大きな館へ
次の日、俺がいつものように宿をでると馬車が停まっていた。
俺が横を通り過ぎようとすると、馬車の中から声が聞こえた。
「そこの君! 待ってくれ!」
(どこか聞いたことがある声をしてるなあ)
そんなことを考えながら俺は歩き続ける。
「待ってくれ! 智也君!」
名指しで声をかけられてしまった。
(さっきのも明らかに俺が宿をでて馬車の横を通ったタイミングで呼んでたもんな。これは多分、というより確実に俺が呼ばれているのだろう)
という結論に至ったので俺は足を止めて馬車の方向へ振り返る。
(あれは……昨日の騎士団の後ろの方にいた人……)
「智也君! 馬車に乗ってくれ!」
言われた通り俺は馬車へと乗り込む。
「呼び止めて申し訳ない。君にしたい話があったんだ。ただもしもこれから予定があるのであればここで馬車を降りてそちらを優先して欲しい」
「別に、今日もいつも通りの1日を過ごすつもりだったので問題ありませんよ。ところで失礼ではありますが、あなたが何物かを伺ってもよろしいでしょうか」
(この人はいったい何物なんだろうか)
そう思った俺は本人に聞いてみた。
「おっと、名乗るのを忘れていたな。申し訳ない。私はこの街の領主をやっているロバート・テイルナーだ。それと、失礼なんかじゃないさ。気になることがあれば私の言葉を遮って聞いてくれても構わないよ」
(領主さんだったとは。というか領主さんが俺になんのようなんだろう)
「その領主さんが一体俺なんかに何の話をしたいのでしょうか」
「それについては今から行く場所でゆっくり話そう。ひとまず今はのんびりと自由にして欲しい」
領主さんがいる場でのんびりと自由にってのはさすがに難しいと思ったので俺は黙って、姿勢良く座って馬車の揺れを感じるのだった。
そこそこの時間がすぎたころには、俺を乗せた馬車は豪華な館の前で停まっていた。
(それにしてもすごい豪華な館だな。さすがは領主さまってところか)
そんなことを考えながら俺は領主さんとその従者? のような人に誘導されて館の中へと入る。
館に入ると俺の視界には黄金に輝く装飾の数々が映った。
「領主さんはこんなすごい館を持てるんですね」
俺の言葉に領主さんが答える。
「領主と言っても小さい村とかの領主だったらこんなのは持てないんじゃないかな。一応、私がいうのもなんだがこの街は結構大きな街なんだよ」
(確かにこの街は俺の住んでた村の周辺の町や村の中で1番大きかった。俺がここにきた理由もそれだし)
そんなことを考えていた俺は、そのままこの大きな館の一室へと案内された。




