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劣化天職で最強  作者: 春の天変地異
モンスターの文明『自然の文明』編
125/134

助けを求める先はリコ・ガラポーユ

 (あれで壊れないどころか傷一つつかないとなると……大きい方の黄金の剣を使ってでも壊せなさそうだ。というかあれは多分物理的な手段で破壊ができるものではないな、多分)

 俺はスファリエの結果を見て、そういった仮説を立てる。

 (となるとどうすれば壊せるか確かめる手段が必要だ)

 そう考えた俺は、一つの手段を試すためにスファリエに声をかける。

 「落ち込んでるところ悪いんだけどさ、こいつを壊すためにやりたいことがあるんだ」

 じっと地面を見つめていた彼女が顔を上げる。

 「あなたには……あるのですか……? これを壊す手段が……」

 「あるというよりは、手段を探すといったほうが正しいかな」

 「探す……?」

 スファリエは俺を見上げたままキョトンとした顔をして、そう俺に聞いた。

 「だけどそれをするには自然の文明からの許可が必要なんだ。きっと無断でやったら自然の文明はそれを許さないだろうな」

 「……あなたは一体何をするつもりなのですか? ……事次第で私が許可を出しましょう」

 スファリエがそんなことを言うが、これは自然の文明自体から許可を取らなければ意味のないものである。だから俺はそのことを正直に彼女に伝えた。

 「悪いけど……これは自然の文明から許可をもらわないといけないと思うんだ。だからスファリエだけからもらっても……」

 そんな俺の言葉を遮るように彼女は言う。

 「問題ありません。私こそが自然の文明を統べるものですから」

 そんな衝撃的な言葉が飛び出した。

 「す、スファリエが自然の文明を統べるものだって……?」

 「ええ、そうです。私は、ここ自然の文明の最高権力者です。あなたたち人間の価値観で考えるなら……『国の王』というのが一番近しい存在だと思います」

 彼女のその言葉を聞き、俺は思い出す。

 (言われてみれば、スファリエは簡単に俺がここを自由に歩く許可を渡してくれたな。よく考えれば、そこらの一般自然のモンスターがそんな許可を、条件付きとはいえあんなに簡単に渡すことはできないだろう。そう考えると、確かにスファリエの言葉は正しいみたいだな)

 「それゆえ、私が許可を出すというのは、ここ自然の文明が許可を出しているのと同義です。ので、ひとまず私にその考えを話してください」

 彼女は俺がその、彼女の言葉を信じたことを確認し、そう言った。

 「簡単に言えば、あの巨石の正体を探ることができるかも知れない人間を一人、ここに呼びたいんだ」

 そう俺が言うと、スファリエは表情を変えたのち、黙り込んでしまった。おそらくは考えているのだろう。俺の提案を受けるかどうか。俺の提案は彼女にとって、自然の文明に危険かも知れない存在を入れるという行為だ。悩むのは仕方がないことだろう。

 それゆえ、俺は彼女の言葉をじっと待っていた。それから少し経ったのち、彼女は口を開いた。

 「少し、質問をさせてください」

 「分かった」

 彼女の要求をすぐに承諾する。

 「それでは、まずその方が自然の文明に危害を及ぼす可能性はある、とあなたは考えていますか?」

 「いや、ないな」

 俺がそう答えた瞬間、スファリエは一瞬視線を自身の手の方へと移した。

 (ははあ、なるほど。前に使っていたあの、『近くの嘘に反応して花びらが落ちる花』を使っているのか)

 前に俺と彼女が契約を交わすとき、彼女が使用していたソレが彼女の手の中にあることに俺は気がついた。ただ、気付いたところで俺がソレに嘘を反応させないことはできないので結局正直に言うしかないのだが。

 (いや、一応自己暗示を使えばできなくはないのか。強化されたおかげで自己暗示はそういったことまでできるようになったからな。まあするつもりもないけど)

 そう俺が結論を出した頃に、スファリエはまたも口を開く。

 「そのワケを聞かせていただいてもよろしいですか?」

 そのスファリエの質問の答えを俺は少し考えた。

 (確かに、特に根拠も考えずに言ってしまったな。うーん、リコが自然に危害を及ぼさない理由か。俺はなんとなく、意識的にリコはそんなことをしないと考えていたけど、なんでそう考えたんだろう)

 

 俺は彼女とのいくつかの会話を思い出し、頭に浮かべる。

 (……。よく考えたらリコってモンスターの死体を欲しがるようなヤツだよな……。真っ当に理由を考えると危害を及ぼしそうなヤツとさえ感じてきたぞ。たまに変だし。いや、それでもリコはわりといいヤツだ。それに……)

 そうして俺は頭に浮かんだ言葉をそのまま音にする。

 「頭が良くて利口なヤツなんだ。簡単な話、アイツはモンスターの集団に喧嘩を売ろうとなんてしないよ。アイツは自分が負ける戦いをわざわざしようとはしない」

 その俺の言葉は彼女との関わりの中で彼女の人柄を知ったことで生まれたものだ。それと一つの経験。彼女は『レベル上げの手伝い』を俺に頼んだ。それは彼女が、自身はモンスターに勝利し、レベルを上げるのは難しいと判断したことで頼むことにしたものだ。これからわかるように彼女は自然の文明、特にスファリエに勝負を挑むことはないと思われる。

 今まで分かりづらかったが、スファリエはカオスドラゴンに匹敵する実力を持っている。いや、おそらく超えている。彼女は単独でカオスドラゴンを倒すことができる実力者だ。そんなスファリエと、さらに何体かの知性を持つモンスターをリコは敵に回そうと考えはしないだろう。

 そんな理由を持って俺はそう発言したのだ。それを聞いた彼女は瞬時に手元に視線を移す。

 直後、彼女の表情は少し柔らかくなったように俺には見えた。

 「分かりました。連れてくることを許可しましょう。自然の文明を救うためですので、多少のことは許容しないといけませんから。それと……見上さん。あなたのことはすでに信頼していますので」

 「ありがとう。それじゃあ連れてくるよ」

 そう彼女の言葉を聞き届けたのち、俺はスキルを発動した。

 「転送!」

 瞬間、俺の身体はリコ・ガラポーユの店へと移動するのだった。

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