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劣化天職で最強  作者: 春の天変地異
モンスターの文明『自然の文明』編
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巨石の影響

 「に、逃げられ……た……」

 完全に裂け目の中に消えた混沌の軍事を見て、スファリエはそう、声を吐き出す。その声から彼女がその事実に絶望しているということが伝わった。

 また、その隣で俺も混沌の軍事を倒せなかったばかりか自然の文明が大きな被害を受けたという、ほとんど完全な敗北をしたという事実によって地に膝をついていた。

 (……。ここまで何も目的を達せていない敗北、精霊峠のモンスター以来か。くそ、峠のアイツは明らかに格上だった。別に格上だから負けても仕方ないって訳じゃないけど。けど……今回の、混沌の軍事は……勝てる相手だったのに……そのうえで完全に負けた。くそう……)

 「……いや、今は悔やんでる暇なんてない、か」

 俺がそう口にすると、スファリエもその言葉に反応して顔を上げる。

 「そう……ですね。まずはあの巨石の墜落地点に行って状況の確認を……行きましょう。ついて来てくれますか、見上さん」

 「分かった。俺が行って何かできるかは分からないけど……ついてくよ」


 そうしてスファリエの魔技で傷を癒した俺は彼女と共にそのいくつかの巨石の墜落地点のうち一つへ訪れた。

 「……」

 「な、なんという……」

 俺たちが視界に映された光景は酷いものであった。近くの木々は折れ、倒れるどころか朽ちて灰となっている。地面の草土も同じように黒く染められていた。

 (それに……この巨石が原因か。こいつが刺さっている周辺は落下の衝撃かなんかでやられたみたいだが……)

 そうして俺は後方に足を進めた。そのワケは、先ほどまで俺が立っていた、緑の場所が黒くなってしまっていたからである。

 (この巨石、刺さっている地点からどんどん自然を侵食していくみたいだな……)

 「これをそのままにしておくのはマズイみたいだ……」

 「はい。ただ……あれは半端な技で破壊できるものではなさそうです。幸いこの周辺のモンスターは皆避難ができているようですから、大規模な魔技を使って破壊します。すこし、離れていてください」

 スファリエはそういうと、服の中から何かを取り出した。

 「それは?」

 俺がそう問いかけると彼女は話した。

 「見ての通り紙です。ただこの紙一つ一つにそれぞれ特定のエネルギーを持つ文字が書かれています」

 「特定のエネルギー?」

 「はい、魔技に用いられるエネルギーです。そのエネルギーというのはモンスターの体の中に存在するものです。あらゆるモンスターの」

 その言葉を聞き、俺の中に一つの疑問が浮かんだ。

 「あらゆるモンスターのってのは、本当にあらゆるモンスターなのか?」

 「はい」

 「さっきの言葉を聞いた限りじゃ、どんなモンスターでも体の中のそのエネルギーの力で魔技を使うことができるって考えることができるんだが、その通りならゴブリンやスライムですらあんな、四炎玉みたいな魔技を使うことができるのか?」

 そう俺が聞くと、彼女は口を開いた。

 「それは……やつらに知性があれば、魔技を扱うことなら可能でしょう。四炎玉ほどのものは難しいかも知れませんが」

 「なるほど」

 「……この話はひとまずここまでにしましょう。そのうち魔技について詳しく説明しますから、今はあの巨石の破壊を優先させていただきます」

 彼女は少し困った様子でそう口にする。おそらく俺が質問攻めにしたことで作業に取り掛からなかったのだろう。

 「あ……ごめんなさい」

 それに気づいた俺は瞬時に頭を下げ、謝罪する。

 「気にしないでください。では始めさせていただきます」

 

 そう言った彼女は取り出した紙を周囲に設置し始めた。

 「まずは『風殺し』」

 そう彼女が言った瞬間、これまでに設置された紙が光る。と同時に、俺は違和感を感じた。

 (風が消えた? つまり……風殺し。なるほど、その名の通りか)

 すぐに俺はその風が消えたという現象が、『風殺し』なる技によって引き起こされたことを悟った。

 (なるほどな。例のエネルギーを持った文字が記されている紙とやらは、結局紙だ。風が吹けば位置がずれ、下手すれば吹き飛ぶだろう。それを防ぐために彼女は風を消したんだ。そんでもってあの紙。適当に置いているように見えたけど、多分置く位置にもちゃんと意味はあるんだ。そりゃ風があったらダメだろうな)

 俺はその行動の意味と紙の性質についてを心の中で考えながら、スファリエの行動をじっと眺める。

 (スファリエの技であの岩が破壊できるかどうか……。スファリエはできると考えてるみたいだが、あの混沌の軍事が、これを自然の文明に落としたことでそれは自分のモノとなると宣言した。つまりそれほどのモノなワケだ。これは。これは破壊できなかった時のことを考えておかなきゃだな)

 

 そうしてそのうちスファリエは動きを止めた。

 「準備が完了しました。巻き込むといけないので離れていてください」

 彼女のその言葉に従うように俺はその場から離れる。

 (さて、どんな技が出てくるか)

 俺がそう心待ちにしていると、彼女は言葉を唱えた。

 「プリローダクリスタル、変換! 自然の大槍(ネイチャーランス)、垂直落下ッ!!」

 彼女の言葉が区切られるたびに別の事象が起こる。プリローダクリスタルの時点で、美しい深緑の巨大な結晶が空中に生み出され、変換 自然の大槍でそれは大きな槍と変化した。そうしてそいつは垂直落下の言葉と同時に巨石に勢いよく落下した。

 (なるほど! いくつかの魔技かなんかを組み合わせているのか。その証拠に、すべての紙が最初の事象で一斉に作用せず、いくつかの紙が一つの事象と同時に作用している。いくつかの技を組み合わせてか。まるで刺し穿つ数多の飛翔剣(ヌメラス・エア)のようだ!)

 瞬間、強烈な衝撃波が周辺を襲う。スファリエの技が巨石に衝突した衝撃によって生み出されたそれは、全力で踏ん張らないと俺も簡単に吹き飛ばされてしまうほど。

 (ぐ、う……なんちゅう威力だよ……! というかこんな威力の衝撃波……きっと相当な範囲に届くはずだ。下手したら遠くの木や花まで吹き飛ばされちまうんじゃ……)

 そう思い、俺が後ろに振り返るとその衝撃波が一定の位置で停止していることに気がついた。

 (……! あれは……結界か! なるほど! 結界のおかけでこの衝撃波が自然を壊すことはないワケだ! さすがは自然に生きるモンスターだな。して、巨石が破壊できてるかどうかだけど……)

 

 そうして衝撃波と、巨石近辺に巻き起こっていた霧が晴れた頃に俺は顔を上げ、その結果を見つめた。

 「そ、そんな……」

 真っ先に声を出したのはスファリエ。その結果から出る言葉としては最も自然なモノだろう。

 (やっぱり……ダメだったか……)

 その大槍は巨石に衝突後、突き刺さるどころか、その巨石に弾かれてしまっていた。

 「これを使っても……破壊ができないだなんて……」

 そんなスファリエの絶望の声が周囲に上げられた。

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