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劣化天職で最強  作者: 春の天変地異
モンスターの文明『自然の文明』編
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VS麒麟 作戦フェーズ2④ ついに届く剣

 思わず口角がにやりと上がる。一度はどうしようもないと思いかけた事象の対処法。それがこう、普段から刺し穿つ数多の飛翔剣(ヌメラス・エア)とかで行っていた“複数のスキルを組み合わせる”という、簡単な方法だった。

 (こんな簡単な方法でよかったんだ)と、それに気がつけなかった自分があまりにも狭い選択肢の中で考えていたことに笑えてきてしまったのだ。


 そんなことをしているうちに、大翔(たいが)と麒麟の戦闘はドンドン勢いが増していく。

 精霊峠の山頂には常に包丁とツノが打ち合う音がしているほどだ。

 

 「う、おおおぉぉ!!」

 勢いと共に、麒麟の攻撃のスピードが増している。麒麟の方はこちらを試すため、まだ力を残していただけだろうが、大翔の方は最初からだいぶ本気だったように、俺の目には映っていた。のだが、彼はなぜか力を、スピードを増していく麒麟についていけている。

 先ほど彼は一度は大きく飛ばされたこともあるような攻撃を、根性がどうとか言って耐えていた。

 つまり、桐生大翔にはそのような力があるんじゃなかろうか……わからないけど。


 (さて、俺も心配ごとはなくなった。大翔が生み出す隙で麒麟に最大火力をぶちかます。そんな、この作戦の締めくくりを俺がやるんだ。しっかりやらないといけないな)

 俺はその黄金の大剣をいつでも振るえるよう両手で構えた。

 

 「大翔、援護する! 支援錬金!」

 「おお!」

 俺の動きを横目に見たリコは大翔に呼びかけ、スキルを使った。

 対象になんらかの得をする効果を付与するそのスキルは、大翔の攻撃力と速度の二つを上昇させた。

 ダッ! と、麒麟はそんな大翔と距離をおくためか、大地を蹴って飛び出す。

 

 「させねェよ!!」

 大翔の方もそんな麒麟を逃さぬように走り始めた。

 リコの支援を受けた大翔は麒麟に追いついて、フライパンを振るう。

 が、ビュンッ!! と——

 「うお!」

 麒麟はさらにスピードを上げて走る。

 「くっ……ヴェールが邪魔をして」

 スファリエがヤツの動きを止めようと弓を構え、狙うが、ヤツの背から伸びるヴェールがそれを阻害する。

 「ウェポン錬金、短剣! さっきと同じよう、私が!」

 リコは自身の手に短剣を握らせ、振りかぶる。

 だが……狙いが定まらない。少なくとも、彼女のステータスでは到底ついていけないスピードで走る麒麟に的確に短剣を投げ、当てるのは難しいのだ。

 「くっ……」

 (自己暗示を使ってやればスキルで麒麟に攻撃できるが、今それをするといざ剣を振るう時に使えず、ヴェールを突破できない……今は大翔に麒麟に追いついてもらうしかないか……いや、俺なら多分あの短剣、当てれるな……そうだ!)

 俺は思いつき、リコの方を向いて叫ぶ。

 「リコ! それを俺に!」

 「…わかった!」

 彼女はすぐに俺の方へそれを投擲する。

 パシッとそれの取手を掴んだ俺は、麒麟の進行方向を予測し、そこを遮るようにそれを投げた。

 (これで麒麟がそのまま進むようならヴェールの動きを止められるし、それを受けないように足を止めるなら大翔に追いつかれることになる。我ながら完璧な投擲だ)

 「さすがです! 二人とも! やああ!!」

 その直後、スファリエは光の矢を放つ。

 それはちょうどヴェールが短剣を受けるタイミングに麒麟の元に辿り着くだろう。

 

 短剣と光の矢。それらに挟まれ、背後からは大翔。

 そんな状況の麒麟はどうするのか。

 その答えにいち早く気がついたのか、リコが皆に聞こえるよう、叫ぶ。

 「気をつけて! 座標交換(トレイド・コーディア)をされるかもしれない!」

 彼女の忠告のすぐ後だ。スファリエと麒麟の姿がブレた。

 「私ですか……!」

 スファリエは麒麟のいた場所へ飛ばされた。逆に、麒麟の位置はスファリエがいたところだ。

 「面倒くさいことしやがって! 包丁研ぎ(ナイフポリッシュ)!」

 大翔は瞬時に足を止めて、ぐるりと麒麟の方に向いて走り出した。それと同時にスキルによる獲物の手入れも行っている。

 そして飛ばされたスファリエの方は、元々麒麟に向けて放たれた二つの攻撃に襲われていた。

 一つはリコが生み出し、俺が投げた短剣。

 一つは彼女自身が放った眩い光の矢。

 短剣はともかく、矢の方は受けると半端な傷じゃあすまないだろう。

 麒麟は自分に向けられた攻撃をうまくスファリエに押しつけたのだ。

 とはいえ、麒麟の場合はそれから離れることができなかったからそれを避ける選択が取れなかっただけで、スファリエは自由に動くことができる。故、彼女は瞬時に大地を蹴って跳ぶことでそれを回避した。

 

 麒麟の方はというと、大翔から距離を離したことで少しの余裕を手に入れていた。

 ヤツはその余裕を使い、ツノを輝かせた。

 「キュオオオオオ!」

 直後、その輝きは三つの光線となって、大翔とスファリエ、そして俺をそれぞれ襲いはじめる。

 「くそ……足は止めてらんねえ! 一本犠牲にしてやる!」

 「かなりの威力……とはいえ自然の力をいただいている今なら! はああ!」

 「回避は難しいな……反射!」

 俺たちは光線をそれぞれ、フライパンを犠牲に掻き消したり、同等の威力を持つ矢を放ち相殺したり、あらゆる攻撃に有効なそのスキルで反射したりと対応を行った。


 麒麟はその隙にもう一度光線を放った。

 それは唯一先ほどの光線に襲われなかったリコの方へと向かっていく。

 光線なら彼女を覆うヴェールで防げる。だがそんなこと、麒麟はわかっているだろうと彼女は考えた。だから彼女は警戒する。ヴェールが光線の対処をしている間に麒麟自身に攻撃をされてしまうと、ヴェールのみで身を守ることはできないから。

 だが彼女の持つ近接戦の防御手段は少ない。せいぜい『ラバーシールド』と、あとは『防御錬金』で何かしら盾を作るくらいだろう。

 けれどそれでどうにかするしかないため、彼女は自身の服のポケットに入れておいたラバーシールドと、防御錬金のための媒体を手で掴んだ。

 

 ちなみに、防御錬金で作り出したものはウェポン錬金で作り出されたもののように麒麟に打ち消されないらしい。

 なぜか攻撃錬金のものは打ち消されるのだが。

 

 襲いくる光線。向かってくる麒麟。少し後方にはアイテムバッグから予備のフライパンを取り出し、そいつを追う大翔だ。

 ああ、たった今、光線はリコのヴェールで上空へ流された。

 「収納、ラバーシールド」

 リコは自身の防御用に手に持っているのとは別のラバーシールドをスキルの空間から取り出す。

 それと、超回復薬の時のように収納の中のものを破壊されぬよう、即座に空間を閉じた。

 取り出したラバーシールドは麒麟の足止めをするため、向かってくるそいつの進行方向に放り投げる。

 

 バッと、巨大なラバーの障壁が麒麟の前に立ち塞がった。

 「——!」

 麒麟は一瞬驚いたような素振りを見せたが、瞬時にそのラバーを蹴破った。

 「くっ……やっぱりラバーシールドじゃ足止めにもならないか」

 こうも簡単に破られると、防御手段として成立するかどうかも怪しい。

 念のため、彼女は防御錬金の方の媒体をより良い媒体へ変更する。

 「ラバーシールド!」

 麒麟がついにすぐ目の前まで迫ってきた時、リコは後ろへ跳び、それを展開。

 が、効果は特になく平然と蹴破られる。

 (一応ただのラバーでないから半端な攻撃じゃ破られるどころか、攻撃をしたやつを弾き飛ばすほどなんだけどな。これも……)

 あまりに平然に破られてしまったため、リコはついそう思ってしまった。

 

 とはいえ本命はこっちだ。

 手に握られたお高い宝石。それを媒体とし、錬金術を行う。

 「防御錬金!」

 瞬間、リコの目の前、または麒麟の目の前にその宝石の輝きを持つ分厚く、巨大な盾が現れた。

 麒麟はラバーシールドと同じようにそれも蹴破ろうとする。が、気がついた。その頑丈な盾はその蹴りでは破壊できないと。故、そいつは瞬時に横に跳んで盾を避けてリコに接近しようとする。

 だが回り込んだ先にはヴェール。ビームをどうにかし終えたヴェールが麒麟の敵意に反応し、動いたのだ。

 「———」

 「ふふっ、ついでにもう一個……防御錬金!」

 リコはその間にまた媒体を取り出した。それはさっきのものほど良い媒体ではないが、それでも麒麟の蹴りは防げる。もしくは少しの時間は稼げるものになるだろうと考えた。

 そしてそれから盾は生み出され、今度は麒麟がさらにヴェールを避けてリコを攻撃しようとした時に来ると予測される方向に設置された。

 これで麒麟がリコに攻撃するにはさらに遠回りしなければならないのだ。

 

 麒麟は盾を面倒に思い、リコに攻撃することを諦め、距離を取る。

 「やっぱりそうするだろうね。支援錬金!」

 リコの脳内で、その行動を麒麟が行うことは予測されていた。

 だから彼女は支援錬金で自身に筋力上昇の支援を施した。


 ガシッと、その力でリコは地面に突き刺さる、一つ目の盾を掴み、持ち上げる。

 盾は硬い。

 硬いものが速いスピードで飛んできて、ぶつかると痛いのだ。

 「く、はあああ!!」

 リコは全力でそれをぶん投げた。もちろん、麒麟の移動先に向かって、だ。

 

 ズドンッ……!! 

 そんな鈍い音と共に、盾は麒麟に衝突した。

 あれ? ヴェールはどうした?

 その光景を見た俺はヴェールを探すと、盾が飛んでくる方とは違う方で、包丁を受けていた。

 「ナイス、大翔」

 「ああ!」

 大翔はリコの動きを見た直後に、自身の包丁を投げていたのだ。

 だからヴェールは飛んでくる盾に対処できず、麒麟は盾を受けて、血を流していた。かなりの威力だったらしい。思っていたよりもダラダラと流れている。

 その姿には今まで全然見えなかった麒麟の疲労感も感じられた。

 「畳みかけろ! みんな!」

 「ええ、任せてくださいッ!」

 俺の呼びかけに応えるよう、スファリエは怯む麒麟に向けて光の矢を放つ。

 ちょうどヴェールは大翔のやけに威力の高い包丁を受けれてはいるものの、流せてはおらず、矢の対処へ向かうことはできない。

 麒麟は矢が当たる寸前で、逃げようと大地を蹴った。が——

 「これも、やらせねェよ!」

 バコン! 

 大翔がフライパンで麒麟を叩き、動きを止めた。


 (いける! 今だ! 今が麒麟の隙だ!)

 俺はとうに走り出していた。

 グラビティコントロールを使って重たい大剣を軽量化し、全力で走る。

 (今からお前と、お前の上にいるヤツに一泡吹かせてやる!)

 麒麟は俺の心を読めるような力を持っていた。ならばこの宣言もヤツは聞いているのだろうか。

 もしも聞いているのならヤツはこの宣言を聞いてどう思うのだろう。少し、俺はそう考えた。

 

 さて、ついに剣が届くところまできた。

 これは距離の話に加えて、この戦い全体での話である。

 ようやく、ヴェールだのなんだので圧倒的な防御力を持ちながら、圧倒的な攻撃力でこちらにまるで隙を与えなかった麒麟に剣が届くのだ。

 

 「自己暗示ッ!!」

 『俺の剣はヴェールに干渉されない』

 俺はそう自身に暗示をかけ、そして、この作戦のフィナーレとなるはずの大剣を振り下ろした。

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