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劣化天職で最強  作者: 春の天変地異
王都編
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カレーライス

 「ふう……今日は新しくスキルも手に入ったし金も6000ゴールド稼げた。てかミラージュステップに関してだが……あれってスキルの強化じゃないのか? なんか前みたいな感じと違ってふつーにできることが増えたんだが……」

 俺は今日起こったことに疑問を感じていた。今までと違う感じでスキルが強化されたからだ。


 「だけどまあ……考えてもどうにもならんし、俺にとって得だからいいか。それよりも便利そうなのは転送だ。思い描いた場所に移動できるわけだからわざわざミラージュステップで移動する必要がなくなるのか。そうなってくると大翔(たいが)のところに送った分身も必要ないのかな。てか帰ってこないってことはOKされたのか……。まあ……置いておく必要もないから……」


 (大翔のとこにいる分身よ。事情を話してそのまま俺の家に行っておいてくれ)

 俺は新たなスキルの習得によってお役御免になったその分身を帰宅させる。

 

 (こりゃ大翔にも申し訳ないな。というかもう移動用に分身を出しておく必要はないのか? じゃあもう一旦全部の分身を消しておこうか。分身全員、一旦消えといて)

 その命令に応え、分身達は一度そこから姿を消した。ドロンといったふうに。


 「よし、今日はもうやること大体やったし夕食にするか。どこで食べようかな。あまり豪遊はできないからな。値段が優しめのギルドで食べるか。よし、早速新しいスキルの出番だな、転送!」

 俺は王都のギルドの賑やかな風景を想像する。多くの冒険者がワイワイと騒ぎ合うその風景が明確に頭に浮かんできたその瞬間、俺はスキルを発動する。

 すると俺の視界には、さっき頭の中に浮かんでいたような風景がうつしだされていた。


 「おお、ちゃんと成功した。とっとと席を取らなきゃな。空いてる席はっと……あそこだな。よし」

 俺はギルド内を見回して、空いてる席を発見するとそこに向かって足を進ませる。

 本当は転送で行きたかったが転送は7秒間のクールタイム中であるためらそれはできなかった。ゆえに俺は自分の身体でその席を手に入れた。


 「今回は無事に席を取れたな。今日は何を食べようか。うーん、どれも美味そうだけど……」

 俺はテーブルに備えられていたメニューを見る。ここ、冒険者ギルドの食事場にはライスにパンや、パスタやうどんなどの麺類。ラージゴブリンの焼き肉串のような肉料理までさまざまな料理が備えられている。

 その中から俺は悩みに悩んで今日の夕食をチョイスする。


 (決めた、今日はこれでいこう。値段もそこそこ安めでまだ俺が食べたことのない料理だ。セットメニューだからお腹も膨れるだろう)

 今日の夕食を決めた俺はギルドの店員を呼び、そのセットの名を告げる。


 「カレーライスセットを1つお願いします」

 俺はその店員さんにカレーライスセットという名を口にした。


 (カレーライス、名前は聞いたことがあったけどなんだかんだで食べたことがなかった。メニューの写真を見た感じ量もありそうだし、なにより値段は750ゴールド。これだけボリュームがあってこれはかなり安い。今の俺にぴったりだ)


 「かしこまりました。カレーライスの辛さはどうなさいますか? ここでは甘口、普通、辛め、激辛の四種類の辛さを扱っております」

 俺の注文を聞いた店員の方は、そんなことを俺に聞いてくる。


 (辛さの選択か、これは難題だぞ。カレーライスというのは、ライスにカレーというものがぶっかけられた料理だ。そしてそのカレーというのはスパイスの入れ具合などで自由に『辛さ』をカスタマイズできるらしい。そしてこの店ではその辛さが4段階にわかりやすく分けられているみたいだ。甘口、普通、辛め、激辛。名前からしてそれぞれがどれくらいのものかは理解できる。それに俺は辛いものは嫌いじゃないし、むしろ好きだ。だが辛すぎて味を楽しめなかったらどうする? カレーライスを食べる時は辛さを楽しむのと同時に味も楽しみたい。そう考えたら、辛すぎる可能性のある激辛、辛さを楽しめなさそうな甘口はなし。そうなると残った普通と辛めから選ぶことになるが……普通ってどれくらいなんだ? くそ、カレーライスを食べたことがないからわからない。てか食べたことがあったとしても店によって普通の辛さというのは違うだろう。じゃあ世の人々は初めての店でカレーライスを食べる時、どう辛さを決めているんだ? く、くそ……ほんとうにどうしようか。い、いや、初めて食べる料理なんだ。まずは普通から行くのが定石だろう。変に考えずに普通を食べるべきだ!)


 そうして頭の中をカレーライスでいっぱいにして、辛さについての結論を出した俺は、その結論をそのまま口にする。


 「普通でお願いします」


 「かしこまりました。それでは料理の完成までしばらくお待ちください」

 俺の言葉を聞き届けた店員さんはそう口にしてそこから離れるのだった。

  

 

 しばらくして俺の元にカレーライスセットが運ばれてきた。

 「ご注文のカレーライスセットでございます。ごゆっくり〜」


 ドンと、メインのカレーライスに加えてコーンスープが置かれる。


 「うーん、こりゃ美味そうだ。これがカレーライスなんだな。よし、さっそくいただきます」

 俺はその初めてのカレーライスに興奮しながらスプーンを手に取る。そしてそれでカレーライスの、ライスとカレーをまとめて掬い上げ、そして口に含む。


 「う、美味い!」


 (辛さはしっかり感じるのに味を楽しむ余裕がある。ほどよい辛さなおかげだな。それにこのライス、口の中でカレーと混ざり合って、めちゃくちゃ美味い! カレーのスパイシーな香りと味わいが、ライスの甘味がどこか絶妙に噛み合っている! 辛さと甘さは同時に食べても美味しくはならないものだと思っていた俺の常識をこいつは打ち破ってきやがった! 次は具も食べるぞ!)

 カレーライスの1口目を堪能した俺は、2口目にして具材に手を出してしまう。ライス、カレー、ジャガイモとにんじん、そして牛肉を贅沢にスプーンの上に乗せて俺はそれを口に放り込む。


 「くう――っ! 最高だぁ!」


 (ジャガイモ、にんじん、牛肉、そしてライスにカレー。そのどれもが別々の食感を持っていてどれもが主張をしているのにかかわらず、一つのカレーライスという料理としてまとまっている。なんて素晴らしい料理なんだ! それに必要ない食材というのが少ないな。特に牛肉だ! 噛んだ時に出てくる肉汁がカレーと混ざり合い、さらにライスとも混ざり合う。こんなにいろいろ混ざっているのに綺麗で美味しい味をキープどころかさらに美味くなっているぞ!)


 そのままの勢いで俺は3口、4口とどんどん口に放り込んでゆく。


 「ふう、そろそろ辛さが蓄積されてきたな。水を飲むか」

 俺は普通とはいえ、やはりカレーであるためちゃんと辛さはあって、それで辛さが蓄積されていく。口の中を癒すため水を口に流し込む。


 「はあ……水がいつにも増して美味いぜ。よし、このままコーンスープも冷めないうちにいただこう」

 俺はセットについてきたコーンスープに手をかける。そのホットで温かいスープをずずいっと飲みはじめる。


 (うん、マジのアツアツのタイミングよりもこのホッとするホットで温かいタイミングが一番いい。それにこの少し甘くてまろやかな味、これもまた、辛いカレーライスにあう)


 その後も俺はそんなふうにカレーライスを、コーンスープと水も一緒に食べていくことで楽しんでいく。しかしついにそんな時間も終わりを迎える。


 「ついにラスト一口だ。このためにカレーとライスを、どちらかが多すぎるとかならない完璧なバランスになるように調節しておいた」


 (ためらうことはない。この一口が最高の味になっているはずなのだから、一気に口の中に突っ込んでしまえばいい)


 そうして俺はその、スプーンいっぱいちょうどの量のカレーライスをスプーンにのせて、そのスプーンを口の前まで運ぶ。

 俺は覚悟を決め、口を開け、それを口の中に突っ込んで、そして口を閉じる。


 (ああ……最高だ。狙い通りの味になっている。この味ともこれでさよならだが、本日最後に味わうのがこの味でよかった)

 俺はそのカレーライスを上と下の歯でしっかりと噛みながら味わう。長く噛むことでしっかりとその味は口の中に広まってゆく。そしてそれが口の中を満たした頃に俺はカレーライスを飲み込むのだった。


 「ごちそうさまでした」


 カレーライスに満足した俺はお代を払ってその店から出て、外を歩く。


 「さて、転送で帰るとするか……って、なんか今あっちのほうで光った? まあ魔法かなんかだろう。とりあえず帰ろう。ほんとになんかあったとしても騎士団がいるし大丈夫だろ。転送!」

 俺はかすかに視界に入ったその光について疑問を覚えながらも、正直遠いし別にそんな興味と湧かないので無視してスキルで帰宅する。


 「ふう、風呂……の前にトレーニングしておこう」

 そうして俺はトレーニングをしたのち、風呂でさっぱりとしてベットに飛び込み眠りにつくのだった。

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