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劣化天職で最強  作者: 春の天変地異
モンスターの文明『自然の文明』編
128/134

麒麟戦 直前

 麒麟との戦闘における作戦が定まった俺たちは早速精霊峠の頂上へと向かう……前に戦力を追加することにした。

 理由は簡単で、俺たちだけでは麒麟に対する攻撃力が不足する可能性が高いからだ。

 「それじゃあ誘ってくるよ。断られたら……どうにかしよう」

 そう言った俺はリコとスファリエの見送りを受け、スキルを使った。

 「転送!」


 次の瞬間、俺の身体はとある食事屋にあった。

 「うん? やけに独特な来店の仕方だな」

 そう言った少年はその店の店主で、料理人の桐生大翔である。

 「悪いが今回は客として来店したわけじゃあない。頼み事があってここにこさせてもらったんだ。単刀直入に要件を言うんだけど、あの時のモンスターを倒すのを手伝ってくれないかな?」

 「あの時のって言うと、精霊峠の? それなら悪いが俺とお前じゃ倒せる見込みがない」

 そう大翔は申し訳なさそうに俺に告げるが、今回の俺の目標は麒麟を倒すことではない。

 「倒さなくていいんだ。あくまであっと驚かせる、あー……つまり、一発どでかいダメージをあいつに叩き込むことができればいいわけだ」

 それを聞いた大翔は絶妙な表情をして俺に聞く。

 「結局、その戦いにおける俺の役割はなんだ?」

 その質問に俺はリコとスファリエとの作戦会議の中で大翔に任せることになったことを告げる。

 「ひたすらアイツにダメージを与えて体力を消耗させるってのをやってほしいんだ」

 「分かった。俺はそう言うのは得意だからな」

 大翔は俺の言葉に即答した。それは本当に悩む時間もないほどの即答であった。

 「てことはOKってことでいいのか?」

 「ああ、答えはイエスだ。任せてくれ!」

 「そこはOKでもいいだろ……」

 そんなやりとりの中で答えを聞いた俺は状況の説明をした後、スキルを発動してリコとスファリエのいる自然の文明へと大翔を連れて戻るのだった。


 「よろしく! 俺は桐生大翔。普通に大翔って呼んでくれ。見ての通り人間で、天職と実際の職業も料理人だ。店を経営してるもんで、よかったら食べに来てくれよな! で、お二方の名前を聞いてもいいか?」

 大翔はリコとスファリエの二人と対面して早々自己紹介を素早くすませ、二人にも自己紹介を迫る。

 「私はリコ・ガラポーユ。呼び方は……好きに呼んで。ふざけたものじゃなければなんでもいいよ。天職は錬金術師で、一応店を経営してる。よろしく」

 そんなリコの自己紹介はスファリエの時とは違ってタメ口だった。

 (……リコって俺や大翔みたいにタメ口で接してきたヤツにはタメ口で接するのかな)

 そんなことを思っているとスファリエも同じように自己紹介を開始した。

 「私はスファリエと申します。ここ自然の文明の統治者で、モンスターです。この度は我々に協力していただきありがとうございます」

 そうして二人の大翔に向けた自己紹介は終わった。

 「分かった。リコにスファリエ、よろしくな!」

 大翔はそんな短い言葉を大きな声で発した。

 「よし、自己紹介は済んだな。それじゃあ早速行こうじゃないか。移動方法は俺のスキルで大丈夫かな?」

 そう俺が言うと、大翔がそれを静止した。

 「ちょっと待ってくれ。いや、わりとどうでもいいかもしれないんだけど、気になったから言わせてもらう」

 「別にいいけどお早めにお願いしてもいい?」

 リコのそんな言葉に、大翔は「ああ」と言って話し始めた。

 「智也のローブ、かなりボロボロみたいだけど大丈夫か?」

 話し始めたとは言ったがかなり簡単な疑問だった。

 「え……あ。そういえばさっきの戦闘でボロボロになったんだった……」

 俺のローブは混沌の軍事とカオスドラゴンとの戦いでかなりボロボロとなっていて、防具としての機能を果たせるかが怪しいほどであった。

 「確かに、特に気にしてなかった……というか気にする暇がなかったから気づかなかったけど、これは酷い。これじゃあ役割を果たすことも難しいだろうね」

 リコは俺のローブを眺め、それについてそう判断した。

 (……仕方ない。防具なしでやるしかないか。前は剣なしで、今回は防具なしか……)

 そう俺が腹を括っていると、リコから思いがけない提案がされた。

 「治そうか? それ。私のスキルならできるから」

 「え、それは本当なのか?」

 「うん。反応的についさっきくらいの戦闘でそうなったんでしょう? だったら可能だよ」

 リコのそんな提案を俺はすぐに「お願いします」の受け入れる。

 「分かった。それじゃあ」

 そう言ったリコは俺のボロボロで小さくなったローブを掴み、スキルを発動した。

 「補完錬金」

 瞬間、青色の粒子のようなものがローブの切れ端から現れ始め、そして、それがかつてのローブの姿を形成していく。そうして少し経つと、その粒子はローブそのまんまとなっていた。

 「おお……なんて便利なスキルなんだ」

 「まあね。ただデメリットももちろんあるよ。損傷したのが大昔だと補完できない。あと損傷どころか完全に消滅してたり、とか生命には効果がないとか」

 リコはそんなふうに、素早くそのスキルの効果を語ったのち、「それじゃあ早く麒麟の元へ行こう」と行動を促す。

 「そうだな。それじゃあそろそろ行こうか。みんな、俺の手とか腕とかを持ってくれ」

 それを聞いたリコとスファリエはそれぞれ俺の右手左手を持つ。大翔は手が埋まっているからか俺の方に手を乗せ、軽く掴んだ。そうして準備ができたことを確認した俺はスキルを発動する。

 「転送!」

 頭の中に浮かぶ景色はかつて俺が敗走した精霊峠のてっぺん。雪もないのに一面真っ白でたくさんの美しい白花が咲いている。そんな不思議な光景だ。


 瞬間、俺たち四人の身体はそんな景色の中に居た。

 「ここが精霊峠、人間の世界……」

 到着して辺りを見渡したスファリエがそんな言葉をぽつりと吐き出す。

 「スファリエは人間の、こっち側の世界に来たことはなかったのか?」

 「はい。私は生まれも育ちも自然の文明ですので、あそこから出たことがないのです。私が自然の文明のトップに立ってからは他の文明との交流もありませんでしたし……」

 (へえ、モンスターの文明にも外交って概念はあるのか。自然以外は文明同士で交流をしているところもあるのかもな)

 俺は彼女の言葉からモンスターの文明に関してを簡単に考える。

 「……この話はひとまず置いておきましょう。麒麟はどこにいるのですか?」

 スファリエは自身の過去話を素早く終わらせてそんなふうに俺に聞いた。

 「ここから少し進んだところの洞穴みたいな、洞窟みたいなところだよ。少なくとも前に来た時はそうだった」

 「そうだな。それは俺も確認したぜ。俺もその場にいたからな」

 俺の言葉にそう付け加えたのは桐生大翔である。

 「二人揃ってそう言うんならそうなんだろうね。それじゃあ行こう」

 リコは俺たちの言葉を信じ、そう言った。

 「そうだな。それじゃあみんな、準備は大丈夫か?」

 俺がそう聞くと、三人は答えた。

 「俺は最初から準備万端だぜ!」

 「私も問題ありません。自身の最高を発揮できる状態にあります」

 「同じく、問題ない。悠長にしてる暇はないでしょ? 早く行こう」

 そんな三人の反応を聞いた俺は麒麟のいる方向に足を進める。

 そうして洞穴の中が視界に映ると、そこにはしっかりと麒麟が佇んでいるのだった。

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