騎士団長とお父さん
「皆のもの! 今回の戦いも我々の勝利だ! 騎士団と冒険者の皆の健闘を讃えよ!」
騎士団長はその大きな剣を天に掲げて振り返り、騎士団と冒険者に向かって呼びかける。その呼びかけに応えるように、人々は「うおぉぉおおぉお!!」と雄叫びをあげる。
(ひゃあ、すごいな。これがこの国を護り続ける騎士団か)
それを聞いた俺は、その衝撃に驚く。
いずれ騎士団の人々は国の中へと入っていき、冒険者達も冒険者ギルドへと向かっていく。
「俺もそろそろ宿に行くか。もう日も暮れているしな」
俺も国の中へと入っていこうとした時、背後から声をかけられた。その声はちょうど先ほどに呼びかけをしていた人の声であった。
「少し、いいですか?」
その声に反応して俺は振り向く。そこにはやはり騎士団長が立っていた。
「はい、大丈夫ですよ。何かようですか?」
俺はそんな風に答える。
「ありがとうございます。とりあえず自己紹介を、わたしはこの国の騎士団の団長を務めている、ウォーリアス・サンチェスターと申します」
騎士団長はそう名乗り、深くお辞儀をする。
「どうもありがとうございます。ではこちらも……わたしは見上智也といいます。わたしは……普通に冒険者をやっています」
俺は自己紹介には自己紹介で返す。するとそれを聞いた騎士団長、ウォーリアスの表情がすこし驚愕のものへと変化する。
「見上……? いや、まさか……だがあの実力……」
騎士団長は小さい声で何かを呟きながら考え込んでしまった。
「あ、あの……何かありましたでしょうか……?」
俺はそんな様子の騎士団長におそるおそるどうしてこのようになっているのかを聞いてみる。
「ああ、すみません。少し気になる点がありまして……大したものではないのですが……。いや、もう思い切って聞いてみましょうか……。失礼、一つ聞かせていただきます。君は見上剣刃という名を存じていますか?」
(―――ッ! 見上剣刃……だと!? 騎士団長は俺の父のことを知っているのか!? だから見上ってのを聞いて俺に何かしら関連があるって思った……のか?)
騎士団長の言葉を聞いた俺はひどく動揺してしまう。
「その反応……剣刃について知っているのですね。あなたとあいつはどう言った関係なのですか? よければ聞かせていただきたい」
俺の様子を見て、憶測を確信に変えたであろう騎士団長はそう問いかけてくる。
(まあ……別に言ってもそんな特に何もないだろうし……言ってもいいか)
「私と見上剣刃は親子です。私は彼の息子なんです……」
俺は少し悩んだのち、そう口にする。
「なんと! そうか、君はあいつの息子だったのか! まさか疎遠となった友人の子供とこんなところで出会えるだなんて!」
感極まった様子で騎士団長はそう語る。
(父さんと騎士団長が友人!? 父さんがこんな大物と友人だったなんて……知らなかったな。あれでも剣聖の実力者だもんな)
俺はご機嫌そうな騎士団長を眺めながら父のことを思い出す。
「それで最近あいつはどんな調子なんですか? 10年くらい前からあいつとは疎遠になってしまって……それから数年は冒険者としての活躍は聞いていたんですが6年くらい前からそれも聞かなくなって……ずっと気になってたんです」
少し落ち着いた騎士団長は俺に向かってそう聞いてくる。
「私も1ヶ月前くらいの父さんしか知らないですが……それでもよければ軽くお話ししましょうか?」
(正直そんなに語ることもないけれど……ずっと剣の特訓だったから)
そんな俺の言葉に騎士団長はこたえる。
「ああ、そうか。君は相当若いように見えます。ちょうど1ヶ月ほど前に加護を授かり、旅に出たということですね?」
「旅に出たというより追い出された……」
騎士団長の言葉に反射的に俺はそうこたえてしまう。
(あ! これ、言っちゃまずかったかな……)
俺の言葉を聞いた騎士団長は顔をしかめる。
「追い出された……とは一体どういうことですか? あまり人の家庭の話に首を突っ込むのは良くないのですが……今の言葉からよくない想像ができてしまって……」
「え、えと……なんでもないですよ。言葉選びをミスしたというか……」
俺はとりあえず、父に追い出されたというその事実を隠そうとする。だがそんな俺の様子からか、騎士団長は確実に何かがある、と悟った様子になってしまう。
(……ミスったな)




