久しぶりの故郷
そうして俺は洗いざらい、天職が剣聖でなくエスパーであったため父に家から追い出されたということを騎士団長に話すこととなった。それを黙って聞いていた騎士団長の顔がみるみるうちに赤くなっていくのがわかった。
「―――といった感じです。はい……」
俺が全てを話し終えると、すぐに騎士団長は口を開いた。
「―――ッ まったく……何をしているんだ、アイツはッ……」
それは、今にでも爆発しそうな怒りを無理やり抑えているような声であった。
「……………っ」
この地獄のような雰囲気で、俺はなんと言えばいいのかわからなかった。
(騎士団長……も、もしかしたら家から出ろと宣言された直後の俺よりも怒ってるんじゃないのか……? やっぱり昔の友人って言ってたし、思うところがあったんだろうな……)
それから少しの間静寂が続いたが、騎士団長が声をあげたことでそれは打ち破られる。
「一度アイツをぶん殴らせてもらおうっ!!」
俺と騎士団長しかいないその空間にそんな声がこだまする。
「え、えぇ……」
俺はその声のボリュームに圧倒されてしまっていた。
「すまない、少し声を荒げてしまった。……君は今のアイツの住まいを知っていますか?」
少しだけ、ほんの少しだけ落ち着いた様子で騎士団長は俺に、父さんの住む場所を聞いてきた。
(教えたらなんかちょっとしでかしそうだな。この人……。てかさっきぶん殴るとか言ってたな……まあいいか。俺はあの人に追い出された立場なわけだし)
「1ヶ月で引っ越していなければ私の知ってる場所にいると思いますよ。案内しましょうか?」
俺は半分くらいヤケクソで案内を申し出てみる。騎士団長はその言葉に頭を下げ、「ぜひお願いしたい!」と声を上げるのだった。
「すぐに馬車を手配しましょう。ここで待っていてください」
俺は王都の中の、超大きな城がすぐ近くに見える場所で待たされていた。騎士団長はその城の周辺にある建物の中へと入っていった。
(……マジで行くのか。ほぼヤケクソで案内するって言っちゃったけど今更後悔してるな。俺……)
そんなことを考えながら数分待っていると、やたら豪華絢爛な馬車が建物から現れた。
「さあ! 行きましょう!」
馬車の中から騎士団長は俺にそう声をかける。そんな言葉に俺は「了解しました」と答えて馬車へ乗り込んだ。
(おお! 外から見ても豪華だとは思ったけど、中もめちゃくちゃ豪華だ! テンション上がるなぁ〜)
俺はその煌びやかな内装をみてそんな感想を抱く。俺は騎士団長に言われてソファに座る。
(―――っ!! フッカフカだ! ケツがのみこまれるようだ! それに背もたれも素晴らしい! 言葉では言い表しづらいが、背中にフィット! て感じだ)
そんなふうに、馬車にテンションが上がる俺を気にせず騎士団長は話をする。
「そういえば、あなたに言おうと思っていたことがあったんでした」
「? それはいったいなんでしょうか?」
「先ほどのことです。先ほどあなたはあのモンスターどもを率いていた人間を殺しましたよね?」
俺の言葉に答えた騎士団長の顔は、厳格なものだった。
(……まさか人間を殺した俺を捕える気か!? この人! だからこんな馬車に誘い込んで……! って流石にそんなことは……あってほしくないぞ。てかあれは仕方がないだろう! ギリアムから殺しにかかってきたんだ! やらなきゃやられる状況だっただろう!)
俺はそう言った反論を心の中で叫びながら、騎士団長の言葉にとりあえず「はい……」と答える。
「……ああ、やたらと怯えた様子だと思ったら。大丈夫です。別に君を捕らえたりするつもりはないですよ。君からしたらやらなきゃやられる、というものだったのでしょう。あの男との戦いは」
騎士団長は少し表情を柔らかくしてそう言った。
(よかった。とりあえず馬車の中で捕えられて処刑、dead endってのは避けられたようだ)
俺は騎士団長の言葉に安堵する。
「では一体なぜそのようなことを?」
俺は騎士団長がなぜそう話し始めた理由がわからず、聴いてみる。
「あの人間、リザードマンのような尻尾などが生えているようにみえた。それについて何かあなたに話していましたか? 我々は彼と会話できていないので、直接彼と戦い、倒したあなたならば何か聞いているかも……と思いまして」
(なるほど、それに関してか。確かにあんなやつ、騎士団長であろうと見たことがないのかもしれない)
「それについてならば一つ、すごいことを口にしていました。騎士団長さんは知っておくべきことだと思うので話させていただきます」
「ありがとうございます。それではお願いします」
騎士団長がそう言ってくれたため、俺は話し始める。
「あいつはギリアムと名乗っていました。あいつは天職をランサーと言っていました」
「なるほど。でもまだ大事なことをいってませんね?」
「はい、重要なのはこの次です。それでは……やつは自身のことを、リザードマンと融合をした融合人間と話していました」
俺の言葉を聞いた騎士団長は驚愕の表情をする。
「ゆ、融合人間……だと!? そのようなもの、聞いたことも見たことも……し、失礼、少し取り乱してしまいました。他に何かそれに関連したことは?」
「これが事実かどうかですが、おそらく事実であることはわかりました。理由はやつが戦いの最中にリザードマンのスキルである火球を使用したことです」
俺は過去の記憶を蘇られて語る。
「なるほど。確かにランサーであればそんなスキルを使うことはできないでしょう」
騎士団長はその経験からか、ランサーのスキルを理解しているかのように言う。
「一応そいつ本人もリザードマンのスキルだと口走っていましたしね」
「……なるほど、大体わかりました。情報提供ありがとうございました。この情報は持ち帰らせていただくことになると思います。よろしいですか?」
騎士団長はそう確認をとってくるが、俺には断る理由がないため、俺はそれを承諾する。
「おっ! 懐かしい景色が見えてきました。この村の、一際目立つ白い家が父さんのいるであろう場所です」
俺は見慣れた村にその馬車が突入したことでそう口にする。
「なるほど、では馬車を止めましょうか。ここからは脚で行きましょう」
その騎士団長の言葉で俺たちは馬車をおり、村の中を歩いてゆくのだった。




