ミラージュステップ
「レベルが87から91に! 一気に上がったな。 しかも新しいスキルだ」
俺は視界に映る文字を見てそう口にする。そこには『ミラージュステップ』と映し出されていた。
「うーん。名前で内容が予測できないタイプのスキルだ。こういうときは……」
俺はアイテムバックからいつものスキルの説明がある本を取り出す。ペラペラっと俺はそれをめくり、エスパーのページまでめくる。
「この作業も慣れたものだな。さて、ミラージュステップは……って、えぇ!?」
俺は衝撃を受ける。なぜならその本のエスパーのページは、前回のスキルの解説で終わっていたからだ。
「いったいなんで……って、下の方に小さく何かが……え、マジか」
俺の見つけたその小さい文字は、『我々の中にエスパーでこれ以上レベルを上げられたものはいなかった』という記載であった。
「エスパーでレベルを上げられなかった……ってつまりそこまで到達する実力を手に入れられた人がこの本を書いた人たちの中にはいなかったのか……。この本は俺が買った時にはその本屋で、解説本人気ランキング1位と言われていた。つまり信憑性は高いはず。ということは……この世界にここまでレベルを上げたエスパーはほとんどいないのかもな」
俺は腕を組んで悩む。なぜならその本になければ、俺がスキル内容を把握する方法は実際に使ってみるしかないからで、しかも俺は実際に使ってなおどのようなものかわからないスキルがあることを知っている。
「まあ……とりあえず使ってみるか。それで分かれば問題はないし」
そういって俺はスキルを発動する。
「ミラージュステップ!」
直後、俺の身体がブワッとブレると、4つに分裂していた。いや、分裂したってわけじゃない。俺の分身が生み出されたのだ。
「おお! こんなスキルだったのか、これ。この分身、ずっと棒立ちだけど動かせるのかな。今までのスキルってわりと思考を具現化したりとか、思考が関わってくるものもあったし……」
そうして俺は思考する。
(まっすぐに歩け!)
直後、俺の思考に応えるようにその分身たちは、思考の通りまっすぐに歩き出す。
「おぉ! ちゃんと指示通りに動いた! 指示通りにしか動いてないおかげで壁に激突してなお脚を止めない!」
俺は四体の分身がボス部屋の石の壁に向かって歩き続けるさまをみながら、そのスキルの効果に興奮していた。
「こいつらって、壁に当たり続けてるってことは実体があるってことだよな。てことは攻撃もできるのか?」
そう考えた俺は一つ、ある指示を思考する。
(俺を軽く殴れ!)
その指示を受けたのか、分身達は走ってこちらに向かってきた。そしてそいつらは軽く拳を握り……
ポカっ!
俺の頭部をポカポカと殴り始めた。
「おお! 感触がある! てことは攻撃もできるのか! だったらこれはどうだ?」
そうして俺は思考する。
(壁にねんりきを放て!)
その指示を受けた分身達は壁の方を向いて手をバッ! と開き……揃って「ねんりき!」と叫んだ。しかしその手から光線が現れることはない。
「ふむ。こいつらはスキルを使うことはできないのか。というかこいつら、消えないのかなあ。こういうスキルは時間制限とかありそうなんだけど」
そう考えた俺はその場で座禅を組み、長い時をボーとして待機する。
「ふむ、だいたい30分たっても消えないってことは消さない限り残り続けそうだな。てか消せるのか? それに今まで思考で指示をしてたけど、普通に声かけて指示できないのかな。試してみるか……よし、分身達、いったん消えてみろ!」
その指示を受けた分身達はぼうっと陽炎のように消える。
「普通に声で支持できるのかよ! まあ便利だからいいけどさ」
俺は驚きながらもその便利さに感動する。
「これなら色々な使い方ができそうだ。いいスキルを手に入れたな。それにしても、俺はわりと長い間ここにいるな。外はそろそろ暗くなってそうだ。一旦外に出るか」
そうして俺は人工ダンジョンから出るのだった。




