VS混沌の軍事③
すぐにその爆発の煙は払われた。
「く……ぐぅ……やはり、なかなかやるようだ」
そうして姿を見せた混沌の軍事の身体はかなりの傷を負っていた。身体のあちこちから流れる黒い血液がそれを物語っている。
(うーん。まだどこか余裕がありそうだな)
「はぁっ!!」
そんな声と共に、軍事にまたも光の矢が放たれる。
「がっ……あ!!」
「ヤツは高いレベルの回復能力を備えています! 時間を与えてはいけません!」
「了解!」
その矢を放ったスファリエが、声を上げて俺にそう告げる。
その言葉を聞いた俺はすぐに攻撃を始める。
「自己暗示っ!」
スキルの力で俺のスピードは大幅に上昇する。そんな状態で俺は足にグッと力を込めて走る。ブーツが地面に深く跡をつけるたび、俺は軍事に近づく。
そうしてヤツの目の前まできた俺は腰の黄金の剣を引き抜き、軍事に振り下ろす。
「―――っ!! 電磁壁ッ!」
瞬時に動き、剣を対処できる電気の壁を作り出す混沌の軍事。さすがの対応力だ。俺はそれを剣で触れることができないため、瞬時に剣を引く。
「伏せてください!」
その瞬間、スファリエがそう叫ぶ。俺がその通りに動くと、頭上を通り過ぎる光の矢が見えた。それは電磁壁に激突した。
電磁壁は矢を防ごうと、矢は壁を貫こうとせり合う。俺は矢を貫かせるため、壁に追撃をすることにした。
「サイコショットッ!」
バキュンッ! と俺の指からサイコパワーでできた弾丸が射出される。
(最大出力じゃないが、これくらいあれば壁を貫けるだろう。そんでもって再生はさせてやらない!)
俺はその間に大地を蹴り、横に飛び出し、そのまま壁をまわり込んで混沌の軍事のサイドへ移動していた。
「なっ……」
今度こそと言わんばかりに、俺は瞬時に剣を振るう。上から斜めに振ったそれは軍事の腕に大きな傷を与えた。
(腕を切り落とすことはできなかったか……)
そして直後に、ようやく壁を破った矢が混沌の軍事に衝突した。
「ぐ、あぁ……!」
そんな姿の混沌の軍事に、俺はさらに追撃をしようと剣を振るが、その傷ついた身体を軍事は無理やり動かしてその場から離れるための術を放った。
「雷避ッ!!」
それにより、軍事の身体が雷となり、超スピードで後方へと移動した。俺はそれに剣を当てることはできず、そいつに距離を取らせてしまう。十分に距離をとった後、そいつの姿は普段のものへと戻った。
「は、あ……」
消耗によって俺はそんな声を漏らす。
(さまざまな技を自在に扱ううえ、本人の頭も良くて動きもいい。なんて強敵だ……。そのうえ多分まあまあ追い込まれてる今でもあいつは何かを企んでいる。常に警戒をしておかないと。そんでもって俺もかなり消耗してる……。一度回復薬を……ってなくなってるじゃないか……。ま、まあいいや。どうせ混沌の軍事はかなり消耗してるし、今の間にもスファリエが絶やさず矢を撃ってるおかげでそこまで再生をされてはいない。俺もやらなきゃな……! もちろん警戒は崩さずに……!)
「転送っ!」
軽く頭を回した後、俺は自身を混沌の軍事の背後に移動させた。
「ダウンコントロールッ!」
先ほどは防がれた『転送+ダウンコントロール』。当たればほぼ勝ちのコンボ。だがやはりそれは防がれた。
「岩壁ッ!」
ダウンコントロール自体に質量や威力はほとんどない。ゆえにねんりきなどなら容易に貫けるその岩も貫けなかった。
が、本命はこいつじゃない。
「反射!」
反射で絶対に本命をぶつけられる、時間をつくる。そして俺は岩を飛び越え、そこから技を放つ。
「刺し穿つ数多の飛翔剣ッ!」
現在の俺の最大火力だろう。いくつものスキルを同時に発動し、一つの技とする。度重なる魔力の上昇でついには100を超える量の黄金の剣を生み出し敵を穿つ。弱っている混沌の軍事を倒すにはもってこいの技だ。
数多の黄金の剣は、光の矢に射抜かれ怯む混沌の軍事に迫っていく。
(これが命中してしまえば勝利だろう。だけども……あいつ、利口なヤツだしな。絶対まだ何かを残してる。常に警戒をしておかないと……)
そんな俺の考えは見事に的中し、混沌の軍事は手を動かし、技を使った。
「はあっ!! 裂け目よ、開け!」
「……っ」
さっきの俺の考えはやはり的中してしまい、俺のヌメラス・エアは突然現れた裂け目に吸い込まれてしまった。
「なあ……! まずいです!」
スファリエが裂け目を見てそう言うと、裂け目から謎の巨石がいくつか放たれた。
「あんなもの……反射で返却してやる! グラビティコントロールッ!」
俺は自身の身体にかかる重力を減らし、跳躍する。それによって空中から放たれた巨石の前に行くことに成功し、反射によって巨石は裂け目の中へと戻って行く。
が、量が多かった。俺一人で返却し続けるには無理があり、いくつかの巨石は俺を通り越して自然の文明の各地に墜落して行く。まるで隕石だ。スファリエも技を使い、対処しようとしているが追いついていない。
「ち、ちくしょう……」
(ずっと警戒していたのに……なのに対処できないだなんて……!)
「このような……自然の文明が……な、なんてことを……」
ついに巨石が裂け目から出なくなり、5つほどの巨石が自然の文明に墜落してしまったことにより、俺たちはそんな声を漏らしてしまった。
「はあ……自然なんぞにここまでコストを払わねばならんとは思っていなかった……。特に人間。キサマは本当に邪魔な存在だった……が、これを出して仕舞えばキサマがいようと関係はない」
混沌の軍事はそんな俺たちを見てそう話す。
「お、お前……もう逃してやらないぞ……!」
俺は悔しさからそのような言葉を吐き出す。それに反応し、軍事は口を開いた。
「そうは言うが、私はすでにここから離れることが容易な状態にいる。そして私はここに長居してももう意味はない。ゆえ、一度ここから出かけさせてもらおう」
「で、出かける?」
スファリエには、軍事のそのような言い方が引っかかったようだ。
「ああ、別に大した意味はない。ここはもはや私のモノと言っても過言ではない。だからこそこう言わせてもらったが……キサマらは自分の居場所から出る時、出かけるとは言わんのか?」
「し、自然の文明があなたのモノと……そのような虚言。今に吐かなくしてやりましょうッ! はぁぁ……包囲多草ッ!」
怒りのままにスファリエは技を使った。そこそこのタメや、手の動きがあったところから見ると大技のようで、発動と同時に地面からたくさんのツタのようなものが現れ、混沌の軍事を囲い、そして一斉に襲う。が、それが軍事に当たることはなかった。




