剣術
「ぐう……」
バタン、と俺は地面に倒れ込む。
振り下ろされた刀を返して、切り上げられた?
燕返しって言ってたっけ。瞬時に刀を返すスキルなのかな。
俺が考えていると、レイラは倒れた俺を見下ろすようにたって俺に声をかける。
「私の勝ちですね。ご主人様。大丈夫ですか?」
「う、うん。大丈夫」
そう言いながら立ち上がろうとする俺にレイラは手を差し伸べる。
「ありがとう」
俺はその手を取り、レイラに引き上げられて立ち上がる。……
「ふぅ。結局あなた様の天職がなんなのかは分かりませんでしたね……」
「まあ、そもそも剣での戦いで使うようなスキルはあんまりないしな」
「え? じゃあ剣を使う天職ではない? じゃあなんで剣を握って……。それではいったいあなた様はどんな天職なんですか?」
「俺の天職はエスパーだよ」
「エ、エスパー? それであそこまで剣で戦えて……? まるで長い間剣を握ってた動きだったのに……」
「それは、まあ。5歳より前は剣士みたいな天職だと思ってて、ずっと剣の特訓をしてたからかな」
「それは親の天職から思い込んでたのですか?」
「まあ、そんな感じだよ」
「剣士系だと思い込んでて蓋を開けたらエスパーだったってあなた様のご両親はいったいなんの天職なんでしょうか」
「それはとりあえずヒミツで」
あまり両親が剣聖ってのは言いたくないし……
「別にあばこうというわけではありませんよ」
それならよかった。よし、こっちからも聞いてみるか。
「それじゃあちょっと聞きたいんだけど、さっきの燕返しってスキルはどんなスキルなんだ?」
「あぁ。あれですか? あれはスキルじゃありませんよ。あれは剣術の一つです。いや、剣技って言うべきでしょうか」
「剣術?」
「はい。剣を振り下ろした後、踏み込んできた相手に対して瞬時に刀を返して切り上げる。まるで燕が身を返すように。そんな剣術です」
そんな剣術が……。俺が鍛えてきた剣術とは完成度が違いすぎる。俺のはあくまで剣聖との特訓で自然に出来上がってたモノだからか。
「なるほど。ありがとう」
「……剣術を、学ぶ気はありませんか?」
「剣術を?」
「はい。あなた様の剣を見て思ったんです。あなた様の剣はまるで身体の一部のように動いていました」
「身体の一部のように? まあ剣は生まれてからほとんどずっと振ってきたしそんなもんなのかな。それでそれがどうしたんだ?」
「剣を身体の一部のように扱える。それはほとんどの場合はメリットになります。剣を身体の一部のように扱えるということは、剣を自分の思う通りに動かすことができるわけですから」
「まあ、身体を自分の思う通りに動かせないことだなんて、それこそ身体能力が自分の想像に追いついていないとか、人間にはできるわけがないことをやってみようとするだとか、それくらいだしな」
「そうですね。ですが、剣を自分の身体のように動かせない人間なんていっぱいいるんです。自分の身体能力ならできる剣の扱いをできない人はいっぱいいます。むしろそっちの方が多いと思います。私もそうだと思いますし。その上で剣を身体のように扱えると言うことは、剣を自分のできる最高で剣を扱えるわけです」
「それがどうして剣術を学ぶってのに繋がるんだ?」
「あなた様は剣を道具として扱えていません。あなた様にとって剣を使うのは身体を動かすのと同じようなものですから」
「剣を道具として扱う……。もしかして、それが剣術ってわけなのか?」
「そうです! 剣術は道具なんです。剣での戦闘の中で扱われる道具。それが剣術なんだと私は思います」
今まで剣術っていうのは剣の型のようなものだと思ってたけど、道具って見方もあるのか。
「分かった。学んでみることにするよ。どうやって学べばいい?」
「基本的には、剣術学園のような場所に通って学びますがそもそも剣術学園は数が少ないですし、結構お高いですからね」
「じゃあどうしたら?」
「私が教えましょうか? 学園とかと比べると教えられるものは減りますが、私もそこそこ剣術を学んでいますしとりあえずは私が教えるというのもありだと思いますよ」
「ならそうしてもらおうかな」
「分かりました! では剣術を学びたいと思ったときには私をお呼びください。家の中に私やメイドを呼ぶ電話がありますのでそちらでお呼びください」
「分かった。それと……できたら今からいくつか教えてくれないか? 俺明後日から王都にでかけることになってて次にいつ帰ってくるかわかんないんだ。明日は色々準備しなきゃなんないだろうし」
「なるほど。分かりました。では早速、よく使うものから教えましょう!」
そうして俺はレイラにいくつかの剣術を教わるのだった。




