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【本編完結】やいまファンタジー、もうひとつの世界  作者: BIRD
第2章:算数0点、魔術100点
18/39

第16話:強い心(チューバーククル)

 挿絵(By みてみん)


 あぁ驚いた~(あきさみよ~)

 まさかあのタイミングでリッカが目を覚ますとは思わなかったぞ。

 魔力(マジグテー)っていうのは心のエネルギーみたいなもんだろ?

 それを使い切って気絶したやつが、なんであんなに早く目を覚ますんだ?


 オイラはにげたフリをして、姿を消したまま七海とリッカが仲直りするのを見守った。

 七海は本当にリッカが好きだなぁ。

 パパやママがいない世界で、七海がさびしいと思わないのはリッカがいるからだろうな。

 リッカも七海が好きなんだな。

 だからヤキモチを焼いたんだろう。


 ふたりは仲直りしたあと、いつものように仲良くくっついてスヤスヤねている。

 リッカは七海に「これからもよろしくね」って言われたら、安心したようにまた気絶してしまった。

 やっぱりまだ魔力はほとんど無かったんだろう。

 よくあんなに話せるくらい起きていられたもんだ。


 あれか? 人間たちが言う「気力」とかいうやつか?

 体を動かす体力がもう残っていないときや、ねむくてたまらないときに、あとひとふんばりするために使う力。

 リッカは気が強いからな。

 だから、ふつうならまだ気絶しているはずなのに、目を覚ましたんだろう。

 自分がたおれたあとに七海がどうしたか、気になったのかな?


 そんなことを考えていたら、リッカの中からフワ~ッと白いけむりみたいなものが出てきて、人の姿になった。

 キレイな女の人、顔はリッカにそっくり。

 リッカが大人の女の人になって、黒髪(くろかみ)に変わったみたいな人だ。

 七海もリッカもねむっているから、女の人には気づいていない。


 ゆうれいか? まぼろしみたいに姿が半分すけているぞ。

 悪いゆうれいではなさそうだけど。

 女の人は、優しくほほえみながら七海を見つめたあと、白いけむりになってリッカの中にもどっていった。


 なんだなんだ?

 あの人、いつもリッカの中にいるのか?

 っていうか、だれなんだ?


 よく分からんが、悪いゆうれいじゃないなら、まぁいいか。

 オイラは、ふたりのジャマをしないように、そっと部屋の外へ出た。



 そのまま、城の中を歩いていたら、大台所(おおだいじょ)のほうから、あまくていい香りがしてきた。

 黒糖(くるざーたー)の香りだ。

 のぞいてみたら、クレープみたいなものを焼いているのが見えた。


 おお、あれはオイラの世界にもある「ちんびん」だ。

 小麦粉に水と黒糖をまぜて、クレープみたいにうすく焼いて、クルクルと巻物みたいに巻いたやつ。

 クレープとちがって具は入ってないけど、黒糖のあまさがあって、それだけでおいしい。


 ちょうど腹がへっていたオイラは、皿に置かれた1つをコッソリいただいた。

 作業をする台の下にかくれてムシャムシャ食べていたら、入ってきた女官(にょかん)たちの声が聞こえてきたぞ。


「お前たちの分も焼けたぞ。持っていきな」

「はぁい」

ありがとう(ミーファイユ)

「あら? ひとり分足りないみたい」

「おかしいな? 人数分を焼いたはずなんだが」


 どうやら、オイラがつまみ食いしたのは、女官たちのオヤツだったようだ。

 料理人は首をかしげながら、ちんびんをもう1つ焼いている。

 女官たちはそれを待ちながら、おしゃべり(ゆんたく)を始めた。


「マキラさま、ご病気なの?」

「顔色が真っ青で、グッタリしてらしたけど」

魔術(マジティー)の使い過ぎで、魔力(マジグテー)()きてたおれられたそうよ」

「サイオン先生(シンシー)は『しばらくねむって魔力が回復すれば目を覚ますから心配ない』と言っていたわ」


 ふむふむ。

 聞いているのは、七海がリッカを運んでいるときにすれちがった女官たちかな?

 答えているのは、七海たちの世話をしている女官たちだな。


「異世界のシロマさまって力持ちなのね。あんなに軽々とマキラさまをだいて歩くなんて」

「こちらのシロマさまは、本より重い物を持ち上げられたことは無かったのに」

「そもそも、シロマさまはマキラさまにさわろうともしなかったじゃない」

「むしろ姿を見ただけで、にげていたわね」


 おいおい。

 ナナミ、どんだけリッカをキライなんだよ。

 七海はあんなになついているのに。


「今はシロマさまが仲良くして下さるから、マキラさまはうれしそうね」

「それに、いっしょに魔術(マジティー)の練習ができて、楽しそうね」

「そうね。今まではシロマさまがにげてしまわれて、いっしょに何かをすることはなかったから」


 ナナミは、なんでそんなにリッカからにげていたんだろう?

 最初に見たリッカの感じからすると、キツイ言い方をされたからかな?

 でも、リッカは言いたくて言ったわけじゃない気がする。



 女官たちの話を聞いたあと、オイラはコッソリと七海の部屋の様子を見に行ってみた。

 七海とリッカはピッタリくっついてねむっている。

 ふたりとも、幸せそうな顔だ。


 それにしても、さっき見たキレイな女の人はだれなんだろう?

 リッカに顔がソックリだったから、ご先祖さま(ウヤファーフジ)かな?

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