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閉心術のやり方

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

もしも神様がこの世にいらっしゃるならば、読心術の心得はあると思うんですよ。

だって願い事を口に出す人を見た事がありませんから。

だからきっとなんの気なしに吐いた悪口も、毒も、全部筒抜けだと思うんです。

開心術を得れば、相手の考えている事が分かる。それを元に策を練る。今までそうして来た。賭け事、交渉においては滅法強い違法技だった。

そんな私が一人の少女に出会った。その子は一見何の変哲もない普通の子だった。穏やかで、角を立てず、ただ静かに笑っている。雨ニモマケズ風ニモマケズ、その主人公の様な子だった。故に、覗きたくなるのは人の心理と言うもの。

だから何時もの様に目を見開いて、心を覗きにかかった。けれども――。


彼女と知り合って、数ヶ月が経った。彼女は相も変わらず風に揺れる柳のような笑顔で前に座る。私が淹れた珈琲を『甘くて美味しい』と言いながら、舐めるように飲む。

今だ。隙を着いて心を覗く。

――あぁ……甘い……。苦味の強い珈琲とも出会って来たけれど、これは本当に甘くて飲みやすい……。でも……お菓子がなあともとい……。

聞こえて来たのは口に出したのと同じ言葉。淹れた珈琲に対する真っ当な賞賛だった。けれども後に続いた言葉が聞き取れない。違う言葉を同じ速度で重ねてくる。故に非常に聞き取りにくい。聖徳太子は十人同時に話を聞き得たそうだが、その気持ちを身をもって知らされる。

「君の心は本当に読みにくいね」

「まだ、頑張っていらしたの?」

「隠されると暴きたくなるのは、私の性でね」

彼女は項垂れる私の反応を見ながら、クスクスと笑い声をあげる。読心術を行使しても、心から楽しんでいるのが分かる。どうやら今のは許可された言葉の様だった。

何時もそうだ。許された言葉は直接的に心に流れ込むのに、許されない言葉は必ずノイズが走る。

「君は犯罪者予備軍を取り締まるアニメの登場人物の一人にでもなったつもりなのかい?」

品方向性を絵に書いたような言葉ばかりが許されて、批判も、悪口も、決して聞こえて来ない。恐らく雑音の中に潜ませているのだろうが、如何せん読みにくい。

彼女はそんな私を見て、僅かに口角を上げる。

「言ってはいけない事は口に出さない。それが万人の行う共通認識です。が、私はそれを心中でも行っているだけ。だって思ってしまったら、それだけ私の価値が下がるという事ですもの。ならばどうするか。答えはとても簡単です。汚い言葉の上に相反する言葉を同時に吐くのです。そうすれば均等が取れて読めなくなる。汚い私じゃなくなる」

「同時並行で思考を動かしているのか……」

善性に振り切った思考回路。悪を完璧に断罪する為に、彼女は自分の思考回路さえも弄くり回している。全てを悪徳をなかった事にする。並大抵の努力じゃない。

「私はただ、良い子でありたいのです。考えたら全て、顔にも口にも出してしまう性分故」

まぁ、先程の後書きでも繋がる話なのですが、閉心術のやり方です。

悪口を言う時に、陽向口を同時に言うんです。

そうすると、言葉がぐちゃぐちゃになって、意味をなさなくなります。

陰口を叩く口を閉ざす要領で、心にも同じことするんです。


神様がこの世にいらっしゃるかは分かりません。

が、もしいらっしゃれば、間違いなく読心術の心得はあると思います。

心の悪口も陰口も毒も全て筒抜けです。

基本的に穢れを嫌う方々だとも思って書いているので、今までのご利益を全て徴発するとも思います。


私は死ぬまで良い子ちゃんでいたいですね。

そうすれば、私の勝ちです。

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