リュールストーン
『レベルが135になりました。パッシブスキル 防御力15%アップ』
モンスターを仕留め切った俺の視界にそのような文が映し出された。それはレベルが135になったことと、常に防御力が15%上昇するというスキルの獲得を告げるものだ。
「お、エスパーはもともとの防御力のステータスが低いから嬉しいスキルだ。まあ%だから、もとが低いと上昇量もあんまりだけどな」
『防御力』は肉体が受けるダメージをどれだけ低くするか、みたいなのを表したステータス。これが高ければ高いほど受けるダメージが小さくなるのだ。
「……こいつらを解体してリコの店に持って行ったらどれだけの値段で買い取ってもらえるんだろう」
倒れたモンスターを眺めていた俺の頭に、そんな考えが入ってきた。
(試してみるか。あとでこいつを解体しよう。とりあえずこの死体は家に置いておくか)
そうして俺はその死体に触れてスキルを使う。
「転送」
シュンッとその死体はその場から消え去り、俺の家の広い場所に移動した。すると、そのさまを眺めていた俺の耳に女性のような声が入ってきた。
「ギュラドラが消えた!?」
「うん?」
そんな声に反応して俺が振り返ると、そこには大きな美しい羽の生えた、木でできている槍を持つ少女がいた。もちろん彼女もモンスターなのだろう。羽と、あとは手とか足とか以外はみたところまるで人間そのものなのだが。
「え……あ……! す、すみません……!」
俺が振り返った瞬間に驚き、頭を下げるその女性。そんな彼女をみる俺はシンプルに困惑してしまう。
「あ、あのう……一体どうしたんですか……?」
俺がそう問いかけると彼女は頭を上げて、焦ったように話し始める。
「は、初めまして! 私はパトルと申します! ここ自然の文明で生きるモンスターの1匹でございます……!」
「えっと……俺は見上智也です。一応人間で、混沌の文明との戦いに協力するという契約でここ自然の文明に立ち入らせていただいているものです。失礼ですが、とりあえず落ち着いてみてはいかがでしょうか……」
パトルと名乗った彼女の自己紹介のようなものに、俺も名と身分を名乗り、落ち着けと提案をする。
「そ、そうですね……」
それを聞き入れた彼女はスーハーと深呼吸をし始める。
少しの間、それを続けた彼女は再度話し始めた。
「ふぅ……失礼しました」
「大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。それで……あの、ギュラドラは一体何処へ行ってしまったのでしょう」
彼女は俺に礼をし、そんな疑問を吐き出す。
(ギュラドラ……? さっきのモンスターの名前かな……)
俺は彼女の言った言葉の中に出てきた固有名詞が指すものが何かを考えた。そうして答えを出したため、疑問に対する答えを喋る。
「あれは俺のスキルで俺の家に飛ばしました。死体を人間の店で売り払ってみようと思って」
それを聞いた彼女は、「ええっ!」と驚きの声を上げる。
「に、人間は死体の売買なんてするのですね……」
「まあみんながみんなやるわけじゃなく、やるのは死体を必要としてる人だけですよ」
彼女は俺の言葉に驚き、困惑しながらも納得をしたようだ。
「それじゃあ俺はそろそろ行こうと思います」
俺がそう言うと、彼女は焦って俺を引き留めた。
「ま、待ってくださいっ!!」
「うん? どうかしましたか?」
俺が聞くと、彼女は自身のポケットのようなものをガサゴソと漁り始めた。すぐに何かを見つけたのか、それを取り出した。
「お礼です! これを受け取ってください!」
そうして差し出した彼女の手のひらの上にあったのは綺麗な緑色の石であった。
「お礼って、俺別に何にもしてないと思うんですけど……それに、これは一体?」
「何もしてないって、私の命を救ってくれたじゃないですか!」
「命を?」
俺は彼女の言葉の意味を理解できず、そう聞き返す。
「そうです! 私、あなたがくるまでギュラドラと戦闘していたのですが、援護もなかなか来ず……あなたが来なければ私は多分……やられていたと思います。ですからあそこであなたがきてくれていなければ、私は……」
「なるほど、それはわかりました。そんで、これは一体なんですか?」
俺は彼女の言葉を聞きいれ、次にその石について聞くことにした。すると彼女は笑顔になってそれについて話し始める。
「これは私が父にもらった石で、父曰くこの石には神が宿るとか。そんな感じの石です。ホントかはわからないですけど。ちなみに父はこれを、『リュールストーン』と呼んでいました。お礼ですから、もっといいものをあげたいのですがあいにく今はこれか武器くらいしか持ち合わせておらず……。ですからひとまずこれで、もしもこれから会うことがあればもっといいお礼をさせていただきますので」
「いや、別に大丈夫ですよ」
そうして俺はその石を彼女から受け取った。
(それにしても、ほんとに綺麗な石だな。神が宿るってのはホントか怪しいけど)
「それじゃあ今度こそ俺はそろそろ行こうと思います。リュールストーン、ありがとうございました」
「そんな、お礼を言うのはこちらです。それにこれくらいのお礼しかできず、すみません……」
立ち去ろうとする俺に、彼女はまたも頭を下げた。
「何度も言うけど、別に大丈夫ですよ。それじゃあ」
「はい、さようなら!」
そうして俺はそこから離れるのだった。




