耐久戦
「あの左翼はだいぶ弱ってたみたいだな!」
左翼を失ったドラゴンは宙に留まることができずに地上に着地する。
この調子なら騎士団が来るまで耐えるどころか、もしかしたらドラゴンを倒すことだってできるんじゃないか!?
そんなことを考えていると、ドラゴンは地面に炎を吐き始める。
「グラビティコントロール!」
俺は自身を長時間空中に滞在できるように軽くし、思いっきりジャンプする。
ドラゴンの吐いた炎は次々と周囲の草木に燃え移り、緑豊かな大地はあっという間に火に覆われていた。
その光景を見た俺は咄嗟に振り向き、後ろを見る。
「他のみんなは炎が届かないところまで逃げていたのか……」
俺は軽くホッとすると同時に新たな事実に気がつく。
「もうこんな街に近づいていたのか……!」
そりゃあそうだ。やつが突進や炎を吐くといった行為を繰り返すたびに俺たちは後退していたのだ。
「これ以上街に近づけさせるなッ!!」
そんな冒険者の声が辺りに響く。と同時に冒険者たちの遠距離攻撃が一気にドラゴンを襲った。ファイヤボール、サンダービーム、バットシュート、そんなさまざまなスキルの発動がわかった。
「もう退くわけにはいけないな……。さらに後退しちゃったらあいつの炎が街に届いてしまいそうだ」
そして俺はやつを街に近づかせまいと空中からスキルを放つ。
「ねんりき!」
そのねんりきはやつの頭部に直撃する。
がダメージはほとんどないようだ。
(完全にこっちにやつの意識が向いたな)
そのことを確認した俺は自己暗示を使い、スピードを高める。
『俺の速度はドラゴンよりも速い! ドラゴンは俺に追いつくことはできない!』
そんな暗示を俺は己にかける。
「解除!」
スピードが高まったことを自覚した瞬間俺は多少炎を受けることを覚悟してグラビティコントロールを解除し、地面に降りる。
熱い! と感じたのは一瞬だった。俺は炎が自身の体を燃やすよりも前に燃え盛る炎からの脱出に成功する。
「ちょっとでも街から引き離してやる!」
そして俺は街の反対方向へ走り始める。
ドス! ドス! という大きな足音を立ててドラゴンは俺の方向へ向かってくる。
俺があいつから逃げ続けられる時間は自己暗示の効果が残っている間だけ。
あいつと攻撃を回避するだけなら自己暗示がなくても動きを見て戦えばできるんだが、あいつに追いつかれないよう逃げながらあいつの炎を回避するには自己暗示が必要だ。
そうして俺は自己暗示の効果が残っている間、全力で走り続けた。
「ふうっ、そこそこ離すことができたかな」
俺の視界に映る街は最初にドラゴンと対面した時くらいまで遠くなっていた。
「さあ、後は騎士団がくるまで耐え続けるだけだ」
そうして俺はこちらに向かって突進を仕掛けてくるドラゴンを迎え撃ち、反射を使用する。
「反射!」
カァァァン! という音が鳴ると、ドラゴンが大きく仰け反る。
体制を立て直したドラゴンは俺に向かって体の後方に付いていた大きな尻尾を、体をグルン! と大きく回転させることで俺に命中させようとする。
「グラビティコントロール!」
俺はその尻尾を己を軽くすることで高く跳躍し、回避する。
空中にいる俺に向かってドラゴンは炎を口から放出
する。
「解除!」
俺はそれを地面に落下することで回避する。
こちらは常にあいつの動きをみて回避をしている。
故に常に集中して戦わなければならないため、精神的に疲労してきてしまった。
「騎士団とやらはまだこないのかよ……!」
さっきまでの自信はどこへ行ったのか、気づけばそんな言葉を口にしていた。




