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【本編完結】やいまファンタジー、もうひとつの世界  作者: BIRD
第1章:算数のない世界へ
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第4話:召し上がれ(オイショーリ)

挿絵(By みてみん)


 やあみんな、オイラはムイだよ。

 姿をかくして七海たちの後からコッソリついていったオイラは、だれにも気づかれずにお城の中を歩いているんだ。


 七海は知らない人たちに知らないところへ連れていかれて、ちょっとこわがっていたな。

 でも、あの人たちは七海に悪いことをする気はないから、心配しなくていい。

 オイラはそれよりこのお城が気になるんだ。

 こんなお城は、オイラと七海が住んでいる島にはなかったから。

 七海といっしょにいる女の人たちは「女官(にょかん)」ってよばれる、お城で働く人たちだと思う。

 そんな仕事をしている人は、オイラたちの島にはいなかった。

 だから、ここはどこかちがう島、たぶん、ちがう世界だと思う。

 その世界に七海そっくりな子がいたのは、どういうことなんだろう?

 オイラは七海がおふろへ連れて行かれるのを見たあと、そっとはなれてお城探検に出た。


 このお城、人間たちの図書館にある絵本で見た首里城(しゅりじょう)に形がにているよ。

 でも、色はちがうな。

 絵本の首里城は赤い色をしているけれど、このお城は青色だ。

 本に書いてある絵で見ただけだからよく分からないけど、もしかしたら大きさもちがうかもしれない。


 お、なんかいいにおいがするぞ。

 魚で作るスープのにおいだな。

 オイラは魚が大好物なんだ。

 においがする方へ歩いていくと、魚と水を入れたナベが火にかけられている部屋があった。

 大台所(おおだいじょ)っていう部屋だな。

 たしか、王さまとその家族の食事を作る場所だ。

 大きなナベの中には、丸ごとの魚が入っている。


 赤色の魚は、アカマチかな?

 あれはスープにするとうまいんだ。

 オイラの島の人たちは、アラでスープを作っていたな。

 このナベに入っているのは、アラじゃなくて丸ごとの魚だから、食べごたえがありそうだ。


 魚のスープを作り終えると、男の人たちは別の作業をするためか、どこかへ行ってしまった。

 よし、今がチャンスだ。

 オイラは近くに置いてあった竹串(たけぐし)を使って、皿に置かれた魚から左の目玉を引っこぬいた。

 それから、フーフー息をふきかけて冷ましてから、竹串からはずして口にほうりこんで食べた。

 魚の目玉は、キジムナー族にとってはごちそうだ。

 うん、うまい。もう1ついただこう。

 火がとおった目玉は、竹串を刺せばカンタンにホロリと取れてくる。

 2つ3つ魚の目玉を食べ終えたころに、男の人たちがもどってきた。

 オイラは姿を消しているから、見つかることはない。


「あれれ? この魚、目玉がなくなっているぞ?」


 ……まあ、魚は見つかるけどな。


 皿に盛った魚を見て、男の人の片方が首をかしげた。


「ナベから出すときに、はずれて底の方へ落ちたんじゃないか?」


 もう1人がそう言っている。


 ……うんうん、そう思ってくれ。


 オイラはコソコソと調理場を出た。

 お腹もほどよくふくれたし、探検の続きをしよう。



 オイラは見つからないのをいいことに、どんどん歩いていった。

 並んでいる柱にきれいな絵が書いてあるところまで来たとき、後ろから女の人があわてて走ってきた。

 あの人、七海といっしょにお城まで来た人たちの中にいたな。

 なにをあわてているんだろう?

 女の人はオイラに気付かずに通り過ぎていく。


御妃(ウフィ)さま、お伝えしたいことがございます」

「入りなさい」


 女の人はあざやかな色で花の絵が書いてあるドアの前まで行くと、コンコンとドアをノックして言った。

 返事をする声が高いから、中にいる人も女の人かな?

 御妃(ウフィ)さまって呼ばれているから、王妃(おうひ)さまだな。

 七海はお金持ちが建てた大きな家だと思ってるみたいだけど、ここはまちがいなくお城だ。


 なんの話をするのかな?


 オイラは部屋に入る女の人の後ろについて、コッソリ中に入った。

 姿を消しているから、2人とも全く気付いていない。


「何があったのか、話しなさい」

「はい。さきほどシロマさまがお帰りになられたのですが、自分はシロマさまではないとおっしゃられるのです」

「まあ。どうしてそのようなことを言い出したの?」


 話をする女の人たちは、王妃さまと女官だ。

 たぶん、あの男の子は王妃さまの子供なんだろう。

 きっと、七海が人ちがいだってことを言ったんだな。

 それで、女官はあわてて王妃さまに伝えに来たんだと思う。


「シロマさまは、『ぼくはこの家の子供じゃない』とおっしゃいました」

「なにかそんな風に思うことがあったのかしら」

「分かりません」

「では、私が話してみるわ」


 女官の話だけでは、なにがどうしてそうなったのか分からないよね。

 王妃さまは座っていた長椅子(ながいす)から立ち上がると、女官といっしょに部屋から出ていった。

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