39.シフトかレイドか
王子パーティーの聖女カマラさんが意見を言う。
「私は、レイド攻略を支持します。
総合力が最も高まりますし、大人数で連携できれば持っている力以上のものが発揮できると思います」
「そうだな。ラスボスとは、全員で戦わないといけないだろうからね」
王子もその意見に賛成のようだ。
「でもレイド攻略の場合、私たちは急ぐために十分な準備が出来ない可能性もありますよね。
さらに、いくら時間的には余裕があるとはいえ『プリンス・プディング』は、地上で待ちの状態になる訳です。
効率が下がることは否めませんわ」
「アタイも、連携のために我慢するなら、本当に信頼できる仲間とじゃないと。
男爵とか王子とか、肩書の付いたやつとは上手くやる自信ないんだよな」
イノリとリサは、シフト攻略派のようだ。
だが、リサは言い過ぎだ。
モーソイと王子の顔が、引きつっているぞ。
「ボクは、正直どっちでも良いけどね。
誰が一緒だったとしても、魔法ブッパするだけだし」
ソラは、いかにも彼女らしい意見だ。
王子が、意見をまとめる。
「どちらかというと『プリンス・プディング』は、レイド支持。
『テイヘン・ショク』は、シフト支持という感じだな。
モーソイ氏。第三者として、何か意見はあるかな」
そりゃ、王子のパーティーはレイドなら地上でゆっくり出来るし、ウチはシフトの方がゆっくり出来る。
パーティーごとに意見が分かれるのは、自然なことだ。
「第三者として意見を言わせてもらうなら、レイドはダメだと思います」
モーソイは、意外なことにシフトを支持した。
正直、王族に忖度すると思っていた。
「ダメとまで言ってしまうとは、余程の理由があるのかな?」
王子は、笑顔だが目は笑っていない。
「はい。今回『深紅の誓い』のメンバーを補充して、確信しました。
彼らは、前衛をしていたリーダーが犠牲になったおかげで生き残れたということもあって、リーダーの言うことは絶対なんです。
騎士団から来てもらったメンバーも含めて、本当にちゃんと俺の作戦に従ってくれて、連携も取れる。
それに比べたら、こいつらのは個人能力に頼った強い奴らの集まりってだけです」
「モーソイ氏は、えらく手厳しいな。
リサさんと仲が悪いのは最初のやり取りでよく分かったが、好き嫌いの問題じゃ無いのか?」
王子の反応に、モーソイは不満爆発という感じでまくし立てる。
「好き嫌いなんかじゃ、ありませんよ。
ブクローは俺のパーティーにいる間、その戦闘能力をこれっぽっちも、全く見せなかった。
リサは俺の言う事なんて聞く気が無いし、ソラはいないと思ったら、ダンジョンの離れた所でブクローと二人で休憩していたりするんですから。
こいつらの気ままさは、規律あるパーティーを崩壊させる危険すらありますよ」
「うん、まあ、一緒に行動したのは、わずかな期間だけだったが、その兆候は感じ取れたな」
ヘンリー王子が、言い難そうに返す。
「ちょっと待てよ。
アタイが言う事を聞かないって、それこそ信頼関係の問題だろ」
リサが、二人に抗議する。
「俺とお前は、何年もの間の数多くの冒険で一緒に前衛をこなしてきた。
それで信頼関係が生まれないなんて、お前との信頼関係を築くこと自体無理じゃ無いのか?」
モーソイが、すごく厳しくリサを責める。
リサが言い返す。
「そんなことを言うから、信頼関係が築けないんだよ。
ロバとは上手くやれているから」
「ロバってのは、騎士団のメンバーだろ。
騎士団のメンバーは、実力があって命令に忠実だ。
実力のある人間は、力が下の人間に合わせてやれるからな。
そいつは、お前に合わせてくれてるだけなんだよ」
モーソイは、全く手を緩めない。溜まっていたんだな。
リサは少し涙目だ。
「ロバは、そうかも知れない。
でも、ブクはアタイのことを信頼してくれてる。
アタイも、ブクのことは信頼してるんだ。
戦闘中にアタイのヨロイを脱がしても良いって、許しているくらいだからな」
ちょ、ま、なんで、ここでその話?
案の定、プラムが絡んでくる。
「お兄、今の話どういうこと?
リサさんのヨロイを脱がしても良いって、おかしくない?」
「いや、前回ロバート君が悪魔の火炎魔法を食らって大やけどをしただろ。
その時、熱くなったヨロイをリサが脱がしたんだ。
同じようなことが起きた時は、リサのヨロイを脱がして良いって許可をもらっただけだよ」
「ブク、何ごまかしてんだよ。
アタイは、いつでも脱がして良いって言っただろ。
お前も、分かったって言ってたじゃないか」
そんなこと言われた覚え無いぞ。
どうしてこいつらは、俺をそんな変態野郎に貶めようとするんだよ。
「い、いや、その、あのだな、リサ。
…………
ホントに脱がして良いの?」
俺は否定しようとして、つい本音が口に出てしまう。
「ダメに決まっているでしょ。
戦闘中にヨロイを脱がしたら、防御力無しの前衛になってしまいます」
イノリは、真面目な意見をくれる。
「リサチー、ウソはいけないナリ。
ボクは、その時ちゃんとその場にいて聞いていたんだからね」
おお、そうだ。
あの時、ソラも聞いていたんだ。
「なんだ、リサさんのウソだったんだね。
お兄も、『脱がして良いの?』とか聞くんだから、下心丸出しだよ!」
「ごめんごめん。でも、こんな美人に脱がして良いとか言われたら、普通の男は下心持っちゃうよ」
あっ、俺またいらない本音を漏らしてしまった。
女性陣の目線がすごく痛い。
リサだけ妙に嬉しそうだ。
「そうか、ブクはアタイの服を脱がしたいのか。
じゃあ、これをやるよ。
女性の下着に興味津々らしいからな」
今日のリサはロングスカートだが、スカートのすそから手を入れて、スルスルと何かを脱いだ。
それを丸めると、俺の手の上にポイッと置いた。
えっ、何だか温かい。
リサの体温がまだ残っている気がする。
「ボクは今日はミニスカートだから、さすがにノーパンにはなれないよ」
「お師匠様の前で、そんなはしたない真似は出来ませんわ」
ソラとイノリが、何かつぶやいている。
「お兄、まさかそれを受け取る気じゃ無いでしょうね?」
プラムに言われるまで、俺はリサのパンツを捧げ持っていた。
「い、いや、そ、そんな訳あるか。
リサさん。スカートの女性がパンツをはかずに歩き回るのは、危険ですからお返しします。
気持ちだけ受け取り……
いや、みんなのいない所でなら……
いやいや、とにかくお返しいたします」
ああ、もらっていれば、一生の宝物になったのにな。
いつもいつもこうやって俺の心のスキを突いて、俺が変態だっていう評価をまき散らすんだから。
なんで、ここまで俺の尊厳を傷つけたいんだよ、こいつらは。
モーソイがズイッと前に出てきて言う。
「分かっていただけましたか?
こいつらは、こんなだから、レイドは無理だと言っているのです」
王子がポツリとつぶやく。
「理解した。シフト攻略で行こう」




