お久しぶり! スキルアッパー!
「う、うわあ……マ、マジか。これ壊れちゃってるじゃないか。まさか一撃とは……」
俺は倒れた人形を見てそんな感想を口にする。その人形はプスプスと音を立てていて、動き出しそうにない。
「ま、まあ試し切りならそのうちできるだろう。もう一つの剣は……まあ試さなくても分かるか……。それよりも俺自身をもっと鍛えないとな。さっきの人形への攻撃、俺の剣がこれほどまで良いものじゃなければ防がれていた。そしてそのまま攻撃されてた。だからもっとあの重たい剣を素早く振れるように筋力を鍛えないとな」
そんなことを思い、俺はそれから日が暮れるまでその訓練場で肉体を鍛え続けるのだった。
次の日、俺は街を散策することにした。
(よく考えたらまだこの街には入ったことのない食事屋とかもあるからな。今日はそれらを楽しもう)
そうして俺は街中を巡り始めた。その街はなんだかんだでよく見慣れた風景ではあったが、じっくりとゆったりと歩いて観察すると覚えのない風景も目に入ってきた。
「俺ってまだまだこの街のこと、あんまりしれてなかったみたいだな。これでも1ヶ月程度は滞在してたのに」
そのまま俺は散策を続けるといつの間にやら見慣れた店を見つけていた。そこはリコの店であった。
「久しぶりに入ってみるか。そういえばリコ、王都から帰ってるのかな」
俺がその店のドアを開けると、王都に到着した時以来に見る顔があった。
「いらっしゃ……ってお前か」
その店の店主である一応俺と同い年の少女、リコ・ガラポーユがそんな態度で俺を迎える。
「久しぶり、なんかいい商品とかない? 気が向いたらそれ買わせてもらうぜ」
彼女の店は、かなり特殊な商品を取り扱っていることが多い。それらは彼女が天職、錬金術師のスキルで作り出したものである。
「なんかいい商品? まああるけど、ただ前買ってもらった時よりも値上がりしてるけどいい?」
そんな彼女の言葉に俺は疑問を浮かべた。それは彼女の言葉から、そのいい商品とやらが推測できるからである。
(リコのいい方的に、そのいい商品は前に俺が買ったことある商品だ。俺が今までこの店で買ったものはスキルアッパーとテイムの縄くらいか。まあどちらにせよ見せてもらはないとわからないから考えるだけ無駄か)
「それじゃあそれを見せてくれ。買うかどうかは値段とモノ次第で」
「はいはい。それじゃあこれね。値段は600000ゴールドで」
そんな態度でリコが指差した先の商品は、『スキルアッパー』である。
「ろ、ろくじゅうまんだって!? お、おい、桁を一つ間違えてるぞ。前の時は60000だったじゃないか」
「これの価値に気づいたからね。まさかこんなに貴重なシロモノとはあの時は思ってなかったから。で、買うの?」
リコは俺の言葉に淡々と答える。
(600000か……払えない金額ではないけどもなあ……今は持ってないし……あ、取りに帰ればいいのか。スキルアッパーには確かにそれだけの価値がある)
スキルアッパーは文字通りスキルをアッパー、つまり強化するアイテム。今までこれ以外に俺がスキルを強化できたのは一度だけ、レベルが100になった時だけだ。しかもこのアイテムはランダムとはいえ2つのスキルを強化できる。レベル100になった時でも1つだけ強化だった。
ということで俺はそれを買うことにした。
「買うよ、それ。ただ今そんだけ金ないから取りに戻っていいか? すぐとってこれるからさ」
「それくらいなら許すからはやくとってこい」
リコは強い口調で俺に指示をする。そのため俺もその言葉に応えるようにスキルの効果を発動する。
「入れ替われ!」
その言葉と同時に宿にいた俺の分身と俺の位置が入れ替わる。
「さてと、ここにしまってたから600000だから……よし、これくらいだな。それじゃあ戻るか! 入れ替われ!」
先ほどと同じように、俺はさっきまで俺がいたリコの店にいる分身と入れ替わる。
「よし、持ってきたぞ。これで足りるだろ?」
そして俺はそのゴールドをリコに差し出す。リコはそれを数え始め、そして俺に言う。
「うん、足りる。また変なスキル手に入れたみたいだね、智也も。それじゃあはい、これ商品」
リコはそんなことを言いながらそのスキルアッパーを俺に手渡す。
「ありがとう。久々にいい買い物ができたよ。ちょっと前に食べた飯いらいだ」
「はいはい。お世辞はいらない……ってそれ褒めてる? よく分からないんだけど。まあいいや、それじゃ」
リコは俺の言葉に反応してそんなことを言う。そして俺はその言葉を聞き届けて店を出るのだった




