灼熱鬼
あれからいくつかの階段を降りてきて、俺は広い、けれど入り組んではいない、今までとは違った空間へたどり着いた。
「何かデカいモンスターがいるな。ということはここはあのボス部屋ってのであいつはボスっていうやつか」
人工ダンジョンに入る前に建てられていた看板に説明が記載されていた。ざっくりと読んだ感じ、人工ダンジョンには定期的に強いモンスターがいる部屋に辿り着くらしい。その強いモンスターこそがボスってので、それを倒してそいつに人工ダンジョンを運営してる人? たちが持たせたチケットを手に入れられればなんか豪華な道具とかお宝みたいなのと、受付で引き換えられるとか。
「まあそういうの関係なしにこの先に進むなら倒さなきゃだしな。やってやるか」
そうして俺は、ボスに見つからないようにその空間へ入り込んでいく。すると階段のすぐ手前に鉱石のようなものでできた看板をみつけた。
これ、文字が書いてあるな。『灼熱鬼』? よくわからないけど名前みたいだな。ボスの名前とかか? まあ戦ってみればわかるかな。
そうして俺はそのボスの姿を視界に入れる。そいつは赤い鬼の姿をしていて、身体の節々で赤い豪炎が燃え盛っていた。
やっぱり灼熱鬼ってのはこいつの名前で間違いなさそうだ。まだ俺がいることに気づいてはなさそうだし先手必勝ってやつだな。
「ねんりきっ!」
放たれた光線は見事にそいつに命中する。そいつは攻撃されたことで俺の存在に気づき、ぐるりと回転し、こちらに身体を向ける。
ねんりきで貫かれることはないか。弱いモンスターはねんりきが身体を貫通するんだが……こいつは強めのモンスターみたいだな。
俺が考えていると、突然、灼熱鬼は大きな雄叫びをあげる。するとやつの足元に炎が現れ、それが俺の方へと地面を這って向かってきた。
「! 地面から炎が……! 自己暗示!」
俺はスキルを使い、自身のスピードを増加させ、その炎を回避しようと横方向に走る。
!? 炎の方向が変わった!? この炎、俺のことを追いかけてくるのか……! だったら……
「サイコクラッシュっ!」
俺は自身の足元にそのスキルを使用し、そこから真っ直ぐ少しさがることで炎がちょうどそのスキルの上を通るタイミングに、爆発が起こるようにする。
実際に俺の狙い通り、綺麗にその炎は爆発に飲み込まれる。
さて、これで炎が消えているかどうか……。
そうして爆発の煙が晴れた頃、その炎は綺麗さっぱりなくなっていた。
「よしっ! 読み通りだ!」
あの炎、スキルで相殺することならできるみたいだな。サイコクラッシュだけじゃなくて、ねんりきとかでも相殺できそうだ。まあサイコクラッシュの方が簡単にできそうだけど。
てかあいつ、炎が消されたことに驚いているのか? 表情が歪んでるな。
そんなふうに俺が眺めていると、そいつは「グォ゛ォォ゛ォ゛!!」と叫んだ。やつの身体は炎に包まれ、そしてこちらへ向かってドスドスと大きな足音を立てて突進を開始する。
「! あれを受けたらひとたまりもなさそうだ。とりあえず遅延!」
俺のスキルの力で、灼熱鬼の動きが一気に遅くなる。そんな灼熱鬼の前まで俺は歩いて行く。
「これくらいのスピードでならタイミングよくってのも簡単だな。反射!」
無事、俺のスキルは成功して攻撃はそっくりそのままヤツが受けることとなった。その攻撃を受けたヤツは、全身が燃え、大きくのけぞる。体制を直した後も炎に苦しんでるように見える。
「ひゃー、あれを受けたらこんなことになってたのか。反射して正解だったな。ま、ついでにこれも食らっとけ! ねんりき!」
苦しむそいつは回避行動をとることもできずにその光線をモロに受ける。とうぶんそいつは動けずにいたが、そいつを苦しめていた炎がようやっと消えたと同時にやつは怒りの雄叫びをあげるのだった。




