時間が足りない
一体どれほどの間こいつを相手していただろうか。
いつの間にやら、周囲にはセツナや冒険者達が俺が移動させたドラゴンの元へ駆けつけていた。
「ギュォォォォォン!」
「まずい!」
今までのパターンだとドラゴンが大きく咆哮をしたらなんか新しいことをしてきてた! 気がする!
そして俺は反射の準備をする。
直後、そいつの口から地面に青白い炎が放たれた。
「反射!」
俺はそれに反射スキルを合わせる。が俺のスキルはその炎を反射することはなかった。
「え?」
そんな素っ頓狂な声を俺が漏らした直後、その炎は俺の横通り抜け、地面に着地し、その地面にはまるでサイコクラッシュを放った時のような大きな円形が浮かび上がっていた。
「超加速!」
俺のすぐ近くからセツナのそんな声がする。
まずい! 避けれない! そんな言葉が俺の脳に浮かび上がる。
地面から青白い円形が生まれ、それは徐々に膨張し始める。
それは後0.5秒もあれば俺を飲み込むほどのスピードで膨張し続ける。
時間が……足りない……!
そんなことを思いながら、俺は死の覚悟をしてしまう。
しかしそんな俺の視界に『ユニークスキル 遅延』という文字が浮かび上がった。
「遅延!」
俺は思考すらせずにそれを口にして、走る。
そして地面に浮かび上がった青白い円形の外へ移動した俺が膨張する円の方へ振り向くと、その円はまださっきまで俺がいた位置にすら届いていなかった。
「これが俺の……ユニークスキル!」
俺はその状況が俺のユニークスキルによって生み出されたモノだと確信する。
「これが遅延の効果か!」
おそらくこれは一定範囲内のスピードを遅延させるスキルなのだろう。
その証拠に、あの膨張する円だけでなく、その近くにいるドラゴンやそいつの足元の草木の揺れる速度まで全てが遅くなっていた。
思わず俺の口の両端が上がってしまう。
これなら耐えることだって楽勝じゃないか!
10秒ほど経ち、スピードがもどった円は一気に膨張し切って爆発した。
が、俺も他の冒険者もそれに当たることはなかった。
……まだ遅延は使えないか。
遅延の持続時間は15秒。クールタイムはそれ以上。
「自己暗示!」
俺は自己暗示を使ってスピードを高め、ドラゴンの攻撃を躱しつづける。
「遅延! 遅延! 遅延!」
そうして避け続けている間も遅延を発動しようとし続ける。
すると自己暗示の効果が消えた頃に遅延が発動した。
「クールタイムは20秒くらいか!」
さっきまで集中し続けてようやく避けれていたあいつの炎も簡単に避けれてしまう。
そして俺は剣を手に取り、一気に接近する。
「グラビティコントロール!」
自身を軽くし、ジャンプすることでドラゴンの顔に飛び乗る。このスキルは俺には効果がないのか!
「はあああ!」
そして俺はそのまま剣をドラゴンの眼球に突き刺す。
「グォォォォ!」
そんな声を上げたドラゴンの眼球からは血が溢れ出す。
「目は結構脆いんだな!」
目さえ潰してしまえばやつは俺たちに狙いを定めることはできない。やみくもに攻撃するしかなくなる。
そうなれば遅延がない間だって攻撃を避けることができるだろう。
そして俺はドラゴンの両目を潰すことに成功する。
その間ドラゴンは俺を振り落とそうと首を振っているが、その速度が遅すぎる。
ようするに俺はゆっくりと動く足場に乗っているようなもので、振り落とされることなんてなかった。
そのまま俺はドラゴンの頭部に剣を刺し続ける。
満足に刺さることはなかったが、何度も一箇所を刺し続けることでついにはそこから血が出てくる。
「そろそろ効果が消えるな」
そして俺はドラゴンの頭部から飛び降りた。




