VS剣豪
レイラさんに案内されて真っ白な壁や床に天井から黄色い光が当たる、まだすっきりとした家の中をトコ、トコと歩いて1時間。1階と2階の内装を案内され終わった俺は地下へと誘導されていた。
白い螺旋状の階段を30段ほど降りていく。
やがて開けた空間にでるとレイラさんが口を開く。
「こちらは修練場となっております。ここでは4台設置されている人形を相手に剣の訓練をしたり、広い空間を利用して模擬戦をしたりすることが可能となっています」
あの時に言った剣の練習をする場所がこんな広い空間になるとは……。
「さて、せっかくこんなに広い修練場があるのです。私と剣を交えてみる気はありませんか?」
突然、レイラさんがニヤリと笑ってそんなことを言い始める。
「えっ、えぇ? レイラさんって剣を使えるの?」
「レイラだけで大丈夫ですよ。それと私、昔は冒険者をやってましたし天職は剣豪なので。そこそこは強いと思いますよ?」
剣豪って確か剣士と剣聖の中間くらいの結構強いって言われる天職だったか。剣豪と戦ったことはないしやってみるのもありか!
「分かった。それじゃあやってみるか」
「ありがとうございます。それではこの木刀をお使いください」
「ありがとう。そういえばスキルとかを使うのってアリなのか?」
「うーん。私が決めても良いのでしたら、スキルの使用はアリで。木刀とはいえ全力でやり合いましょう」
「分かった」
そして俺とレイラは木刀を手に取り、向き合うようにそこそこの距離をとって立つ。
やがて、レイラの声と共に戦いは始まった。
「行きますッ!」
そう言ってレイラはこちらに向かって一直線に走ってくる。
「一閃!」
そのスキルを発動すると、レイラの周りに白い稲妻が現れる。
瞬間、レイラの動きが一気に加速し俺の前へと現れる。
「はあッ!」
その言葉と共に放たれた突きを俺は自身の剣で受け止める。が俺の剣はその威力を受け止めきれず、俺の身体は後ろにズズッと下がってしまう。
「くっ!」
「さぁっ! どんどん行きますよ!」
右から、左から、レイラの宣言通りどんどん迫る木刀を俺はかろうじて受け止める。
くそっ。攻撃に転じれない。なんとか隙を作るしかないな。レイラの剣はだいたい右、左の順番で振られてる。たまに突きがくるけど突きの時は一度剣を引く動きをするからわかりやすい。
だったら!
そうして俺は左から剣が迫ってきた、そのタイミングで剣を受け止める。と同時にその剣を勢いよく前に弾く。
「きゃっ!?」
レイラは大きく体勢を崩し、よろける。
「引き寄せ!」
よろけたレイラに引き寄せを使い、こちらにグイッと彼女の体を引き寄せる。
そのまま俺は勢いよく剣を振るう!
俺の剣は受け止められ、そしてスーっと流される。
受け流されていた。
「ふぅ、危ないですね」
「簡単に流しておいて、よく言うよ」
「さて、もう一度行きますよ! 一閃!」
再びレイラの身体にいつのまにか消えていた白い稲妻が現れる。
また加速するんならこっちも加速するか!
「自己暗示!」
俺はそのスキルでスピードを高める。
レイラは目の前に迫り、さっきと同じように剣を一直線に突き出す。
「避けられた!?」
スピードを上げといてよかった! っとよく見たら稲妻がレイラの周りから消えてるな。
ということはスキルの名前の通り、1振りきりの加速なのか。
「引き寄せられたり急に速くなったりして……。あなた様の天職は一体なんなのでしょうか。検討つきませんね」
「知られたら困るからなぁ。答え合わせは先送りにしておくよ」
「残念です。頑張って引き出すしかありませんね。イーグルスラッシュ!」
彼女が剣を一振り。横に振るうと、剣から青白い斬撃が高速で飛んでくる。
瞬時に俺はしゃがむことでそれを回避する。
その斬撃は俺の髪をわずかに切って飛んでいく。
危なッ!
「もう一発……。イーグルスラッシュ!」
レイラから前方斜め下に向かって進むその斬撃を、俺は後退して回避する。
1回目を撃たれてから2回目が撃たれるまでの時間がそのままクールタイムなら大体イーグルスラッシュのクールタイムは3秒か4秒くらいか。
「ふむ。上手に避けますね。さすが私のご主人様」
「上手に」なんて言って。ギリギリなのに気づいてるくせに。まあ次のはちゃんと上手に避けてやるけどな。と、そろそろ来るな。
「さて、それではもう一度。イーグルスラッシュ!」
斬撃がグングン近づいてくる。
今だ!
タイミングを合わせて俺は跳躍する。
「なるほど。タイミングを合わせられましたか。であれば、一閃!」
なるほど。レイラは着地するタイミングを狙うつもりか。だったら……。
「はぁッ!」
俺は空中で剣を真下に振り下ろす。
カァン!
その剣はレイラに受け止められてしまう。
その隙に俺は地面に着地する。と同時にもう一度剣を振るう。
カァァァァン!!
剣を受け止め、もう一度振るわれていたレイラの剣と、俺の剣が衝突する。
2本の剣は競り合い、離れる。
が、再度2本の剣は競り合い始める。
カン、カン、カンと剣と剣が競り合う音が修練場にこだまする。どんどんその音はテンポを早める。
いずれその音は、まるで激しい音楽の締めの音のように鳴り響いて消える。
「はぁ、はぁ、さすがサイクロプスを相手にたくさんの人を救い出し、はぁ、レッドドラゴンを相手に騎士団到着まで耐え切った人ですね……」
「はぁ、どっちも周りにいた人のおかげだよ……」
「大体の人はレッドドラゴンなんて前にしたら、逃げ出すんですけどね……。まあいいですよ。あなた様はそういった人って聞いてますからね」
そういった人ってどういった人だよ……。
「さて、次で終わらせましょう。では……」
レイラが剣を構え、一直線に向かってくる。
レイラが剣を振り下ろした、直後。そこを狙い、そして撃つ!
「自己暗示!」
俺のスピードが向上する。
シュン!
レイラの剣が振り下ろされ、俺は横に移動する。
レイラの剣は宙を斬った。
「はぁ!」
そんなレイラに俺は剣を振り下ろす。
がその剣はレイラに届くことはなかった。
代わりにレイラの剣が、俺の顎にバシッと叩き込まれていた。
「燕返し、です」




