「具現化」
俺はリコを抱え上げる。
「自己暗示! よし、行くぞ!」
そして俺はスピードを高め、遅延を受けているゴールドマシナリーの元へ走る。
「ロックオン」
遅延の中でゴールドマシナリーは走る俺たちをとらえる。
「狙われてるけど、大丈夫?」
「大丈夫。あと5秒程度であいつに触れてるとこまで行くから準備してくれ!」
「分かった」
「バスター!」
変形したゴールドマシナリーの腕から光線が発射される。がそれは遅延されているため避けられない速度ではない。
故に俺はそれを左方向に移動することで回避する。
さっきまでの動きを見てて思ったがあいつは同じ技は連続では発動できない。
だから今やられる可能性のある技はジェットとソードだけだ。この2つは単体ならどうとでもなる!
そして俺はそいつの目の先まで迫る。
「ジェット」
ジェット! 逃げをとったのか!
「ソード!」
ゴールドマシナリーの腕が遅延をものともしない速度で変形する。
同時使用できるのか!?
ゴールドマシナリーは通常の速度と等しい速度で俺たちに剣を振るう。
速い。回り込んで回避する時間がない。ここで取れる選択肢は後ろに下がるか反射するかか。
反射は不安定だし後ろに下がったら自己暗示が切れてリコがあいつに触れることがしづらくなってしまう。
だったらダメージ覚悟で反射を使ってやる!
そして俺は反射を失敗した時に前で抱えているリコがダメージを受けないように後ろに振り向き、スキルを発動する。
「反射!」
あいつの剣は進行方向を変えることなく俺の防具に傷をつける。
よし! 防具のおかげでダメージはそんなにない。
そんで今の動きでやつのジェットの効果はなくなる!
「鑑定!」
リコは動きが遅くなったゴールドマシナリーに触れることでスキルを発動する。
「鑑定できた! 一旦距離をとって!」
「分かった!」
そして俺は全速力でゴールドマシナリーとの距離を取る。
「ふうっ。鑑定結果はどうだった?」
「予想通りあいつには弱点がある。あいつの腕とか脚とかには関節があってそこを撃ち続ければそのうち千切れるみたい。その中でも首を切ったらあいつの動きは完全に止まる」
「なるほど。わかった」
倒し方がわかってしまえばこっちのもんだ。首を撃ちまくってやればいい。
「ねんりき!」
俺は首を狙いスキルを発動する。
が、遅延が切れてしまっており、ゴールドマシナリーはねんりきをソードで切り裂く。
直後やつは俺に接近する。そして俺に向かってそのソードは振り下ろされる。
カンッ! カンカンッ! カァン!
なんども素早く振られるそのソードを俺は全て受け流す。
「なかなかの剣撃だ。このままじゃあ埒が開かない。だったら……! サイコエンチャント! サイコクラッシュ!」
俺は一気に後ろに下がり、足元の鉱石にサイコパワーを付与する。
そしてそれをゴールドマシナリーに対して投げつける。
ゴールドマシナリーはその鉱石をソードで受け止める。
が、その場でやつが硬直してしまった故にサイコクラッシュに飲まれる。
このまま畳み掛けてやる!
「引き寄せ!」
俺は自身のスキルでそいつを引き寄せる。
そしてそのまま剣を使ってそいつの首を攻撃する。
うーん。やっぱりサイコエンチャントなしじゃあまりダメージが入らないか。
俺の剣を受けたゴールドマシナリーは脚を大きく振り上げ、俺を蹴り上げる。
「ぐふっ!」
綺麗に空へ打ち上げられた俺は、ドスっと鈍い音を立てて地面に落下する。
ソードとかバスターとかじゃなくても普通に攻撃できるのかよっ!
「ロックオン」
ゴールドマシナリーは地面に打ちつけられた俺に腕を向ける。
「バスター!」
やつの腕から赤色の光線が発射される。
「反射!」
その光線は見えない壁に阻まれ、方向を変えてゴールドマシナリーの方へと向かう。
よっし! 成功!
ゴールドマシナリーはそれを右方向に移動して回避する。
「今なら多分ジェット以外は使えないだろ! 遅延!引き寄せ!」
俺は自身の足元に遅延を放ち、引き寄せをゴールドマシナリーに命中させることでこちらにゴールドマシナリーを強制的に引き寄せる。
「サイコエンチャント!」
俺は剣にサイコパワーを付与して、その剣をゴールドマシナリーの首に向かって振るう。
クソッ! まだ首は取れないのか!
俺が剣を首から一度離すと、ゴールドマシナリーは拳を握り、俺に向けて突き出してくる。
俺はそれを回避してもう一度、首に剣を振るう。が、その剣は首に命中せずやつの硬い硬い外装に当たっていた。
すると、直後パキン! という音がする。とともに俺の剣は真ん中あたりでへし折れていた。
「!? ウソだろ!?」
思えばずっと、追い出された時からのずっと、この剣を使い続けていた。
クソっ! こんなカッタイもんに全力でうちつけたらそりゃあこうなるか!
剣が折れて、ゴールドマシナリーへと意識が少し逸れてしまっていた俺の顔面にやつの拳が命中する。
「ぐぁ、ああ!」
その拳で俺の身体は大きく吹っ飛ばされてしまう。
くそ。あいつ、俺が防具をしてないとこを狙ってきてるのか!?
それよりも剣なしでどうあいつの首を断ち切ってやろうか……。ねんりきとかだと狙って当たるのは難しいし。仕方ない。やりづらくはなるけど「具現化」を使うか……
そうして俺は奴に向かって走り出す。
「自己暗示!」
自己暗示でスピードを高め、さっきの数倍の速度を手にする。
「グラビティコントロール!」
グラビティコントロールで靴や服を軽くして、より速度を高める。
これが俺の最高速度! 遅延が残ってるうちにケリをつけてやる!
俺はグングンやつとの距離をつめ、俺の剣がやつに届く寸前まで接近する。
「具現化!」
そこで俺はこのスキルを発動した。
俺は先程まで自身の手の中にあった剣を想像する。
刹那俺の手には先程まで握っていたままの、決して折れてはいない剣が握られていた。
具現化の効果は想像したものを実際に作り出す。いままでは超具体的に想像できなかったら作れないとか、具現化したものは3秒たったら消えるクセにスキルのクールタイムは35秒とか使い勝手が悪すぎてあんまり使ってなかったけど、なんか使えそうと思ってスキル錬金の時に錬金するスキルにしなくてよかった。
「ジェット! ソード!」
今更使ったってもう遅ぇよ! オマエをここから逃さず首を切ってやるくらい3秒もあれば十分だ!
そして、俺はその魔力でできたホンモノ同然の剣を、右手を俺に向かって振りかぶっていたゴールドマシナリーの首に、全力で叩き込む。
剣はどんどんその首に、深く差し込まれてゆく。
ゴールドマシナリーはその間「○×△☆♯♭●□▲★※」などと言った人間にはまるで聞き取ることのできない、言葉というよりはノイズというのが正しいような音をあげていた。
やがてそのノイズは止まり、俺の剣も消え去り、そしてゴールドマシナリーは首と胴が完全に離れて停止していた。




