料理人
あの後リコと合流した俺はファイヤーシープの討伐をするクエストを受け、ファイヤーシープの元へやってきていた。
「サイコエンチャント!」
俺は地面に落ちている小石にサイコパワーを付与してファイヤーシープに投げつける。
「任せた!」
小石が命中した直後俺は背後にいたリコと位置を交代する。
「攻撃錬金!」
リコの手の中にあった小石が光弾へ変化し、ファイヤーシープに直撃する。
リコの光弾を受けたファイヤーシープはよろめき、体の炎がフッと消える。
「もう一発。攻撃錬金!」
リコは地面から砂をガバッと拾い上げ、スキルを発動する。すると、その大量の砂は小石を錬金した時にできた光弾よりも、何回りも小さい弾が大量にできてそれらはファイヤーシープに命中する。
「媒体によってできる物が変わるのか!」
その大量の光弾を受けたファイヤーシープはその場で倒れ込み、リコに経験値が入る。
「! さっきまで14だったのに一気にレベルが18になった。自分でトドメを刺すだけでこんなにもらえる経験値が増えるんだ」
「よかったな。早めに攻撃スキルが手に入れられて。レベル上げが一気にラクになる」
「うん。この調子なら明後日くらいにはレベル30くらいまでいけるかも」
俺とリコがそんな会話をしていると、隣にあった森の中から突然巨大なモンスターがバサっと現れる。
が、直後にその巨大なモンスターの頭部を突然空中に現れた少年がバシン! と叩き、巨大なモンスターは膝をつく。
「加熱!」
俺とリコが突然の出来事に呆然としているとその少年の持っている武器のようなものは炎を纏う。
「はあ!」
少年はその武器のようなもので再度巨大なモンスターの頭部を叩く。
その攻撃で巨大なモンスターは地に伏せる。
巨大なモンスターを倒したのを確認した少年は俺たちの前にやってくる。
この人! あの屋台の人だ!
その姿を見た俺は彼を屋台の人だと認識する。
「大丈夫か?」
その少年は俺たちにそう声をかける。
「うん、大丈夫」
俺が答えると彼は俺に気づいたのか表情を変える。
「お前! 朝のお客さん!」
「知り合い?」
リコがそう俺に問いかける。
「今日の朝食を買った屋台をやってた人だよ。まさかこんなに強い人とは思ってなかったけどな」
「まあ食材調達でそこそこレベルが上がってるからな」
「食材調達ってまさかあの店の食材は君が狩ってるのもあるのか!?」
「狩ってるのもあるっていうか肉は全部俺が狩ってきてるやつだ」
「うそだろ!? じゃああのワイバーンとかも?」
「そうだな。あいつはいい狩場があるんだよ」
「ワイバーンを狩れるってすごい実力だな!」
「まあ天職がそこそこ良かったからな」
「……一つ聞いていい?」
そんな会話をしているとリコが彼に問いかける。
「うん? 別にいいよ?」
「それじゃあ遠慮なく。さっきのモンスターを倒す時に使ったのはそのフライパン?」
「そうだな。これでゴーン! てぶっ叩いて倒した」
うわっ! ほんとにフライパン持ってる。気づかなかった!
というかフライパンで叩いてあのモンスターを倒すってなんだよ。
「フライパンが武器ってあなた。一体どんな天職なの?」
「俺の天職は料理人だ」
「料理人って聞いたことのない天職だな」
そう俺が言うとリコが料理人について話す。
「まあ料理人はなかなか持つ人がいないっていう天職だからね。けどあまり戦闘向きの天職とは聞かないけど一体どうやってあの強さを?」
「別に料理人が戦闘向きじゃないって訳ではないんだけどな。ちなみに料理人のスキルって何があるか知ってるか? 知ってるなら話が早いんだけど」
「知らない。ちなみに智也は?」
「俺が知ってると思う?」
「だろうね。それじゃあそういうわけだけど教えてくれる?」
「そんじゃあ話すけど、まず料理人のスキルの多くは料理に関わるスキルだ。例えば加熱。あれはフライパンを自由に加熱できる。自由って言っても上限はあるけどな」
「その上限はどれくらいなんだ?」
「それはわからんけど俺がレベルアップすればするほど上限は上がってるな。それと同じように他のスキルも料理を快適に進めるためのスキルばっかりだ」
「じゃあなんであんな強さが?」
「それは俺の武器が全部料理とかを作るのに必要なものばっかりだからだ」
そうして彼はフライパン、包丁、フォークといった普段の生活で見慣れた物を取り出す。
「俺のスキルはほとんどこれらに何らかの効果を付与するスキルなんだよ。んで俺は剣とかそういう武器を作る素材を使ってこれらを作ってもらった。するとどうなったかというと、剣とかと同じくらいモンスターにダメージを与えられて追加でなんらかの効果を付与できる強い武器の出来上がりだ」
「なるほどね。あと料理人ってなんのステータスが高くなってるの?」
「攻撃力、防御力、スピードの3つだな。特に防御力とスピードが高くて防御力は上位天職のアーマーナイトに、スピードは中位天職のアサシンに匹敵する。代わりに魔力はほとんどない。まああまり使わないステータスだから関係ないな」
……上位天職とか中位天職ってなんだろう。
「アーマーナイトに!? それって全然戦闘ができる戦闘向き天職じゃない」
リコがそんなリアクションをとると、彼は答える。
「だから最初に言っただろ? 戦闘向きじゃないって訳じゃないって」
「ああ。思ってたより戦闘向きだったわ」
「それじゃ、俺はそろそろこの肉を持って帰るよ。また明日も多分屋台やってるから金に余裕があるなら食ってって。えっと……名前なに?」
突然だなあ。
「俺は智也。見上智也だ」
「わかった。覚えとくよ。俺は桐生大翔だ」
そうして俺たちは別れるのだった。




