短編 87 分身の術を覚えてみたけれど
分身をテーマにしたら、どんな話になるのかな。とりあえず書いてみよう。
そんな所からスタートしたお話です。
世界に魔法が満ちて三世紀。
今や魔法少女は当たり前の存在。そこらのリーマンすら手から炎が出せるのが普通になっていた。
そんな魔法が日常になった現代で……僕は忍者をやっていた。
ちなみにうちの家系は忍者と全く関係ない家系だ。先祖は商人だったらしい。
子供は小学校で適性を確認して中学生でそれを伸ばす。高校になると、そこから更に専門的に分かれていく。
僕はただいま中学生。
……落ちこぼれの中学生なのさ。ふふ。ダークサイドに堕ちるのも忍者っぽいよね。くくく。
僕には魔法の適性が……あるにはある。
うん。あるんだよ。無くはない。
忍者って良いよね。手裏剣とかクナイとかさ。黒い服を着てるから夏は死ぬけどね。蜂にも弱いかな。でも色々服に仕込めるんだよね。毒とか毒とか毒とかさ。魔法っぽい効果を毒で再現できるんだよね。忍者さいこー!
……僕は忍者になるしかなかったんだよ。ははは。
僕の魔法適性は最低。体格は貧弱。辛うじてお勉強は出来た。というかそこしかなかったから頑張った。だから高校に行くことは出来る。
この時代、学力よりも魔法の力が幅を効かせているから、どこまで役に立つかは未知数だけど。
そんなわけで中学生最後の夏。僕は修行に明け暮れておりました。具体的に言うと夏期特別講習会で伊賀の里に来ております。僕の他にも沢山の忍者がいます。なんか外人忍者ばかりです。頭ピンクだよ? 忍者違くね?
毎年夏になると、ここ伊賀の里では忍者体験と忍術講習が受けられるのです。
小学生も沢山いますねー。賑やかです。
……つまりはそういう感じのイベントです。
僕はもう……こんなものにしか頼れないのです! うわーん!
これって普通に夏休みのイベントじゃんかー! うわーん!
忍者体験では壁走りとか水上歩行とかも体験できます。今時の子供なら自前の魔法でそのくらいは朝飯前なのです。
僕には無理ですが。
忍術の体験も出来ます。かとんの術とか、すいとんの術とか。これも今時の子供なら自前で出来ます。
僕には勿論無理ですか。
忍術というかそれっぽいだけの魔法ですね、ははは。札とか印とか結びますけど、ただの格好着けです。意味は無いんですよね。
でもこの講習では、ひとつだけ特殊な術を教えてもらえるのです。わりとガチな忍術を。
それが分身の術。忍者と言えばこれですね。
僕はこれに賭けたのです。これがあれば僕は化けることが出来るのではないかと。いえ、変化の術ではないので本当に化ける訳ではありません。変化の術の講習もあるのですが普通にコスプレなのでノーサンキューなのです。『きゃー! 女装が似合うー!』とか係りの女性に言われましたが僕は男の子です。
それはともかく、分身の術です。
これも魔法の一種なのですが、センスと努力が必須と言われる専門上級魔法に分類されるすごい魔法になるのです。
普通にみんな魔法が使えるので、わざわざ努力して魔法を鍛える人はあんまりいません。
そういう人はアスリートみたいな扱いを受けます。今時の言葉で言うと『意識高い系』でしょうか。
普通に生きる限り、魔法を鍛える必要はありません。警察や特殊部隊、あとは軍人さんくらいです。強制的に鍛えるのは。
普通の人でもそれなりに魔法は使えるんです。
使えるのが当たり前の社会です。使えない人間は人として認められません。それが現実なのです。
魔法がろくに使えない僕は、この分身の術を覚えるしかないのです。
百人いたら百人が覚えられないと言われるこの術を。
そして見返すのです。僕を見下してきた全ての人間を。
僕はこの夏期特別講習期間を全て注ぎ込んでこの術の習得に努めました。
そして……やってやったのです。
僕は高校生になりました。身長はちっちゃいままです。妹よりも小さくて泣けてきます。学年でもトップです。女の子よりもちっちゃいのです。
でも高校生になれたのです。それも超エリート学校です。
……泣きたくなりますよね。
エリート学校ですよ?
僕……魔法使えないんですよ?
使える魔法は分身の術だけ。
この学校では制服着用が義務なので忍者コスプレが禁止されてます。つまりは毒も使えないのです。
……詰んだ。
なんでか知らんが詰んだ。
中学卒業直前に志望校が変更されてここになったのです。僕は学術系の高校に行くはずだったのです。推薦もきっちり取れていたのです。
ですぅぅぅぅぅ!
はっ! いけません。どんな時でも冷静でいなければ。ここは超エリート学校です。それこそ魔法の達人達が集うような……まぁ頭はそんなによろしくない人達が集まる学校です。
絡まれたら死ぬ。そんな世界です。
デスゥゥゥゥ!
おっといけない。入学式での挨拶を思い出して死を感じてしまいましたね。ははは。ついさっき終わった入学式ですよ、ははは。
『新入生に告ぐ。この学校に弱者は要らぬ。弱きは罪であり無能は死ぬと知れ』
在校生の挨拶がこれだった。
バカなの?
脳筋なの?
でもここはそういう学校なのだ。
僕はこの学校に何日通えるのかなぁ。そんなことを思いながら僕は教室に向かいました。体育館の外は桜吹雪が綺麗です。僕の最期に相応しいデスね。デスデスデス。
この学校に来て、ちょっと意外だったのは女の子率の高さです。
『ひゃっはー! 女はみんな犯してやんよー!』みたいな不良ばかりがいると思ってたのですが、そんなことはありませんでした。
むしろ男はほとんどいません。なんで?
とりあえず教室に着いたので先生と生徒の自己紹介が始まりました。みんな……意外と普通に話してます。普通です。女の子達はいきなり魔法をぶっぱなしたりしません。中学だと教室に魔法弾が乱れ飛ぶのがいつもの光景だったのに。
あれ? 僕の中学が荒れてただけ?
「次は君の番だよ?」
「はう!?」
いきなり声を掛けられて超びっくり。びくんとしました。
「もー。驚きすぎだよー」
何故か教室に笑いのさざ波が走りました。おかしい。僕はまだ小粋なジョークのひとつもかましていないのに。
とりあえず無難に自己紹介をすることにしました。
「おりゃー! 出でよ分身達よ!」
自己紹介で今後の僕の立ち位置が決まるのです。ここで舐められる訳にはいかない。初手全開。僕にはこれしかないのだから先手必勝!
結論から行くと……僕のこの時の判断は間違っていなかった。
先生には、ものすごーく怒られたけど。
高校生になって一月が経った。
「出せ」
僕は教室でカツアゲにあっていた。相手は同じ教室の女の子である。
「出せません! 許してください!」
「いいから出せ」
僕が必死に嘆願しているのにこの子は無表情で脅して来るのです。声も平坦で超怖い。見た目はお人形さんのような可愛い女の子なのですが。まぁ僕よりも大きいので……ね? なんでだろね?
「出さないと……お前をハグする。そしてチューもする」
「それはどうなのかな!? 僕らは高校生なんだよ!? てやー! 1号射出!」
可愛い女の子の脅しに屈した僕は先生に怒られるのを承知で教室内で魔法を使った。
普通の学校では教室内での魔法の行使は禁止されてます。公道でも同じだそうです。僕の中学は荒れまくってた問題校だったようですね。今は解体されてて更地になってますが。
「……むふふ」
女の子は僕の分身を抱き締めると幸せそうな笑顔を見せました。可愛いなぁ。僕よりも大きいけど。
「あー! 私もー!」
「そうよ! みんなにも出すべきよ! 出すのなら!」
「もう出しません! 先生には内密に!」
「だせー!」
僕の分身は何故かクラスの女の子達に大人気となりました。僕の魔法適性が低いので分身は手乗りサイズで僕をデフォルメした姿です。三頭身の人形ですね。分身というか、ちっこい人形を生み出す魔法になってます。
努力しまくったので数はそこそこ産み出せます。そして小さな僕は僕と同等の知性と知能を持っているのです。これぞ分身の術の醍醐味。
一人の僕では出来ない事も、沢山の僕でなんとかしてやんよ!
これが分身の術を覚えた理由なのです。血ヘドを吐きながら頑張った甲斐はあったのです。
「やっぱり可愛いよねー」
「分身の術がこんな魔法だなんて知らなかったわ」
「そりゃAランク認定されるよね」
僕も知らなかったが、魔法にはランクがあったらしい。上からトリプルエー。ダブルエー。そして普通のAランク。普通とはいえ、このAランク魔法は所有者を隔離する必要があるほどの危険指定魔法となる。
そんなのを夏のイベントで教えてたんだね。伊賀の里。頭おかしいよ忍者。
ダブルエーランクになると殺処分がまず検討されるレベルらしい。怖すぎだよぉ。
僕は必死で分身の術を覚えたけどここ百年は誰も使えなかったらしい。
そんなのを落ちこぼれの中学生が覚えた。
僕の通っていた中学はその事を国に報告しなかったのだ。Bランク以上の魔法を使えるものは必ず国に報告し、登録する義務がある。Bランクの魔法でも国家レベルの災害を起こせるらしいので。
ちょっと怖すぎだよぉ。魔法、超怖い。
中学の教師は僕が魔法を使えるようになったことをどうしても認めたくなかったらしい。校長も同様。
今は仲良く牢屋にぶちこまれていると聞いた。
僕の進路が急に変わったのは学校から報告したわけではなく、伊賀の里の報告確認に手間取ったから。里の人も僕の事を小学生と思ってたらしいからね。
小学生が夏の講習で分身の術を覚えて泣きながら帰っていった。そんな報告をしたらしい。忍者のバカヤロー! 嬉し泣きだこんにゃろー!
そんなわけで……どんなわけ?
お昼休みの教室は、とってもピンクな空気になっていました。
『はわー! チューはダメよー! ボクたちは高校生なのだからー』
「……ちゅー」
『はうわー!』
おや? 三号が襲われている?
「そこぉ! 普通にチューしないでくれたまえ! 分身の僕も僕なのだから! あとで全部僕に還って来るんだからね! チューの感触とか匂いとか!」
「……むふふふ」
『むはー。乙女のテントですー』
「……一人陥落してるよ?」
「1号ぉぉぉ! お前は何をしてるんだぁぁぁぁ! もっと堪能させ……げふん……先生には内密にね?」
僕がいた中学は全国的に見ても特に酷い学校だったらしい。生徒もクズ揃いだし、教師もクズが揃ってた。
元々問題のある人間が行く中学なのでそんなもんなんだろうけど、あまりにも酷いので有名だったのだ。
そこの基準で僕は生きてきた。
ここは天国だったんだよ。本当は天国だったよ。この学校。寮に監禁されてるけどね。
「また魔法を無断で使いましたね?」
ぎくり。冷たい声にびくんとしてしまう。今はお昼休みなのになんで先生が教室に来たのだろうか。
『あー、先生だー』
『先生もチューするのかー?』
『先生はマッサージが好きなんだぞー?』
『可愛い喘ぎ声なんだよねー』
分身達の和やかな発言にお昼の教室は静まり返った。生徒達が先生を見ている。すごく微笑ましそうに。
「……先生にも分身を三体寄越しなさい」
「先生、お顔が真っ赤で……十七号、十八号、十九号! 行くのだー!」
『先生可愛いよな』
『うんうん。なんか良いよね』
『眼鏡なのになー』
眼鏡は関係なくね? まぁ怒られないならいいんですよ。ポコポコと殴られそうになってましたが。危ない危ない。ポコポコだけど先生も超エリートなので手加減を忘れると骨が砕ける。二回やったので僕も学習したのさ。死ぬかと思ったよ。ガチで。
結局お昼の後の授業はみんな肩に分身人形を乗せての授業となった。
勉強効率が十六倍ですごい。
マッサージの勉強も三倍効率だ。
この分身の術はひとつの事に取り掛かる際に絶大な威力を発揮する事が分かった。逆にマルチな事をさせると学習効率はガタガタとなる。本体である僕が処理しきれなくなるのだ。
一点集中に向いた魔法で、少し騙された感もあるが、すごい魔法であるのは間違いない。勉強とか研究者ならこれほど有用な魔法もないだろう。
「なんかさ、キスで腰が抜けたんだけど」
「それは分身だ!」
僕自身は女の子にそんな破廉恥な事など生まれてこのかた、やったこともない! やった経験はすごく蓄積されてるけど!
「私も膝が笑ってる」
「それも分身だね」
一点集中させすぎたね。僕、ファーストキッスもまだなのに。なのに千回以上の経験値。みんなキスしすぎ。
「なんか乳揉まれた」
「……ごめんなさい」
分身は僕そのものでもある。揉みたいよね。だって男の子だもん。女の子って柔らかい。十六人のおっぱいで僕は初めてのショートを起こしたよ。理解が追い付かなくてね。おっぱいは複雑なのさ。
「あの、流石にスカートの中で暴れられるのは……」
「申し訳ありませんでしたー!」
今日も教室で土下座です。スカートの中はパラダイス。僕もこんな世界があるなんて知りませんでした。
中学までは落ちこぼれのゴミ扱いです。それが今や女の子と毎日チューする生活です。チューしているのは全部分身ですけど。
これが……モテ期。
今こそ攻めるとき!
とは思いません。何故ならここは超エリートの集う学校です。ここの学校に監禁されてる時点でみんな最低でもBランクの魔法を使える人達なのです。
国家規模の災害を起こせる魔法。それがBランク。僕の分身の術とは違う本当の魔法です。
むふふと言いながら僕の分身をシャツの中に入れてた女の子も国家クラスの魔法使いなのです。
魔法の授業はハルマゲドンです。校庭ではなく広大な自然が広がる裏山で授業なのです。毎回、裏山が更地になるのです。山が消えて平地になります。次の日にはまた裏山に戻ってるので先生の誰かが再生してるのでしょう。
……分身の術がAランクっておかしくない?
明らかにおかしいよ?
僕が増えるだけの魔法が何故にAランクなのかな?
僕は適性が低いから三頭身の人形にデフォルメされちゃうけど、本来なら本人にそっくりなサイズで分身が作れるとは聞いている。
それなら……それでもおかしいよね? 辺り一面を氷に閉ざす魔法よりも上とか意味が分かんない。
それと最近、特別授業というのも始まって……ぶっちゃけヤバイです。毎日がひーひーです。
これは努力と才能がないと使えないとされる専門上級魔法の授業です。
専門上級魔法は幾つも種類があるので生徒は好きなものを選べます。卒業するまでにどれかひとつを習得することが生徒には義務付けられているのです。
また血ヘドなんです。
分身の術でさえ血ヘドを吐いて習得したのです。
……僕は実績があるとして最低でも三つはいけるだろうと言われました。
泣きました。
無理です! と。
いいからやれ。そんな風に怒られました。
理不尽だよ! むきー!
僕は魔法適性がへっぽこです。確かにへっぽこです。普通の魔法の授業では何も出来ずにハルマゲドンを眺めるだけです。
それが先生には暇そうに見えたそうです。
震えて縮こまってただけなんですけどね。ははっ。
専門上級魔法は結構な数で存在します。時間魔法とか空間収納魔法とか若返りの魔法とかもありました。
時間魔法と若返りの魔法は同じじゃないかなーと思いましたが別物でした。うむむ。奥が深い。
分身の術もあったのですが習得難度は堂々のAクラス。一番難しい部類にされてました。時間魔法でさえBランクなのに。ちなみに若返りの魔法はCランク。
どゆこと?
そっちの方がすごくなーい?
僕はもっと大きくなりたいので若返りの魔法はノーサンキューです。
同じCランクに即死魔法とかありました。超怖いですー。
ランク分けおかしくない?
で、僕が選んだのはBランクにあった『あら、不思議。今日から君もマッチョメン』という専門上級魔法です。
『あら、不思議。一晩で三センチ伸びるかも』魔法とどちらにしようか迷って前者にしました。
かもって付くと怪しいですよね。それで何度騙されたことか!
僕は身長180センチのイケメンになりたいのです。そしてイケイケしたいのです。
若返りの魔法があるなら成長を促進させる魔法もありそうなものですが、それはダブルAランクに属してました。
殺処分はノーサンキュー。
僕は分身を使って頑張るのです。目指せ身長180センチ。みんなで運動すればきっと体も成長するはずです。
そして時は過ぎ、夏になりました。桜吹雪の季節は終わり、プールの季節がやって来たのです。
『あばばばば』
「レスキュー! 二号が溺れてるよー!」
『今助けに行くぞー! がぼぼぼぼ……』
『隊長ぉぉぉぉ!』
『こっちもレスキュー! 早くレスキューしてー!』
のっけからクライマックスです。なんか非常事態ですわ。
「……分身ってなんだろうね」
「……ほら、Aランクだし」
意外な発見。分身は泳げない。僕がカナヅチだからそのせいかも知れない。呆れた様子の女の子達が助けてくれなかったらヤバかった。
今日はプールの授業の日。
女の子はみんな水着で僕も水着だ。
……みんな水着なんだけど、シマシマ柄の囚人服みたいな水着だ。露出はほぼない。頭には帽子も被ってるので……なんだろう。ここが牢獄のプールに見えてきた。色気のいの字もない。
『先生も囚人だー』
『プリズナーだな』
『きっと悪いことしたんだよ』
『拉致監禁の常習犯だしなー』
プールの縁に座ってまったりしている分身達。こいつらも囚人服だ。さっきまで死にかけていたのに呑気なものだと思ってしまう。
この学校のプールの授業は普通の授業とは違うらしい。まずプールに入っている水が普通の水ではない。
魔法を封じる力がある特殊な水がプールには満たされている。生徒はこの水に浸かりながら魔法を行使する訓練をする、それがこの学校のプールの授業なのだ。
だからプリズナーなんだね。泳ぐ授業じゃないんだよ。
このプールの中でもある程度の魔法が使えるようになるのが課題。僕も浮き輪を装備してプールに落とされた。
犯人は真っ赤な顔の先生だ。最近はみんなが僕の分身を自室に持ち帰るようになった。拉致監禁事件が多発なの。最初の犯人は先生だったので……まぁ犯人なんだよね。
二人っきりになると先生は赤ちゃん言葉を使ってくる……やばっ!? まだこっち見てる!?
早く逃げないと! 足がつかぬ! くぬっ! このプール深くね!?
「は~。水が気持ちいいね~」
「暑いときはやっぱりプールだよね」
「全然魔法は使えないけどねー。あははは、本当に使えないわー」
女の子達は楽しそうにしてますねー。僕は少し恐怖に飲まれてます。プールの真ん中まで来ちゃった。絶賛浮いてます。超怖い。
「……それでは皆さん。涼みながらで良いので課題に取り掛かってください」
「はーい!」
『先生も入るんだなー』
『僕たちは無理だなー』
『僕ら魔法なのに消えなかったよねー。その辺はなんか違うのかな』
『発動の阻害であって、魔法自体は通すんだろうな』
『使いにくくなる、ぐらいなのかな?』
三人寄れば文殊の知恵。分身ってすごいよね。でも今は本体の僕を助けてほしい。
「むふふふ……捕まえた」
「……岸に連れてってください」
「やだ」
可愛い女の子もプリズナー。浮き輪に捕まり僕の足に足を絡めるタコ少女。僕よりも大きいので少女というのが正しいのか疑問ではある。夏になって身長の差は更に広がった。彼女の方が伸びたのだ。
僕の背だって少しは伸びてる。少しは。微量。
「魔法の練習しよ」
「……それどころじゃ無いんだけど?」
足が着かなくて基本的に冷や汗なんだけどなぁ。カナヅチに足の着かないプールは拷問だね。
「ダメ。やれ」
この学校の女の子は強い。押しも強いが目力も強い。僕は男の子なのだ! その程度の圧には決して屈しないぞ!
「ぐぬぬぬぬ……出でよ八号!」
すぐに屈しました。この子はすぐにチューとかしてくるのです。僕らはまだ高校生。そういうのはちょっと早いと思うんです。はい。分身とは沢山してますけどね。それは分身ですし。
『……あへー』
「……出た」
「出たね。なんか……おかしいけど」
女の子も目を丸くして驚いていた。驚くのも無理はない。僕の頭の上にはだれきった分身がいるのだ。水泳帽の上にでろりである。なんか半分溶けてる気がする。
集中が足りなかったのか、それともこの水の効果でこうなったのか。
「八号解除」
『ばははーい……』
決め台詞と共に頭の上の八号は消えていった。
「……あっさり課題クリア」
「え、これでクリアになるの?」
タコ少女の呟きに僕は拍子抜けしてしまった。このプールの授業は別名『地獄の行水』と呼ばれている。夏の風物詩で、この学校の名物でもあるらしい。課題をクリア出来ないと夏の間はずーっとプールでプカプカするんだって。
ご褒美かなと僕は思ってた。
でも女の子達にはすこぶる不評なのだ。日焼けがすごいことになるんだって。囚人服水着だから日焼けするのは手と足と顔のみ。お風呂に入るとみんな大爆笑するそうな。
なんか女子高のノリだよね。このエリート学校に男子が少ないのは女の子の方が才能に溢れてるから、なんだってさ。遺伝子の安定性がそこに如実に現れる、って授業でやった。なるほどなーと僕も思ったけどね。
生まれつき才能に恵まれてて、更にそれを磨いてきた者のみがこの学校にやって来る。女の子は花嫁授業の一貫で魔法の訓練もするからこうなるのも当然の事なのだ、と先生は言っていた。
僕の分身に肩を揉まれながらの授業風景である。最近はマッサージする分身が三体から五体に増えた。先生って大変な職業なんだねぇ。
「初日にクリアですか。やはり適性が全てではないということですね」
「あ、先生」
プリズナーな先生が側に来ていた。すいすいと泳いで近付いて来たのだ。眼鏡はしてない。なんか……普通の生徒にも見える。目付きはすごく悪いけど。
「私もずっと魔法を発動しようとしてる。全く発動しないけど」
タコ少女はそんなことを言ってきた。相変わらず水の下では足を絡めてくる積極的な女の子だ。囚人服水着なので……なんか……ごわごわ。
「ごわごわ……じゃなくて。なんで発動しないの?」
顔が近いぜ、女の子。分身はいつもゼロ距離だからその経験を積んだ僕もこれくらいでは動揺なんてしないのさ。ちょっと股間がごわごわするけどね。ごわごわー。
「……さぁ?」
……マジで? その返答は……マジで?
「それがこの授業の課題です。答えを自分で見つけるのも課題ですからね。分かってますよね?」
先生が僕をつついてきた。ほっぺをぷにぷにされてます。いや、僕は分身ではなく本体なんですけどね。股間がごわごわー!
ま、それはそれとして。
「僕はいつからティーチャー枠になったんですかね?」
「分身魔法の活用範囲は文献以上だった、ということですね」
先生がにっこりした。可愛いですー。でもこの人、でこぴんでコンクリを抉れます。
僕はこの学校に来てからも努力し続けていた。というか努力しないと死ぬ。ここはそういう学校だった。
ここは普通の学校のような評価方式を採っていない。過去の自分と比較しての評価が下されるのだ。なので手を抜くとすぐに呼び出しを受けて怒られる。
微増してても怒られる。
全力だせやー! とお尻をセクハラされるのだ。
学年主任の先生はおばあちゃんなんだけど、ドスケベです。この年でお尻ペンペンは泣けます。
そんな訳で僕も分身を沢山出せるようになったのだ。相変わらず三頭身なのはスルーさ。
クラスの女子、全員の両肩にちょこん。これで三十二体。そして教師のマッサージ係りが五体で計三十七体。マックスはもうちょいだけど、それをやると僕がパンクする。
僕の分身は授業中、女の子達に助言したり間違いを訂正したりするのだ。まぁ同じ授業を受けてるからね。僕の知能はクラスで一番!
それしか取り柄が無いので頑張ってるんです。放課後は分身達と勉強会ですよ。効率三十倍で頑張ってます。
で、授業中なんだけど、女の子から見ると専属家庭教師が二名くっついてる感じになる。これは大きい。この学校に来ている人は基本的に魔法の使い手だ。その分、頭はそこまで良くない人が多かった。
僕……頑張ったよ。分身からの経験を積み重ねて彼女達にぴったりな学習プランを立てたりしたんだよ。
そんなことをしてたらクラスのレベルは上がってた。まぁ当然だよね。専属家庭教師が二名だもん。お陰で今の一年生は歴代の中でも極めて優秀という評価を受けつつあるのだ。まだ高校一年生の夏なのに。
で、その主犯として槍玉に上がったのが僕となる。
僕、何もしてないもん。やったのは分身だもん。
そんな言い訳は誰にも聞き入れてもらえなかった。ぐすん。
そして僕の立ち位置は非常に微妙なものとなったのだ。
「……むー」
タコ少女が唸っている。僕の足に彼女の足を絡み付かせたまま。浮き輪にしがみついたまま。
彼女はいわゆる天才肌の魔法使いだ。理論立てて、ではなく感覚で魔法を使っている。彼女も実はAランク魔法が使えるすごい人。ユーラシア大陸を全て砂漠に出来るそうだ。それも一瞬で。
ランク分けおかしくない?
おかしいよね、絶対に。
どんだけ分身魔法を推してるの?
分身は地味だよー?
「……チューして」
「なんで!? いきなりどうしたの!?」
女の子からいきなりのキラーパスが来た。顔を見ながら言われたので心臓も跳ねた。僕はまだファーストキスすらしてないんだからねー! 君の唇の感触は知ってるけどもー!
「いつもチューすると元気が出る」
「八号よ! 来たれ!」
『ういー』
人は追い詰められると本気になる。八号が頭の上にマッスルポーズで現れた。シャキーンとな。これも練習しまくった。効率三十倍は伊達じゃない!
「……普通に使えてますね」
「先生も見てないで止めてくださいよ!」
先生の呟きの中、可愛いタコ少女の肩に飛び乗る分身八号。女の子はすごい笑顔だ。女の子はやっぱり笑顔だよね。むふふふと……その笑い声はどうかと思うけど。
「先生も欲しいです」
時が止まった。魔法じゃない。多分。
「……」
先生に腕を掴まれてねだられました。今の僕は、にこにこで分身とチューしまくってるタコ少女と目付きの悪い先生に左右それぞれの腕を掴まれて絶体絶命です。
羨ましいだと?
イチャイチャだと?
二人とも岩石を素手で砕ける魔法使いなんだぞ? 僕の腕なんか簡単に引きちぎれるんだぞ?
あ、でもこのプールの中なら二人とも普通の女の子だ。
…………チャンス?
「出でよ! 九号!」
『ひとなつの過ちを犯してやんよー!』
分身は僕そのもの。ちょっと正直過ぎるのが玉にキズ。テンション上がりすぎて頭の上でステップ踏んでるね。僕の頭の上で。
『あ……がぼぼぼぼぼ』
「レスキュー! 先生助けてー!」
足を滑らせて分身が頭から落ちたー! 分身が沈んでくー! ここ水深深いからマジで死ぬ!
「……まだまだ詰めは甘いですね」
その後、分身九号はプールの底でぐったりしてるところを先生に救い出されて人工呼吸を受けて蘇生した。分身が死んでも僕は死なない。でもダメージの幾ばくかは戻ってくる。
分身が十体同時に死んだら多分僕も死ぬだろう。ショックで。
意外と使い難い。本当になんでこれがAランクなんだか。
あと先生……いつまで……いえ、人工呼吸ありがとうございます。
こんな感じで僕は毎日を過ごしていた。
そして気付くと夏は終わり、秋も過ぎ、冬になっていた。この学校は冬に大規模な軍事演習を行う。ここは超エリート学校。卒業生の大半は軍部の指揮官クラスに配属されるのだ。指揮官とはいえ勿論前線で戦う戦士でもある。むしろ前線に出たら戦争終わるよね? Aランクがごろごろいるし。
敵が同じ人間ってのは、やっぱり仕方無い事なんだろうね。魔法が一般的になったから侵略戦争は鳴りを潜めた。魔法で生活は楽になったのだ。資源を奪い合う戦争は無くなって世界は平和になったんだよ。
それでも欲は無くならない。
支配欲、権力を求める人間はどうしたって現れてくる。
だからこその軍事演習なのだ。攻める力ではない。大切な暮らしを護るための力だ。
今のところ大規模な戦闘にまで発展する兆しはない。戦争を望まない勢力、僕達の陣営の事ね。ここが圧倒的な戦力を保持しているから戦争は起きてないのだ。
水面下では火花がチリチリしてるらしいけど。
基本的に魔法に秀でているのは女性である。これは数字に出てるので確定だ。
でも世の男性はそれを認めたくないらしい。女なんて男よりも劣った生物なんだよ! という主張を掲げる人が集まった宗教国家。
それが敵国である。
つまり男だらけの国でもある。なんか嫌だよね。そんな汗臭そうな国。この国の女性はみんな国外に逃げ出してほとんど居ないのだ。
でも人口は微増し続けている。
……魔法って怖いよね。怖すぎるよね。
男同士でそういうのは破廉恥だと思います。やっぱりお尻なのかなぁ。
で、肝心の軍事演習はとても地味なものでした。
塹壕を作ってそこでキャンプ。二つの陣営に分かれて模擬戦闘したりした。プロの軍人さんとの戦闘訓練もやった。
個人戦ではなく団体戦。それも魔法飛び交う中での大規模戦闘である。しかも冬。
キャンプでマシュマロを焼いて食べたのが美味しかったです。冬のキャンプも楽しいね。僕は中学でこういうのに慣れてたからすごく楽しめた。
あそこは毎日が戦場だったんだね。僕も毎日忍者だったし。
そして僕は分身魔法の怖さをここでようやく知った。
戦場では個人の力よりも集団の力が圧倒的に強い。それすらもひっくり返すのがAランクの魔法となるのだが、強すぎて使えないのもAランクの魔法なのだ。
核兵器よりもヤバイので使用が厳格に定められているのがAランク。僕は気にせず使ってるけどね!
戦場では味方への影響も考えて小規模な魔法での応戦が主流である。
遠くからドカーン!
楽なんだけど、それをやると地球が持たないんだって。魔法がすごすぎるんだよ。
あと、小規模な方が色々とメリットがあるとも授業で習った。戦争にも作法があるって事だね。そもそも戦争すんなよなー、と思うけど。
なので戦争の形態は古代の形と酷似していた。
小規模な部隊同士の殴り合い。
玉に大部隊同士の突撃ガチンコ勝負。
なんか中世とかそんな感じ。
遊撃部隊での撹乱とか速度に特化した部隊での急襲側面突撃とか。ロマン溢れる戦場風景なのだ。
今の戦場では集団の連携がものを言う。そして連携を支えるのは部隊間による密な連絡なのだ。
魔法で連絡を取り合おうにも戦場には魔法によるジャミングが掛かっているので、実はすごく難しかったりする。連絡係が書簡を携えて戦場を駆け抜けて部隊間を走り回るのが今の連絡方法なのだ。なんともアナログで笑ってしまう。電波もあるけどジャミングは当然される。
でも分身なら問題ない。だってみんな僕だから。たとえ連絡は取れなくても、僕の考えは全部同じ。
ひとつの意思の元で動く複数の部隊。
これが今の戦場ではアホみたいに強かった。
というか強すぎた。
プロ1000人対生徒16人で辛くも勝利。僕もみんなもドン引きした。いくら演習、特殊な勝利条件とはいえ、ちょっと異常な強さだ。
いやー、僕の知能が大爆発したお陰なんだけどねー。でへへ。
僕が大活躍したので、ちょっとしたご褒美が貰える事になりました。
『へっぽこ軍師』
そんな二つ名を頂戴しました。
……へっぽこ?
確かにへっぽこなんですがね?
……へっぽこ?
確かに演習では一人だけ死にましたけどね?
最後の最後で勝利を確信して一人踊ってたら流れ弾で。
なんとも言えない後味でした。ええ。勝ったのに。勝利の宴では僕だけ正座で反省会でした。
軍部の人もスカウトしようか本気で悩んでたみたいです。
僕もそろそろ将来を考えないとなー。
こうして冬は過ぎ、また桜吹雪の春がやって来る。
その前にクリスマスで僕は大人の階段を少し登ることになったんですけど、それは内緒ということで。
春。新入生がやって来る季節です。桜が舞い、ぽかぽか陽気な穏やかな季節です。
僕は少しだけ大人になりました。身長も少し伸びました。コンマ3ミリです。3ミリではなくコンマ3ミリです。女の子の中には一年で10センチ伸びた子もいます。
羨ましぃぃぃぃ!
ここは超エリート高校。入ってくる新入生も超エリートです。ほとんど女の子ですけど。
もう女子高と名乗っても良いかも知れません。新入生がみんな僕より大きくて凹みましたが。
体育館の壇上から眺めて一目で分かりました。
で、なんで僕がそんな所にいるかというと。
今年は僕が在校生の挨拶を担当することになったからなのです。
なんでー?
文句を言ったら学年主任のおばあちゃん先生にお尻を揉まれました。
いいから、やりな! 揉まれながら言われました。
セクハラ反対! 僕がそう言ったらキスされそうになったので必死になって逃げました。そういう訳なのです。ははっ。
「新入生の皆さん。ここは魔法の学校です。ですが多感な時期を過ごす学舎でもあるのです。色々な経験をし、心を広げてください。将来の為に頑張るのも大切ですが、今を楽しむのも大切な事なのです。あとエッチな事は良くないからね。僕らは高校生なんだから。節度を守って生活していきましょう。特におばあちゃん! セクハラは禁止だよ!」
僕は少しだけ大人になりました。セクハラおばあちゃんにもこうして反抗できる強さを手に入れたのです。
かつての落ちこぼれであった僕からは想像もつかない事態ですよ。
新入生は僕の挨拶にキョトンとしていましたが、すぐに分かると思います。
「今年から生徒一人一人にチューターが着きます。あなたたち達の勉強のサポートをしてくれますが、くれぐれも節度を守ったお付き合いをするように」
これは司会の先生のお言葉です。僕はおばあちゃんに折檻されてる最中です。アイアンクローで頭がメリメリ言ってます。
老婆のくせしてなんてパワーだ! 悲鳴すら出ない! 超痛い! 壇上はバイオレンス! 誰か助けて! 見世物じゃないの! ガチなの!
『よろー』
『みんなおっきいなー』
『一学年一クラスで助かったー』
『むむっ、すごい巨乳発見!』
『どこどこー?』
え、マジで? 僕も見たい……あだだだだだだだ!
「このコロポックルはこう見えて本当に優秀なチューターです。キスをするとすごく喜ぶので覚えておいてください」
ぬぅぅぅぅ! いつの間にか僕の分身が『コロポックル』として紹介されている!? そして指が肉にめり込んでるよ!? 老婆なのに、なんて指の強さなんだ! 誰か助けて! 振りほどけないよー!
「では入学式はこれでお仕舞いです。各自教室に戻ってください」
式は終わり、生徒達が体育館から出ていく。一学年一クラスなのであっという間に体育館は空になった。
……あれ? 僕は? 僕の出番はこれだけ? そして誰も助けてくれないのは何故ー?
「僕も教室に行くんですよね?」
アイアンクロー越しにおばあちゃんへと聞いてみた。そろそろお仕置きは終わりにして欲しいなぁと。
「あんたは今日から教師だろう?……あれ? 連絡してなかったかい?」
おばあちゃんがキョトンとしてました。
「初耳だよ!?」
そんな事になってました。
高校生二年目の春。僕は……え、退学? 中退? マジでー?
僕は生徒から教師になってました。春のジョブチェンジです。高校は中退です。履歴書どうしよう。
全学年の生徒一人一人に分身が寄り添い勉強をサポート。本体である僕も専門上級魔法を教える講師となりました。
魔法適性が全てではない。
それを証明する生き証人として僕は先生にされたのでした。
そゆことは先に言えー!
むきー!
こうして僕は教師となった。
元々将来はそっちに行こうとしてたからそれはいいんです。
生徒は可愛い女の子達です。パラダイスです。同僚の先生も美人で可愛い人ばかりです。セクハラする老婆に目を瞑れば本当にパラダイスなのです。天国はここにあったのですよ。
……僕、頑張って本当に良かった。
でもさ。
でもさ?
生徒からも可愛がられる先生ってどうなんだろう。
分身ではなく僕本体ですよ?
僕は毎日生徒から頭を撫でられます。勿論先生からもです。優しくハグもされます。
僕は先生なんだぞー!
……嫌でもないけどー。
……うん。まぁ良いのですよ、それは。うん。
でも分身にキスしすぎというのは見過ごせないね!
分身魔法がAランク指定されてるのは、きっと風紀を乱すからなんだろうね。あっちこっちでチューチューしてからに!
僕はようやく理解した。
これで本体と変わらないものが出せていたら大混乱必至でしたよ。修羅場しか生まれません。国が滅んでもおかしくないのです。
……それでも覚えてよかった分身の術。
今度伊賀の里にお礼のお菓子を送ります。山吹色のお菓子って何があるかなぁ。
新入生心得四ヶ条
その一
学校内での魔法禁止
危険ですので止めましょう。喧嘩はステゴロのみ許可します。
その二
コロポックルは大切に
妖精さんは結構簡単に死にます。大切に扱いましょう。
その三
小さい男の子を見たら抱いとけ
コロポックルの主です。可愛がってあげましょう。キスとハグまで許可します。
その四
小さい男の子はみんなのもの
独り占めは出来ません。みんなで愛でるのです。拉致監禁は我慢です。やりたいことはコロポックルに。
追記
小さい男の子には内緒ね。
今回の感想。
女の子は可愛いものにメロメロになるのです。そしてこの物語はハーレム物ではありません。