屋台
次の日、目覚めると外から美味しそうな匂いが宿の部屋まで漂ってきた。
「この香り、外で何かやってるのかな。ちょっと見に行ってみようか」
そうして俺はいつものように用意をして宿を出る。
すると、そこには俺と同い年かそれより下くらいの少年が屋台を出していた。
料理をやっているのか。すごく美味そうな匂いだな。
朝ごはんは食べたけどリコとの待ち合わせには時間があるし、食べてみようかな。
そうして俺は2、3人ほど並んでいるその屋台の列に並ぶ。
1分ほど並ぶと前にいた人は料理を手に持ってどこかに行っており、俺はその屋台に立つ少年の正面にいた。
「ご注文は?」
その少年からそう声をかけられる。
「このお店のおすすめをお願いします」
(得体の知らない屋台の料理だからとりあえずおすすめをいただこう)
そんな考えの元、俺は注文をした。それを聞いた少年は「分かった。そんじゃあワイバーンのモモ串とかかな。値段は750ゴールドだ」と言う。
俺は言われた分を取り出し、彼に渡す。
「それじゃそこの椅子にでも腰掛けて待ってて」
そう言われて俺は彼が指差した椅子に座る。
それにしてもワイバーンか。あんなモンスター、一度も食べたことないな。
ワイバーン自体がなかなか強いモンスターらしいからほとんどワイバーンの料理なんて取り扱う店はないし。
そんなことを考えていると声をかけられる。
「ほい! ワイバーンのモモ串5本だ。召し上がれ! あと器は返さなくてもいいからな」
モモ串がのった器を受け取り、俺はその場を離れる。
「さあて、いただくとするか。ワイバーンのモモ串!」
俺は器にのる5本のうちの1本を手に取る。
(なるほど。モモ肉を焼いてブロックの形に小さく切ったのを4個並べて串を通したのか! 何かのタレで味付けがしてあるみたいだけど、どんな味だろうか。とりあえず、冷めないうちに食ってみるか)
そうして俺は1本目の1個の肉を口に含む。
串を顔と反対の方向に引くことで肉を串から放し、その上下の歯で押しつぶす。
(―――ッ! この肉汁の量ッ!)
俺が肉を押しつぶすとその肉から膨大な量の汁が口の中で流れ出す。まるで全開にした蛇口から流れる水のように、とめどなくその汁は流れ続ける。
(一度噛んだだけでこの量っ!! こんなの、そこらの肉じゃあ体験することもできねえぜッ!)
そうして俺はもう一度、二度それを味わいながら噛み潰す。
(それにこの味……前に買ったタレとは違う。前のよりも塩気が強くて甘さがかなり少ないな。それなのに塩辛さはほとんどなくてむしろタレの味をしっかりと感じられる!)
たった1個でこれにどっぷりとハマり込んだ俺は次々と、ワイバーンのモモ串を口に入れる。二つ目、三つ目とそれを入れるたび、俺がそれを口に入れる速度は上がってゆく。
「ふうっ。満足だなあ」
(さて、ギルドに向かうとするか)




