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劣化天職で最強  作者: 春の天変地異
モンスターの文明『自然の文明』編
130/134

VS麒麟 作戦フェーズ1②

 それから数分の間、大翔(たいが)と麒麟の地上戦は続いていた。実力は拮抗しているように見えて、明らかに麒麟が上回っている。麒麟は手加減しながらも、徐々に動きを上げていっている。大翔とてまだ全力ではないとはいえ、麒麟に合わせるような形となっていた。

 やはりアイツは俺たちを試しているのだろう。どこまで着いて来れるのかを測るために徐々に強さを上げていっているのだ。

 となると今全力を出すには行かない。もっと麒麟が力を高めた状態でどでかい一撃を叩き込まないと神様は驚かないかも知らないからだ。

 

 「く、ぐあっ!」

 「大翔! 大丈夫か!?」

 ヤツの輝くツノに腹を攻撃された大翔は後方へ少し飛ばされ、腹からは血を流していた。そんな隙をついて飛び上がり、上空に戻ろうとする麒麟をスファリエが矢で射抜いて阻止する。

 「すまんスファリエ、智也! こっちは心配するな! 大丈夫、まだまだ俺はやれるぜ!」

 直後、そう言いながら立ち上がる大翔をリコは静止した。

 「智也! 少しの間変わってあげて。大翔には傷を治してもらう」

 そう言ったリコの手には回復薬が握られていた。それを見た俺はすぐに答える。

 「分かった! ちょっとの間下がっててくれ! 大翔!」

 そう言った俺はすぐに剣を握って麒麟の元へと飛び出した。


――――――


 「これを使って」

 そう言った私は収納スキルで取り出した、自身の力で創られた『超回復薬』を大翔に手渡す。

 「こいつはなんだ? 回復薬とはちょっと違って見えるが……」

 それを受け取った大翔は私にそう聞いた。確かにそれは回復薬であってただの回復薬ではない代物だ。違いは大してなく、色味とかそれくらいだが大翔はその違いに気がついたらしい。

 「さすがは料理人、目は良いみたいだね」

 「お世辞なんていらねぇさ。それでそいつは?」

 大翔がそう言うため、私は手短にそれの解説を始める。

 「回復薬の効果をさらに高めたモノ。超回復薬とでも呼んで。使えばかなりのスピードでの、強い回復効果が得られるから。特にスピードの方は回復薬の1.5倍……いや、2倍はあるよ」

 「そりゃすげえシロモノだ! ありがたく使わせてもらうぜ!」

 そうして大翔はキュパッと音を鳴らしながらそれの蓋を開け、ごくごくと飲んでゆく。

 「プハー!」

 それを完飲した大翔はそんな声を出した。と同時にみるみるうちに彼の傷は治っていった。

 「調子はどう?」

 そう私が問うと、彼は突然私の想定外のことを語り始めた。

 「美味いっ!!」

 「は?」

 「味はほどよく甘く、たった一杯飲んだ程度じゃあくどいだなんて感じない。だけれども物足りなさは決して感じず、一杯で高い満足感が得られて一杯で傷を癒すこのドリンクの性質とマッチしてる!」

 「や、ドリンクというより薬なんだけど……」

 彼の超回復薬に対しての感想を聞いて私は思わずそう口に出してしまう。

 「さらにまろやかさが少なく、スルスルと喉に入っていくこのドリンクは戦闘時に素早く飲むこともできて、作り手がこれを飲む人のことをしっかりと考えて作ったってのが伝わってくるぜ!」

 大翔はそんなことを言っているが、錬金術で出来上がった物なので決してそんなことを考えて作ってはいない。

 「さすが料理人。お世辞はもう大丈夫だからさっさと自分の役割を遂行して」

 「ああ、もっとこのドリンクの余韻を味わいたいところだが、智也にこれ以上苦労かけるわけには行かないからな! それに美味いドリンクを飲んで俺の力は倍増しているぜっ! 任せてくれ!」

 大翔はそう言って、麒麟を抑え続ける智也の元へかけていくのだった。

 「ドリンクじゃなくて薬なんだけどね……」

 

――――――


 大翔が傷を癒している間、俺は麒麟と接近戦をしていた。正直俺の実力、正確にいえばステータスは麒麟と戦えるほどはない。大翔は作戦会議の段階で聞いたが今のレベルが186らしい。それに対して俺は135。そりゃあ相当な差が開くだろう。

 そのうえそもそもエスパーのステータスは接近戦に向くようにはできていない。そのため俺はスキルと剣技でその差を埋めなければならないのだ。

 

 「引き寄せ!」

 上空へ飛ぼうとする麒麟にそれを命中させて引き寄せ、それをさせない。無理矢理接近戦を継続させる。

 (やはり引き寄せは便利なスキルだ。スキル錬金で君と出会えて本当によかった)

 引き寄せの便利なところは麒麟を引き寄せるということだけにはとどまらない。これを麒麟に命中させた時、俺の右手とヤツの身体が紐によって繋がれるが、それがヤツの透明化に対する対抗策となる。そのワケは、ヤツに繋がれた紐はヤツが透明化しても見えなくなることはない。つまりヤツが透明化する寸前にこれを当てて仕舞えば、透明化したとて位置を把握することが可能なのだ。

 

 地面に引きづり下ろされた麒麟は凄まじいスピードでその光るツノで俺に攻撃をするが、俺は上手くそれを受け流す。

 (攻撃の威力は高いが、上手く受け流せば身体への負担は減らせる。それと……)

 瞬間、麒麟の体を光る矢が襲う。パァンッ! とそれは麒麟の尻尾が光を纏って弾いたが、瞬間俺に余裕が生まれる。

 (スファリエの援護がめちゃめちゃありがたい!)

 これがなければ俺はすでに相当のダメージを負っているかもしれない。麒麟の攻撃はツノを主な火力としいる。そのうえ厄介なのはそれを俺に当てるための四本の足と一本の尻尾を上手く扱った多方向からの素早い連撃。

 (レイラとの特訓で身につけた剣術。その中にどっかの流派の攻撃を受け流すことに特化した『流泡剣』ってのがあったが、あれを覚えてなければこれを凌ぐことはできなかっただろうな)

 俺はその剣術の力を使って連撃を受け流し続けていた。しかしそれにもやはり問題点はあり、『流泡剣』はあくまで受け流すことに特化した剣術であるため、自分だけの力では攻撃に転じづらい。スファリエが隙を作ってくれるのを待つしかないのだ。


――――――


 (花が、自然が回復している……?)

 見上さんや桐生さんの戦闘の援護を弓矢で行いながらも、私はそんなことを気にしていた。というよりも気にする余裕があった。私が自然の文明育ちのモンスターというのもあるだろうが、きっと今の私はその不思議な現象に頭の中の半分は埋め尽くされていた。

 桐生さんや見上さん、ましてや麒麟でさえ戦闘の影響でその花々を傷つける。それはこんなに花だらけの場所で戦うとなれば仕方がないことなのだが、そうして傷ついた花々はすぐに再生、立ち上がっていた。

 (麒麟はこうなることを知っているから自然を気にせずに戦っているのでしょうか。いや、そうでなければあの麒麟が自然を傷つけながら戦うワケはないでしょうね……)

 そう考えてはいるが、この情報が戦闘に影響することはない……人間か、普段の私であれば。

 「今は余裕がありません。勝利のため、この性質を使わせていただきましょう」

 そう決めた私は魔技の発動準備をする。これは普段であれば絶対に使うことのない技。なぜなら自然を傷つけることを必要とした技であるから。しかし今回は再生する自然というものがある。ゆえ、その技を使うことを決めたのだ。

 「エネルギー吸収術式形成――完了。発動――自然の力よ、私の元へ。プリローダ・フォーワン!」

 瞬間、ここら一体の自然から私の弓に自然のエネルギーが集まってゆく。

 (そう、この技は自然からエネルギーを得て自身の武器を強化する、言ってしまえば自然を犠牲にする技。こんな環境でなければ、いやこんな環境だろうと普段の私なら使わないでしょうね……。ですが、今は愛する自然の文明を守るために使わざるを得ない!)

 

 ここから先のスファリエの弓の威力は以前とは比べ物にならないほど上昇しているだろう。彼女の弓の強化は技の術式が破壊されるか、自然がエネルギーを失わない限り無くなることはない。後者は自然の再生のスピードのほうが高いため、あり得ない。よって前者が行われない限りそうなることはないのだ。


――――――


 「キュルアアッ……!」

 スファリエの弓を受けた麒麟はそのような声を上げた。あまりにも速い矢であった。それこそ麒麟が手を抜いているのはいえ反応できないほどに。

 (な、なんて速い矢だ! それに明らかに威力も上がってる! あれはスファリエの魔技の力か? あんなことができただなんてな……さすがは自然の文明のドンってとこか。まあとにかくおかげで麒麟に隙ができた! が、最大火力を使うには時間が足りないな……)

 そう判断した俺は、黄金の剣で麒麟に攻撃をする。

 「補助錬金!」

 「加熱ッ!!」

 と同時に背後から、リコの補助を受けて攻撃力を高めた大翔が飛び出し、フライパンで上から麒麟を叩く。

 「キュルアアア゛ア゛ッ!!」

 直後、大きなダメージを負った麒麟が甲高い強烈な雄叫びと共に衝撃波を起こした。

 「な、ぐあ……!」

 「ぐぅっ!!」

 近距離でそいつの衝撃波を受けた俺と大翔は大きく浮き飛ばされる。

 「危ない! 多重結束草っ!!」

 瞬時にスファリエは魔技を使用した。すると大地から緑色の草がいくつも結び合いながら現れ、吹き飛ばされる俺と大翔を受け止める。

 「危なかった、ありがとう」

 「ふう……さんきゅー!」

 すぐに俺と大翔は姿勢を立て直し、その衝撃波を起こした麒麟の方を向く。と同時に俺たちよりも先にそいつを見ていたリコが口を開く。

 「今からが本番……さらなる力を発揮してくる。気をつけて」

 そんな麒麟の姿は変わっていて、白いオーラを纏い、背中に透き通るヴェールが現れていた。

 「これは……ぼちぼち作戦のフェーズ2を始めても良さそうだな……」

 そうして俺たちは再度麒麟に身体を向けて構えるのだった。

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