カオスドラゴン&混沌の軍事
「……お前がどう思おうと別にいいよ。俺にとって美味い飯ってのは大事なんだ。ということで俺はお前を倒そうと思う。遅延!」
「―――っ」
俺は今、ここで『混沌の軍事』を倒して混沌の文明の戦力を大幅に削るため、さっそく遅延を使用する。
「速攻で終わらせる! 転送! ダウンコントロール!」
(やっぱりこれだな。当たれば一気にこちらが有利になるが当てづらいダウンコントロールを転送で相手の背後に移動することで当てる。半端な相手なら簡単に当たってやられちまう……が、こいつは半端じゃないみたいだなあ……)
俺の手から軍事の背中に向かって放たれた光球。だが、それは軍事の力によってかき消された。やつの周囲に現れた濃い紫色のプラズマがそれを消し去った。
(遅延の中で、なおかつこの近距離から放たれたダウンコントロールを防ぐ手段を持っているなんて……仕方ない。次の攻撃をしよう!)
俺がそうして次の攻撃に移ろうとした。瞬間、俺の身体は地面から昇り上がった炎に飲み込まれた。
「く、ぐわあ……!」
(なんだこの炎は! びっくりするほど熱いし身体へのダメージが半端じゃない!)
「間に合ったか。なかなか強力な拘束スキルではあったが、解除は難しくないみたいだな」
混沌の軍事は、炎に苦しむ俺にそんな言葉を告げた。
(解除……だって!?)
『解除』
それは文字通り、言葉通りの意味ではあるだろうが、俺はそのようなことをできるだなんて聞いたことがない。となると混沌の軍事のスキルなのだろうか。なんにせよ、俺にとって厄介というのに間違いはない。
だがそれよりも、今の俺はまずこの炎をどうにかしなければならない。これに包まれている以上、俺はダメージを受け続けてしまう。
(くっそ……! こりゃまずいな……。このまま炎に閉じ込められてしまっていると混沌の軍事に逃げられてしまうかもしれない。普段ならこのまま回復薬でじっくりと耐えてパッシブスキルで耐性をつけていってもいいけど、はやく混沌の軍事に攻撃をしないとだし。とっとと対処しないとな……)
俺は身体を燃やし続けるその炎を対処するため、黄金の剣を握り、全力で振るう。
「霧払い!」
俺が扱うその剣は、そんな名を持つ剣技で炎を振り払った。
「やはり脱出したか……まあいい。すでに『カオスドラゴン』はここへ来た」
その言葉と共に大きな裂け目が空間に現れ、そしてそこからドラゴンが出てこようとする。
「させない! 自己暗示! 反射!」
俺はその瞬間にスピードを高め、常人の目には止まらぬ速度で裂け目の元へと移動した。
「何っ!」
カァァァンッ!!
そんな音とともに俺の周囲の壁に阻まれたカオスドラゴンの身体は裂け目の奥へと戻っていく。つまり、カオスドラゴンの動きは反射されたのだ。移動方向と反対の方向に。
「俺がここにいて反射がある限り、カオスドラゴンは裂け目から出ることができないのだ! ふははっ!」
(なんとかしてこの裂け目が閉じるまで耐えてやる! 閉じた後どうするかは決まってないけどな!)
「キサマっ……だがそのようなスキル、解除してしまえばどうということはないっ!」
そう言った混沌の軍事は俺の元へと向かってくる。そんなそいつは右手をこちらへ向けていた。俺はそれを見て考える。
(もしかして解除ってのはスキル自体に触れないと発動できないのかな? 遅延も触れられる場所にあったから解除されたのか。となると避ければ解除されないんだろうけど、避けたらカオスドラゴンが来る。どうしようか。いや、反射ならもしかしたら解除されないかも……? あらゆる攻撃を反射するしな。試してみるか。ダメだったらなんとか頑張るかあ)
そんな短絡的な考えで俺はその手を受けることにした。だがそんな俺の考えは正しかったわけで……
「何ッ!? 弾かれた!?」
混沌の軍事は俺の反射によって弾かれ、反対方向に飛んでいく。
(やった、さすがは反射だ。さて、裂け目が閉じるまではあと5秒程度といったところか。それで反射の効果時間は残り2秒。となると3秒くらいはカオスドラゴンと軍事を同時に相手しないといけないわけか。だとすると俺がもう数人欲しいな)
そんな俺の脳に浮かぶのは『ミラージュステップ』だ。今俺がミラージュステップによって出せる分身は6体。そのうち4体はすでに出している。
つまりスキルの使えない分身2体で、カオスドラゴンか混沌の軍事のどちらかを相手取らなければならないわけだ。
(とりあえず残ってる2体は出しちゃって……よし、『混沌の軍事を止め続けろ』。ただこの2体でアイツを止められるかと言うと……うーん)
そうして二人の俺は跳ね飛ばされた混沌の軍事の元へと剣を握って向かってゆく。そのまま二人は軍事の放つさまざまな攻撃を回避し、受け流し、足止めを始めた。
「さあて、次はこいつ……カオスドラゴンか」
反射の効果はもう消えてしまった。そんな俺に、カオスドラゴンは紫色のブレスを放った。
「これくらい、無理やり受け切ってやるっ!」
それに対して俺は自身のバッグから回復薬を取り出し、身体で受けることにした。そのまま俺はそれに飲み込まれてしまう。
「グッ……あ……!」
(このブレスに飲み込まれている間は身体が傷つけられていく……。逆に考えれば常に攻撃を受けているわけで、これならパッシブスキル『耐性付与』が常に発動してドンドン耐性がついていく。問題は防具がかなりボロボロになることだが……まあ仕方なしだ。ここで耐性をつけられればこれからのカオスドラゴンとの戦いはかなり楽になるからな……!)
そうして俺はダメージを受けたら回復薬を使用して身体を癒し、耐性をつけていく。それにつれて俺のローブは端からドンドン燃えて消えていく。がついにそのブレスに終わりは訪れた。
"裂け目が消えたのだ"
「ひとまずは凌ぎ切ったみたいだな。分身もやるじゃないか。3秒とはいえ混沌の軍事を止め続けることに成功したのか」
「―――ッ! カオスドラゴンが……」
分身を倒し終えた混沌の軍事がこちらを向き、殺意も向けてくる。
「すぐにもう一度裂け目が出ないあたり、裂け目をもう一度開くには時間がかかるみたいだな」
そうして再度俺と混沌の軍事の戦いは再開するのだった。




