたが、ケイカの画像データはネットに無限にUPされてる。全部見るには何晩もかかると踏んだら、何と旅先からミユリさんが突然の帰宅w


気のせいか、僕がつるぺた女子と一緒の時は、彼女は過敏に反応スルような気がスル(巨乳の時より)。


何でだろう。


「何曜日に何を着てたか、よく覚えてるな。スゴい才能だと思うょ」

「なのに、秋葉原中が、私の頭の中はカラッポだとウワサしてるわ」

「陰口は気にするな。人生で自分の香水を出せる人なんてそうはいないし」


僕は御屋敷のモニターの1つを指差す。ショッピングバッグを取り落として驚いてるケイカの画像だ。


「コレは?」

「コレなら覚えてるわ。車の影にパパラッチが隠れていたの。突然、飛び出してフラッシュを焚かれたから驚いちゃって」

「パパラッチか」


溜め息をつくケイカ。


「もう、悲しくなっちゃうわ」

「犯人なら必ず捕まえるょ」

「テリィたん、私の人生のコトょ」


ケイカの…人生?


「ヲ買い物をして、パーティに出て、またヲ買い物。地下ライブ。物販…そんなくだらない私の日常を撮るために、世界中からパパラッチが集まって来るのも嫌だけど、フラン・シヅ子はそのせいで殺された…ねぇホントにパパラッチのせいなの?姉様はどう思う?」

「だとしても、貴女に責任は無いと思うわ」

「…シヅ子に家族はいたの?」


僕はタブレットで確認スル。


「いないよ。犬を飼ってただけだ」

「そう。なら、私と同じね」

「何を逝うの?貴女の人生にはレジィがいるし、ヲ友達だって大勢いるでしょ」


ケイカは、死んだ魚の目。


「ソンな人生、タダの見せかけよ。全部、事務所のマーケティングの産物だわ」

「そんな」

「よっしゃ次だ。ビンゴ?」


煮詰まってきたので画像を切り替えたら…


「…待って。コレだわ、ビンゴ!」

「え。でも、コレは(つるぺたな胸の谷間を)上から撮ってるぜ?」

「そーなの。コレは先週のコトょ。裏アキバの芳林パークで撮影があって、ロリタが遊具の上に登って遊んでて…ちょうどこんな角度だった」


シングルマザー向けのマイナーなミニコミ誌だ。ずいぶんセコい仕事まで拾ってる。ある意味、感動w


「このミニコミ誌に画像の出所を聞こう」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「パパラッチの名前は、マカス・ハアト。この女が画像を売りつけてきたそうょ」


御屋敷のモニターに記者証の画像が映ってる。"ワラッタ・ワールドワイド・メディア"とオンラインで繋がってる。相手はメディア事業本部長だ。


で、本部長の要職にアル彼女とは、彼女がメイドをやっていた頃からのお付き合いだ(ミユリさんが)w


「確かケイカを追っかけてるパパラッチの中にいた気がスルんだって。ウチのTO(トップヲタク)が見たって逝うのょ」

「マジ?ミユリ姉様、この子はヤバいわ。迷惑行為に不法侵入。お宝写真ゲットのためなら何でもヤル系。御執心のドッグショーのプレス証も持ってるわ…で、ミユリ姉様。その人が国民的SF作家のテリィたん?マジで?イメージと違うわ。セックス弱そうじゃん」

「余計なお世話。テリィ様は原子力なのょ…じゃロリタの首輪にカメラを仕込むチャンスはいくらでもあったワケね。で、今は何処にいるのかしら?彼女」


全く余計なお世話だw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


マカス・ハアトは、ドライバーズシートに身を沈めヘッドホンに集中してる。ウィンドウをノック。


「お楽しみ中に悪いな。僕にも見せてくれょお宝画像って奴をさ」


助手席側から逃げようとするが、既にミユリさんが座ってる。ギョッと驚くパパラッチ。良い絵だ。


「おや?今をトキメく地下アイドルのケイカ・プチヲがエアロビクス中じゃナイか。昭和レトロだ。見せてくれ」

「何なのアンタ達?私はプレスょ!」

「この画像、何処のサブスク?続きも見たいな」


ドライバーズシートから引きずり出す。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


パーツ通り地下にある南秋葉原条約機構(SATO)の司令部。


「マカス・ハアト。どうやって犬にカメラを仕掛けたの?」

「ココがSATO司令部?マジでゲーセンの地下にアルのね?画像OK?」

「貴女の答え次第ね。特ダネが欲しければ、手身近かに歌ってちょうだい」


ミユリさんは、スーパーヒロインの"ムーンライトセレナーダー"に変身してる。セパレートのメイド服。


「OK。先ずムーンライトセレナーダー、貴女は勘違いしてる」

「あら。フラン・シヅ子が隠しカメラのコトをケイカにバラしたら身の破滅だと思って、貴女が殺したって逝うのは勘違い?」

「だ・か・ら。私は殺してナイし、隠しカメラもつけてナイわ。実は、ケイカのマンション前で電送画像の周波数を調整してたら、いきなりヌード画像が飛び込んで来た。私だって目を疑ったわ」


マジか。


「ケイカがパジャマを脱いですっぴんでシャワー室に入る画像ょ。彼女、何の才能もナイとみんなに呆れられてるけど、胸もない。マジつるぺた」

「おい!地下アイドルをバカにするな。ヲタクなら口を慎め」

「(テリィ様が異常に反応してる。きっとキーワード"つるぺた"が発せられたからだわw)ねぇ偶然受信したなんて信じられないわ」


ミユリさんだけがマトモに反応してるw


「とにかく!誰の仕業かは知らないけど儲けるチャンスなワケょ。アタシは急いで録画出来るよう準備を整えた。ところが、その日は犬がトレーナーの下に行っちまったの」

「トレーナーじゃなくてトリミングょ」

「そぉなの?じゃムーンライトセレナーダー、特ダネ画像を撮らせてくれるからコッチも特ダネあげるわ。スーパーヒロイン殺しの犯人を探すなら、フラン・シヅ子のビジネス相手を探して。ビジネスって言っても犬の品種改良の方じゃナイわょ」


急に好意的な態度を見せるマカス。ムーンライトセレナーダー独占インタビューと天秤にかけてる?


「そぉ。じゃ何のビジネス?」

「いつ犬が戻るか探ろうと画像を見てたら、フラン・シヅ子が怪しげな話を始めたワケ」

「ふざけないで!怪しいのは貴女の方でしょ!」


いきなり大声で決めつけ、真正面からマカスを指差すムーンライトセレナーダー。僕までビックリだw


「わ、雷キネシス?ソレだけは勘弁!歌うから勘弁して!フラン・シヅ子は半島からの荷物をどう密輸スルとか、末端価格とか闇値の話をしてた!」


思わず身を乗り出す僕。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「フラン・シヅ子は"覚醒剤"のディーラーだった?」


アキバに開いた"リアルの裂け目"の影響で腐女子のスーパーヒロイン化が止まらない。一方で"覚醒"を焦る腐女子相手に、アキバの地下では怪しい"覚醒剤"が売られている。


「彼女は先日、ピヨヤンのドッグショーに出張してるけど、ドックショーの審査員は良い隠れ蓑になるわ」

「"覚醒剤"ディーラーなら、盗撮されたり、盗撮に敏感なのも納得だな」

「となると…あの犬舎の番人は?」

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ココがSATO司令部なの?マジでゲーセンの地下にアルのね?」


犬舎マスターのジクパ・タソンは驚く。


「貴女、デザイナードッグの新種の開発だナンて、よくもまあデタラメが逝えたモノね」

「ごめんなさい、ムーンライトセレナーダー。だって、警察って嫌いなのょ。特に万世橋はしつこいから。真実味を出そうと必死で考えたのょ」

「ジクパ・タソン。貴女、事態の深刻さがわかってナイみたいね。SATOは警察じゃないの。逆に真実を知るためなら、あんなコトもこんなコトも出来ちゃうの。貴女、3時間後には廃人になって地下アイドル通りに転がってるカモょ。ソレから、例の犬舎の方はラギィが令状申請してる。何が出るか今から楽しみょ」


ムーンライトセレナーダーのマシンガンみたいな脅迫?の連続。ジクパが急に真面目な顔になる。


「なら、コッチから教えてあげる。"覚醒剤"密輸用のジェラルミンケースと約2キロの半島産"覚醒剤"。粗悪品だけど、頭の悪い腐女子なら数100人を廃人に出来る量だわ。ソレから…」


いつの間にか、ジクパの顔からはフニャフニャした表情が消え去っている。コイツ、何者だ?


「優秀な"覚醒剤"探知犬も何頭か。あのね。私は、ジクパ・タソンじゃナイわ。神田リバー水上空港の通関監視官ワイザ・ライザ。ねぇコーヒー、飲ませてょ」


背もたれにもたれかかる…ワイザ・ライザ通関監視官。顔を見合わす僕とムーンライトセレナーダー。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


SATO司令部のギャレーのコーヒーは大好きだ。何たって、パーコレーターで淹れているからね。


「つまるトコロ、フラン・シヅ子は"覚醒剤"探知犬のブリーダーだったワケ?」

「いいえ。確かに探知犬の派遣もやってたけど、自ら現場に踏み込んでた。結構、危ない目にも遭ってるわ…あら。このコーヒー美味しい」

「パーコレーターだからな。ヤタラ港湾都市への出張が多かったり、謎の預金や秘密主義も全て説明がつくね」


僕は感心スル。


「でも、まさかSATOが本件にムーンライトセレナーダーまで投入して来るとは思わなかった。まぁ警部さんには倉庫で走り回らせて悪かったとは思ってるけど。でもね、実は警察とは仲が悪いの。縦割り組織だし、ソレにお客さんが"覚醒剤"シンジケートでしょ?何事も慎重を要するワケ」

「で、ラギィ達にはケイカを調べるように誘導したワケね」

「まぁね。コッチを調べられると"偉大なる空に輝く領袖サマ"が出て来ちゃうから」


半島の"覚醒剤"ビジネスは国営事業なのだ。


「ところで、ワイザ。フラン・シヅ子の犬は"覚醒剤"にどんな反応を示すのかな」

「床をひっかくわ。何で?」

「ロイヤもやってたからさ。ちくしょう、ロイヤは僕達に犯人は"覚醒剤"を持ってると伝えようとしてたんだ」


大きくうなずくワイザ。


「大いにあり得るわ。"偉大なる空に輝く領袖サマ"にとって、鉄壁を誇る神田リバー水上空港の税関は宿敵だった。フラン・シヅ子が死ねば、半島の国営"覚醒剤"シンジケートは万々歳ょ。特にフランには、過去に何度も煮湯を飲まされてるし」

「ソレで半島シンジケートは、フラン・シヅ子の手の内を探ろうとしたのね。でも、逆にシヅ子にバレて気づかれてしまった」

「だから、シンジケートの殺し屋に始末させたのか。首輪のカメラも殺し屋の仕業だ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「カメラを仕込んだ犯人の条件は3つさ。先ず、ロリタに近づける。次にフラン・シヅ子がロリタをしつけると知っている。そして、半島の"覚醒剤シンジケート"とつながっている。この3つの条件を満たす人物が殺人犯だ」


僕が語ると、ロイヤが入って来て、クンクンと鼻を鳴らして床をひっかく例の仕草だw


「ミユリさん。床を引っ掻いてるぞ」

「テリィ様、御屋敷(ウチ)に"覚醒剤"はありません」

「じゃ何でロイヤは"覚醒剤"反応を?…もしかして、ミユリさん。香水つけてる?因みに、僕の好みは"プラカ"だ」


ミユリさんは微笑む。

 

「知ってます。でも、勘違いしないでください。ラギィにもらったからつけてるだけです」

「じゃ何でロイヤが反応スルんだ?」

「ソレは…主な原材料が芥子の花だから?」


"覚醒剤"も普通の覚醒剤も芥子を原料に作られてる。


「わかったぞ。ロイヤは殺人現場で麻薬ではなく、もしかしたら、この香水に反応したのカモな」

「でも、テリィ様。未だ発売されてない香水を誰がつけられるのですか?」

「そりゃ1人しかいないさ。でも、ミユリさん。彼女は絶対に違うょ。信じてくれ」


だが、ミユリさんは相手がつるぺただと容赦ナイ。


「でも、テリィ様。彼女は犯行現場にいたのです」

「待ってくれ。ケイカが半島の"偉大なる空に輝く領袖サマ"の女のハズがナイだろう?この件の犯人はパパラッチだ。パパラッチが深く関わっているに違いない」

「さっきの条件を振り返りましょうょテリィ様。先ずロイヤに近づける。次にフラン・シヅ子がしつけるコトを知っている。最後に半島とのつながりは…わからないわ」


ソコヘマリレが飛び込んで来る。


「姉様!ケイカは最後の条件も満たしてる。ケイカは半年前、半島でCFの撮影をしています!」

「おいおいおい、マリレ。たかが半島にロケで逝っただけじゃナイか。まだ"偉大なる空に輝く領袖サマ"とつながってるとは限らない」

「ソレが限るの。ケイカがピヨヤンで滞在していたホテルは"偉大なる空に輝く領袖サマ"ジュニアの

屋敷も兼ねているの」


屋敷も兼ねてるホテルって何だょ?あ、ウチ(スピークイージー)も同じか…ミユリさんは、すっかりドヤ顔だw


「テリィ様、決まりです」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"はい、メディアの前のファンのみなさん、こんにちは。ねぇロリタも御挨拶して。来月、私がプロデュースする香水が発売されるから、みんな、よろしくね!"


ココでケイカは、未発売の香水を景気良くシュコシュコと振り撒く。


"ギルティプレジャー(罪深き快楽)。コレで貴女も彼を夢中にさせて!"


決めセリフのトコロで画像が止まる。


「ねぇムーンライトセレナーダー。この画像が何なの?…ってか、SATO司令部って、マジでゲーセンの地下にアルのね?」

「とにかく!この約15分後、貴女はフラン・シヅ子の楽屋へ逝くわ」

「だから?」


2人のツルペタが言い争ってる。何だか萌えるw


「犯人は、貴女の香水をつけていたようなの」

「あら。そんなコトあり得ないわ。だって、未だ私しか持って無いハズだモノ」

「自分で何を歌ってるか、わかってるの?」


あっけらかんとしてるケイカ。


「わかってるわ。だって、確かに私は美少女だけど頭が良いワケじゃナイの」


知ってる。


「なぁテリィたん。コレ、いつ終わるんだ?この後、雑誌の水着グラビアの仕事が入ってる。バレンタイン号の表紙を飾るんだが…しかし、SATO司令部ってマジでパーツ通りにあるんだな」

「レジィ。その撮影、上手く逝くと良いな…ビキニかな?フリル付きの白?」

「今はツルペタ全盛だからな。巨乳時代が懐かしいぜ。あ、テリィたん。スマホ鳴ってるょ」


マネージャーのレジィと話してた僕は、慌ててスマホに出る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


白熱のツルペタ対決は続く。メイド服のスーパーヒロインvsセレブ気取りの地下アイドル。


「ケイカ。貴女、"偉大なる空に輝く領袖サマ"のジュニアと良い仲ナンだって?」

「ジュニア?スゴい良い人よ。私のポッドキャストを聞いてファンになってくれたの」

「あのね。半島の"覚醒剤"シンジケートは国営で粗悪品の輸出で国を立ててるの。知ってた?」


キョトンとした顔のケイカ。


「何で私が知ってるの?ってか知らないけど。で、何の関係がアルの?しかし…SATO司令部って(以下省略)」

「あ、ムーンライトセレナーダー。ちょっち良いかな。パツア・ゲイツ司令官が詠んでる(俳句を)」

「はい。参ります」


席を立つミユリさん、じゃなかったムーンライトセレナーダー。僕はケイカの正面に座る。


「やぁケイカ。僕が来たから大丈夫だ」

「まるで悪夢だわ。"覚醒剤"にスーパーヒロイン殺し。フラン・シヅ子のコトなんて聞かなければ良かったわ」

「ソコだょ。どーしてフラン・シヅ子のコトを知ったのかな?」


探りを入れる。無邪気に応えるケイカ。


「レジィが雑誌か何かで読んで、スゴく薦めて来たの。スゴい人だからって」

「なるほど。マネージャーのレジィがロリタを連れて逝くように言ったんだね?」

「YES。私にフラン・シヅ子を薦めたのはレジィ」


僕はモニターの停止画像を高速リピート。


"コレで貴女も彼を夢中にさせて"


空中にフワフワと香水を振り撒くケイカ。


「あのさ。レジィはシンジケート幹部の1人と同窓生だった。スイスの寄宿学校でね。つまり、半島とつながってたのは、ケイカじゃなく、君のマネージャーのレジィ・ラシィだったのさ」

「え。そーなの?」

「ヤベぇ!」


隣室で状況をモニターしてたレジィは、紙コップのコーヒーを投げ捨て扉を開くと…目の前にロイヤw


「あら。何処に逝くの?ロイヤの散歩は?」

「ムーンライトセレナーダー?!マジでメイド服(以下省略)」

「止まりなさい!」


走り出したレジィの背中に、先ず"雷キネシス"の青い光線、続いて吠えながらロイヤが飛びかかる!


先ず黒焦げになり、続いて犬に組み伏せられるレジィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


解散が決まり後片付けが始まった捜査本部。


「レジィが全部自供したわ。"偉大なる空に輝く領袖サマ"筋は、フラン・シヅ子が"覚醒剤"探知犬を育てていると睨み、レジィを使ってカメラ付きの首輪をした犬をシヅ子の下に送ったそうよ」

「ところが、目論見はフラン・シヅ子に気づかれ、レジィは慌てた。半島のシンジケートに危険が及ぶ。ケイカに捨てられる寸前のレジィは、何としても半島に取り入りたかったのね?」

「そーら見ろ。レジィとケイカの結婚秒読み説はデマだったンだ」


ドヤ顔の僕。頭ポリポリのラギィ。


「どーやらそのようね。私も今回間違ってたコトが1つあるわ。マスコットとして犬を飼ったら役に立つと思ってたけど」

「今宵は、僕がラギィのアパートにロイヤを迎えに逝く番だょね」

「そのコトなんだけど、時間制で飼うのは、長い目で見たら難しいんじゃないかしら」


独占スルつもりか?


「じゃ平日と週末とかにするか?」

「ロイヤが混乱するだけょ」

「確かにな」


キッパリ逝うラギィ。


「飼う家はどちらか1つが良いわ」

「最後まで逝うな。何が言いたいかはわかった」

「違うの。じゃんけんでは決めないわ」


肩をほぐしてた僕は拍子抜けだ。


「どうするの?」

「2人でロイヤを呼んで…ロイヤに選ばせるのよ」

「よしやろう」


立ち上がる僕とラギィ。後片付け中の捜査本部の対角線上に立つ。真ん中に座るのはロイヤだ。


「よしロイヤ。良い子だ。お座り」

「OK…ロイヤ、おいで」

「コッチだ、ロイヤ」


本部のみんなが後片付けの手を休め、集まって来る。コレは負けられないぞ。


「ホラ、いらっしゃい」

「正しい選択をスルんだ」

「おいでロイヤ。私の膝枕は快適よ」

「ロイヤ。男の友は男だぞ」


必死の呼び込みに腰を上げるロイヤ。そして…


「あら!ロイヤったら私を選んでくれたのね!」


何とエレベーターの扉が開き、ロリタを抱いたケイカの下へノロノロ歩くロイヤ。何なんだ?!


「まぁロイヤ。人を見る目があるわね」

「ちょっとケイカ。ロイヤを引き取るつもり?」

「ごめんなさいね、ラギィ。ウチには強い男が必要なの。ロイヤなら私とロリタを守ってくれそうょ。ロイヤ。貴方は今から家族の一員よ」


え。そーなの?急に萎える僕。ところが…


「テリィたん。みんなが私をバカだと思ってる中で、いつも励ましてくれてありがとう」


僕の頬にワンキッス。


「そ、そうだね。パパラッチに困るコトがあったら、いつでも連絡してくれょ。ココにいるから」

「いつかお願いするカモ」

「見て。あの子達はもう仲良しみたいょ」


ラギィが指差す先で、ロイヤとロリタが戯れ合い、互いにクンクン匂いを嗅ぎ合っている。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「お帰り。旅はどうだった?」


キャリーを引いてミユリさんとスピアが旅行から帰って来る。僕は、いつでもお留守番だ。


「楽しかったわ。テリィたんは?」

「ソレが僕も楽しんだ。ロイヤって犬とね」

「え。犬を飼ったの?」


身を乗り出すスピア。ミユリさんは微笑んでる。


「預かっただけさ。でも、ソレで色々考えてみたんだ。ほら、犬ってさ、猫と違って忠実だょね」

「あら。姉様、テリィたんは忠実な犬にメロメロになったみたいょ。メイドだって忠実ょね?古くからメイド服は服従のシンボルだったし。姉様もテリィたんに忠実なの?」

「え。忠実ょ?見ててワカラナイ?」


クスクス笑うミユリさん。何となくケシカランな。


「ミユリさん。まさか僕のコト、犬みたいだと思ってルンじゃナイだろーな」

「え。まさか。テリィ様の気のせいdeath。確かに時々エサがなくなると吠えてらっしゃるカモ」

「ミユリさん。ソレこそ気のせいだ。まさか犬を飼う感覚で僕と付き合ってるのか?」


ミユリさんは、応えない。実にケシカラン。


「で、テリィ様。犬とメイド。どちらが忠実だと思いますか?」

「そりゃ犬だろ」

「メイドです」


いや、犬だろ?



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"ドッグショー"を舞台に、秋葉原に魔の手を伸ばす半島絡みの国営シンジケート、ソレを水際で食い止める神田リバー水上空港の通関監視官達の活躍を描いてみました。


さらに、古くは服従フェチの対象だったメイド服や忠誠のシンボルとしての犬などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、冬コミ帰りでごった返す年末の秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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